
◆新型CR-Vを試乗してきました。
試乗したグレードはZX。前列パワーシート標準装備の4WDグレードのなかでは中位のグレードです。色は夜鷹黒真珠・・・というか、ナイトホークブラック・パールです(何でこんな妙な色の名前を付けるのか、相変わらず理解に苦しみます。こんなところの名前に凝らず、もっとデザインの質を高める事の方が重要だと思いますが)。
実車を見た第一印象は【立派!】。これがあのCR-Vかと思うと、ある種の感慨を感じます。初代はライトクロカンとしてデビューしましたが、今回の三代目は間違いなくライトではありません・・・悪路の走行性能の方は相変わらずライトでしょうけど。
現在国内のSUV市場は冷え込んできていますが、そんな状況でも新型SUVは昨年から今年にかけて数車種発売されました。その中にあっても新型CR-Vのデザインは、とにかく目立つエクステリアである事は間違いありません。今回の三代目は、そのデザインを一言で言えば【ホンダだなぁ】というところでしょうか? とにかく灰汁の強烈な顔に、スッキリ流れるようなイメージを受けるサイドビューと、あっさりしたお尻。ここ数作のホンダデザインを踏襲するモノといえるでしょう。とにかく、顔が濃い! 最近は発売前に少しずつエクステリア等の公開を行っているメーカーが多いですが、先行でメディアに流れた三代目の顔付きの濃さには、いい加減辟易したものです。最近のホンダ車は何故ここまで突飛な造形をフロントマスクに施すのかと思ったものですが、そのキャンペーンが功を奏したか実車を目の当たりにすると、そう悪くない気もしてきます。
嗚呼、慣れって怖い(苦笑)。
それはともかくこの顔付き、私の感性が麻痺したのかもしれませんが、見慣れると癖になります。同クラスのSUVは各社にありますが、元々SUVはヘビークロカンとオンロード車の中間的な車種であり、そのシルエットから見るとクロカンからデザインを拝借するSUVが多かったように思えます。以前のSUVに濃さはなくても無骨なイメージがありましたけれど、先代CR-Vを含めここ数年は無難なデザインを持ったSUVの多かったようですが、国内の市場そのものが冷え込んでいる現在、CR-Vの存在を目立たせる為に、また、いまだに市場が活発な海外で個性的なエクステリアを持つ海外メーカーに対向する事を考えると、今回のように個性的な顔を持たせる事は、あながち間違いではないのかもしれません。取り敢えず今度の新型CR-V、私には現行ステップワゴンよりも面白い、愛敬がある顔付きと思えます。
さて今回の三代目、デザインからもより一層街乗りSUVとしての性格が強まった感じを受けます。
顔付きはそれとして、サイトビューの流れるようなウィンド処理とルーフからハッチへの処理が、実にミニバン的です。ハッキリ言ってしまえば新旧ストリームのデザインを拝借した、まるでストリームのハイライダー的なイメージを強く受けます。タイヤの大きさからSUVとしての主張はありますけれど、全体的なイメージは街中を流しているイメージの方が強いですね。実際、今回のCR-Vはハッチの開閉方向を横ヒンジ開きから通常の上ヒンジ開きに変更されています。リアハッチの野外での使い勝手と街中での使い勝手は違います。私は今回の上ヒンジ開きの方がCR-Vのような車には正しい形式だと思います・・・が、先代にあったようなガラスハッチだけ開くといった機構は省略されてしまいました。今回の新型はカーゴにダブルデッキカーゴシェルフ(※タイプ別装着)を備えており、これが丁度リアガラス部分から取るのに丁度いい高さにあるだけに、この使い勝手の低下だけは頂けないと強く感じました。
その他、外から見て気になった点があるのですが、まずルーフアンテナ採用は勘弁して欲しかった・・・。私は身長が175cmありますが、その私でもアンテナに手を伸ばしても、簡単に届きません。リアハッチの形状が傾斜しているのでバンパーからルーフアンテナまでの距離が結構あるのです。洗車する等でアンテナを外さなければならない時は苦労しそうです。
それと、街乗りSUVですからそこまで気にする必要はないのでしょうけれど、下回りの排気系チャンバー等といったハードが出っ張り気味なのが気になります。HR-Vの時にも感じましたが、こうした部分はもう少し出っ張りの少ないようにデザインするべきではないでしょうか。CR-Vで何も気にせず悪路に突っ込むユーザーが居る可能性もありますしね。それと同様の理由から、もう少し最低地上高を高めにした方が良かったと思います。カタログでの最低地上高は185mmですが、最低でも200mmは確保して欲しかったと感じました。
さて、細々したところ以外はソレなりに気に入ったエクステリアでしたが、インテリアは頭を捻りたくなる部分が多い気がします。まず質感が低い! あまりにもプラスチック感が強く、実際手触りもイマイチな感じが強いのは頂けません。インパネのデザインそのものは(まあ何故か先代ストリームを彷彿とさせるところはともかくとして)悪くないと思うのですが、メタリック系塗装のパーツの質感がオモチャのように感じます。両脇のエアー吹き出し口の部分もそうなのですが、特に酷いと思うのはドアのグリップ!! 何故この部分をこんなチープなデザインにしたのかと怒りさえ込み上げてきます。こんなオモチャのようなインテリアを300万円からする車に使うとは、ホンダのインテリアデザイナーは己の感性の市場との乖離を恥じるべきです。真面目な話、当日見てきたカローラの方が余程マシです。
