2005年04月16日
何とまたもやB.A.R HONDA-007が非公式ながらコースレコードを叩き出した。今回の舞台はフランスのポールリカール。以前はF1フランスGPが開催されていたサーキットで1,600mの直線がある高速サーキットである。前回のバルセロナとは違う性格にも関わらず今回もノートラブルで007は走りきった。そのオマケがコースレコードなのだから恐れ入る。どうやらここに来て私もB.A.R HONDA-007のポテンシャルが上がった事を素直に認め、次戦サンマリノGPで007がルノーやマクラーレンのマシンと肩を並べられると此処で言わなければならないのだろうが、それでも手放しで喜べない不安がある。
時は1990年、舞台はポールリカールサーキット。主演はイワン・カペリ(レイトンハウス・ジャッド)とアラン・プロスト(フェラーリ)と言えば個人的にもっとも燃えた激戦のフランスGPである。レイトンハウスは1988年エイドリアン・ニューウェイ設計のCG881という凄まじい空力マシンをもって大健闘し、当時最強のマクラーレン・ホンダMP4/4から唯一実力で(一瞬ではあったが)トップを、しかも鈴鹿で奪う大活躍を見せた。ソレに気を良くした若きニューウェイはますます暴走! 翌年のCG891、また今回話題にするCG901は空力を追求するあまりマシンの反応が過剰になり過ぎ結果として速さを失ってしまった。それが証拠に前戦の90年メキシコGPでは同僚のマウリシオ・グージェルミンと共に予選落ちを喫していたのである。が、何故かフランスGPではトップを快走しグージェルミンと共に1-2体勢を終盤まで維持したのだ(残念ながらタイヤの限界からラスト3周を残してプロストに抜かれてしまったが・・・(涙))。
さて、何故今頃こんな昔話に花を咲かせたかと言えば、それは路面状態について言いたかったからである。何故前戦まで遅かったCG901がトップを快走出来たのか? 先にも書いたようにポールリカールは長い直線がある。本来直線が長ければV12エンジンでパワーに勝るフェラーリ641が早い筈だ。けれど何と非力なジャッドV8搭載の空力マシンCG901はこの直線で641に負けなかった。如何に高効率な空力マシンはセッティングがハマッた時は怖いかという事と、CG901自体の素性は悪くなかった事の証明ではあるが、では何故メキシコGPでは2車とも予選落ちでフランスGPでは大活躍したかというと・・・ポールリカールの路面は当時のF1開催全サーキット中最高に平滑な路面をしていたのだ。ある意味マシンにとって風洞のムービングベルト上で実験しているにも等しいサーキットとも言える。CG901は空力に敏感すぎるマシンなのでバンプのあるコースでは理想的なセッティングが出せなかったが、ポールリカールではそのセッティングが完璧に出たのだ。だからニューウェイが風洞にこもって造り上げたCG901は、この時馬鹿っ速かったのである。
では今回のB.A.R HONDA-007はどうか?
序盤に007が低迷した原因はフロントウィングにある。どうも形状的に風洞では理想の形と出たFウィングは実走すると思い通りの気流を後ろに流せなかったらしい。今回のポールリカールで一番時計を出したFウィングはかなりの改良が進んだようだが、何せ場所がポールリカール・・・CG901の悪夢(?)が個人的に蘇るのだ。
単独で速い事は今回のテストでも証明出来た。恐らく次戦サンマリノGP予選では、余程のポカをやらない限りB.A.R HONDA-007は予選でこれまでよりも良いグリッドを得る事は出来るかもしれない。が、レースで他車の後ろに付いた時、どういった事が出来るかで今年のマシン007の真価が問われると私は思う。
速いマシンはどんな状態でも他車より踏める。
果たしてB.A.R HONDA-007がその完成度に達したのか?
次戦サンマリノGPでの走りが楽しみである。
Posted at 2005/04/16 19:02:46 | |
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F1コラム | 日記
2005年04月08日
バルセロナでF1合同テストが行われているようだが、その3日目でバトンの駆るB.A.R HONDA-007がトップに立った。タイムの1'13"552は昨シーズン開幕前に同チーム佐藤がコンセプトマシンで出したコースレコードを0.2"上回るコースレコードだという。今年絶不調のB.A.R HONDA-007がトップなのにも驚いたが、何よりこの時期に今年のF1マシンがコースレコードを塗り替えた事に驚いている。
今シーズンより変更されたレギュレーションは、とにかく速くなり過ぎたF1からその速さをゴッソリと削ぎ落とす事を念頭に置いたものであった。【エンジン・2レース無交換】【タイヤ・予選から本戦終了まで無交換】【ダウンフォース削除の為にフロントとリアウイング及びデュヒューザーの位置と高さ、ボディーワークの変更】と、ある意味FIAは形振り構わぬ変更を加えたわけだ。これだけの変更が加えられれば、仮にまた速くなったとしてもタイムが戻るのは今シーズンの中盤以降とFIAは計算した事だろう。けれど現実は・・・まだ第三戦が終わったばかりで、しかも冬場よりエンジンパワーが落ちるこの時期であるにも関わらずコースレコード、である。
これが驚かずにいられようか?