『いっそトヨタへインテリアのデザインを発注した方が良いんじゃありませんか?』
そんな思いが、ふと、頭を過ぎりました。
シートの作りですが、最近のホンダ車は本当に良くなりました。
硬さも適度で、試乗時もしっくり来る感触です。
さて、気を取り直して試乗です。
かなり大きくなった三代目ですが、SUVらしく見晴らしが良い為に見切りも悪くなくその大きさを感じさせません。こういったところは各社様々なSUVのどれを乗っても感じさせられる点です。数年前まで視線の高い大きなSUVやクロカンが売れたのもある意味当然の事だったかもしれません。今でこそ自動車市場もダウンサイジングされ軽やコンパクトが売れる時代となってしまいましたが、SUVのこうした見晴らしの良さが失われたわけではありません。その点をいつもSUVを試乗で乗ると思い知らされます(でもやっぱり大きく感じますけど(笑))。
キーを捻りエンジン始動。プラットフォームは基本的に現行シビックを流用していますが、大きく重い為エンジンは上のクラスであるK24Aを使用してます。燃費とトルク重視のレギュラー仕様ですがK型の美点であるパワーと静粛性は相変わらず良いですね。
試乗車の置かれていた場所と位置が展示を意識した事もあって車を出すには少し面倒がありましたが、今回から採用された助手席側ドアミラーのプリズムアンダーミラーのお陰で、他の展示車に突撃する事もなく車を出す事が出来ました。便利ですねコレ・・・私のストにも欲しいくらいです。この時に丁度私のストリームと新型CR-Vが並んだようで、乗り込む前の担当営業氏が両車を見比べて笑顔で一言「似てますね」・・・やっぱり?(苦笑)
いつものように片側二車線の環状線へ乗り出すと、足腰の良さを実感します。サスの味付けはやや硬めですがボディの剛性感が良く不快な感覚は受けません。静かにアクセルを踏み込むと、出足そのものはそれ程俊敏と言えません。車重の関係か駆動系が4WDのせいなのか、ミッションの5ATに組み込まれるトルコンの食い付きから感じるには、もう少し余計なアクセル開度を要求します。僅かに右足へ力を入れると大柄なボディがリニアに速度を上げ、それからは自然な加速感を得る事が出来ます。
乗り心地はとてもフラットで、街乗りSUVとしては良いと思います。サスの硬さも乗り出してしまえばあまり感じませんし、路面のつなぎ目で硬いサスにありがちな突き上げもありませんし、変なコモリ音のような残響もありません。ハンドルの重さは適度で細かくは調べていませんが油圧パワステで間違いはないでしょう(ポンプもあったし)。ハンドルを切り返した時のリアの追従性は悪くありませんが、4WDという事もあるのでしょうが、やや重たい感じがします。試乗ではいつも陸橋下の交差点でUターンするのですが、その時のロールはSUVとして良く押さえられており乗り心地を考えると、ダンパーとスタビライザーの設定は悪くないと感じます。
そのUターンから再び加速して環状線に合流するのですが、多目に踏み込んだアクセルに反応するようにK24Aが唸りスピードが上がります、今回のCR-Vでチューニングが行われパワーが上がりましたが、やはり上まで引っ張るとそのパワーと音質はR型の比ではありません。やはりK型は名機と思う一瞬です。
この夏にモデルチェンジを受けたストリームではブレーキがお世辞にも良いとは言えませんでしたが、今回のCR-Vは流石にブレーキのタッチは良好で良く効きます。フロントはベンチレーテッド2ポッドの16インチ、リアはソリッドの16インチで、ボンネットを開けて見たマスターバックも大型を採用し手抜きはありません。どうもホンダはブレーキの効きが危機的な車がある事もあり、CR-Vはともかく他車での改良を強く望みたいところです。
走行時の静粛性は路面状態とタイヤを考えれば、もう少し静かでも良いかなという感じでしょうか? 確かに静粛性が悪いとは感じませんでしたけれど、ホンダ曰く『ベンチマークはアコード』と言われると、逆にもう少し静粛性を上げてもバチは当たらないんじゃないかと思いますが、如何なものでしょう?
試乗は僅かな時間でしたが、現行ストリームよりも新型CR-Vを欲しいと本気で思いましたね。他社のSUVと比較しても悪くない車であると思います。昨年試乗したアウトランダーやRAV4と比較してもボディの剛性や動力性能は引けを取りません。特にRAV4はやや脚が硬すぎる感覚を受けた事もあり、よりサスの動きが自然な今回の新型CR-Vの方が乗り心地が良いと感じました。
しかし、欲しいな、これ。
ただ個人的に、インテリアの出来だけは、頂けないけど!
Posted at 2006/10/15 15:56:18 | |
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自動車試乗・拝見記 | 日記