いや、今回はテストであるから様々なトライが行われているのは間違いないし(可能性は極めて低いだろうが)もしかすると合同テストだからと御意見無用の如く禁じ手の如きブツを仕込んである可能性も否定は出来ない(その中でも特にタイヤの可能性は高いだろう)が、それにしても一体この時期にこれ程のタイム向上を誰が予想しただろう? バルセロナはテクニカルで直線も程よく配置されたコースである。単にドラッグを減らしたから、ダウンフォースを増す為にF/Rウィングを立てたからといってそう簡単にタイムを削れるサーキットではない。
こうなるれば答えは一つ。
各チームはこの時期で既に解を出してしまった事になる。
削られたダウンフォースは恐らく今回のレギュレーションを逆手に取り低ドラッグとグランドエフェクトの高効率を追求。タイヤのライフはそのままにグリップは開幕時よりも向上し、それを活かすメカニカルグリップはデータの豊富なバルセロナであるからこそ煮詰まったセッティングで挑める(ついでにバルセロナはこのオフシーズン、コースの再舗装が行われている)。この場所だからこそ出たタイムではあるけれど、いやはや、日進月歩もケツまくって逃げ出すF1の進歩にはホトホト頭が下がる思いだ。
しかし、一体ナニをしたんだ? B.A.R HONDAよ。
今年の007、メカニカルグリップは良さそうだと思ってはいたが、まさかハッタリでもそんなタイムを出してくるとは・・・今回のテストで走った007をじっくり見てみたい。多分新車発表時のスプーン状Fウィングは付けていないと思うのだが(アレだとピッチング時の安定性悪そうだし)。
Posted at 2005/04/08 15:17:38 | |
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F1コラム | 日記
2005年04月02日
今年のB.A.R HONDAは多分駄目だろうと思っていた。
当って欲しくはなかったが・・・。
別にコレといった理由は無かったが、強いて言えば【中・下位チーム大成功から翌年絶不調のジンクス】とでも言おうか。不思議なものでF1では何故か中・下位チームが活躍した翌年は、ほぼ間違いなく大失速する事が多い。95年のティレル、98年のプロスト、思えばジョーダンも浮き沈みの激しいチームだった。この辺のチームはトップチーム程のモチベーションが続かないのか、まるで緊張がプッツリ途切れたように、好調だった前年が嘘のような不調に陥る事が多い。
そういったチームを今まで見てきた手前、B.A.R HONDAが同じジンクスに陥るのではないかという不安があった。まあ、天下のHONDAがそう簡単にこんなジンクスに陥る事はないだろうと、期待と祈りにも似た願いを込めてはいたのだが・・・開幕前のテストが開始されコンセプトマシンが走り始めると、その不安が確信に換わるのを感じないわけにはいかなかった。
で、シーズンが始まって早2戦終了(今週末でもう第三戦)。
Myジンクスは生きていた。
理由は色々あるだろうが、まあ例は悪いが、昨年のTOYOTAと同じように開幕前の開発達成目標が極めて低かったからではないかと思う。前年の成績に安心し僅かに開発の手が緩んだ可能性は否定出来ないし、HONDAの資本注入も悪い意味でB.A.Rスタッフの緊張感を削いでしまった可能性はある。F1は人間が行うものである以上、個人やチーム自体のモチベーションが重要という事になり、そう考えると結局F1とは今でもチームによるスポーツなのだろう・・・こんな事で再認識するとは、皮肉な話ではあるが。
願わくばB.A.R HONDAには意地を見せて欲しいところだが、昨年のマクラーレンやウィリアムズのような復活劇を望むのは無理だろうから、結局B.A.R HONDAとTOYOTAの立場が入れ替わるだけなのではないかと思えてしまう、そんな事を思った第三戦・予選開始前。
Posted at 2005/04/02 19:49:18 | |
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F1コラム | 日記