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ta_tsuのブログ一覧

2010年01月13日 イイね!

【夢のドライブ】悪い夢。

その日は、午前中雪が降った後、午後から晴れて気温があがったものの、夕方から再び冷えこんで、軽く粉雪が舞った。

仕事が終わったのが8時過ぎ。畑の中の農道を飛ばして家路を急ぐ。

雪は踏み固められた圧雪でグリップは十分、500m先の踏み切りの遮断機が下りるのが見えたが電車のライトはまだ見えない。手前のトンネルあたりだろうか。踏み切り待ちとはいえ、単線のローカル線だから車両2両分だからたかが知れてる(笑)。

農道をゆるく下った先の踏み切りの手前で減速し、ゆっくりと踏み切りに近づく。電車のライトらしい明りが右手から見えてきていた。ここの線路は2kmぐらいの直線部分だから、かなり遠くからライトが見える。

遮断機の手前でじわっと止まるつもりでゆるくブレーキを踏んだら・・げげっ!止まらない!??
タイヤがロックして滑走してる!まさにブラックアイス!必死でポンピングするが、クルマはスルスルと遮断機にむかって進み、ボンネットが遮断機をくぐった上に、フロントガラスにあたって押し上げたところ、まさに鉄道の渡りで止まった。

すかさず右手を見ると、電車のライトがはっきりと2灯に分かれてるのがわかる距離まで来ていた。1km切ってるだろう。まだ警笛は鳴らされてない。すかさずバックギアにいれて後退。ブラックアイスだからグリップしなかったらヤバいなと思いつつ、タイヤを空転させないようにじわっとクラッチをつなぎスローにスロットルをあけた。電車のライトが視界の端にはいるなか、クルマはゆっくりと後退し、遮断機が元の位置に戻った。

それでも気持ちは後退をつづけ、遮断機から1mほど下がったあたりで停車したところに電車が勢いよく目前を通り過ぎる。2両だからあっという間のことだった。あと一歩間違っていたら、あの電車と合体してしまったかもしれないと思うと背筋がゾクゾクしたし、無意識でシフトレバーを握りつづけていた左手はじっとりと汗をかいていた。

遮断機を越えた状態で、スタックし後ろに下がれなかったとしたら、どこまでトライしただろう。

とっさにバックではなく前方に進むことを試みてから、それが駄目とわかってから、急いでシートベルトを外しドアを開けてクルマからかけ降りる・・・どんなに冷静に対処しても5秒はかかるに違いない。そして間違いなく、あの距離と速度で迫る電車に対して、それら一連の動作にたる時間はなかった。

こうして多くのドライバーが不幸にも愛車を棺桶にして踏み切りで逝ってしまうのだと実感した。

電車が通り過ぎたのに警報機が鳴り止まず、あれ?と思っていたら、不意に後ろからクラクションの音がパパ−ッと聞こえた・・・はっと顔を上げてみると踏切の遮断機はすでにあがっており、後ろにはクラクションを鳴らしたタクシーが一台、早く行けといわんばかりに空ぶかししていた。

あわてて踏切を渡りながら、なんだ、あれは踏切を待つ間に不意に眠りに落ちてしまって見た、悪い夢だったんだなと安堵したものの、シフトレバーを持つ左手の掌にはじっとりと汗をかいていた。


※ この物語はフィクションです。実際する人物や団体と一切事実関係はありません。


Posted at 2010/01/13 18:35:22 | コメント(1) | トラックバック(0) | 夢のドライブ | 日記
2008年12月16日 イイね!

【夢のドライブ】売名好意?



その日は、朝から冷え込みの厳しい日だった。昨日の酒が残った重い頭をベットから引きはがして、なんとか立ち上がりふらふらとバスルームに向かう。

歩きながら自分の体から立ち上るニンニクの匂いにはきそうになった。

なんとかバスルームについて熱いシャワーを頭から浴びながら、夕べの話を思い返していた・・・。


奴から電話がかかってきたのは、仕事が終わりかけていた19時過ぎだった。

「よー、元気?」

あいかわらず能天気な声に、すぐに腐れ縁のクルマ仲間のNだとわかった。

「なんだよ、クルマならいらねーよ。分かれた女房にはらう養育費だけで首がまわらないんだから」

「おいおい、俺がお前にクルマ売りつけたことあるか?いつだって、お前が欲しいってクルマを探してやってるだけだろ。ポルシェに負けたといえばポルシェを探し、AudiTTにやられたって聞けばAudiのRS4を探し。」

「わかった、わかったよ。で、なんだよ?。なんか上手い話でもあるのか?」

「へへ、わかってるじゃないの!。今日、これから一杯やらねーか。」

「男二人でか?やだね。クリスマスイブイブだってのに、なんでお前みたいな怪しい系のオヤジと酒飲まないといけないんだよ」

「んなこと言ったって、他に予定なんかないんだろ?この前つれてた、あの螺子がちーと抜けてる巨乳ちゃんも予想外に人気でていそがしいって話じゃないか」

「そんな下らない話誰から聞いた?ま、売れるときに売れるのがいいんだよ。あの手は賞味期限が2年ないからさ。本当にオヤジ二人で飲むのか?」

「ま、ちーっとショクナイな話だしさ、奢るから付き合ってよ。」

こういうときの奴の話は、多少やばいけど上手い話も多いから、退屈なクリスマスイブイブを自宅で一人寂しく過ごすよりましとおもって出かけることにした。


北品川の奥まったところにある、焼肉屋にいくと奴は待っていた。

「お、おつかれー。汐留からタクシーのったら割りとすぐでしょ?」

「おお、でも場所がわかりにくくてタクシーの運転手にふてくされた顔されたよ」

「最近のタクシー運転手はプロがいないねー。ま、とりあえず一杯」

出てくるホルモンも焼肉もめちゃめちゃ美味い。

ビール、ワイン、と飲んで、焼酎にランディングしたあたりで、奴は切り出した。

「で、今日のメインの話はさ・・・・」

アルコールで頭を麻痺させ、気分も良くさせておいて聞かされる話が、まともな話のわけがない、と思いつつ、奴の提案はこの時期になるとクルマ屋が使う例のイリーガルな話だった。

「おいおい、それでお前がドロンしたら、俺は莫大なローンを抱えるだけじゃねーか、信じられるかよ。」

「大丈夫、絶対ドロンしないから。するときは別の奴に頼むよ、もう二度とあわなくてもいい奴」

「俺がそうじゃないって保証ないだろ」

「鈍いね、ほんと。それが魅力なんだけど(笑)」

奴の目がなんだか男のまなざしでなくて、見つめてることに気づいた。

「げ、やめろ、俺はそっちはまるっきりお断りだよ!」

「わかってるって、中村中の歌同様、手をつなげないことだって良くわかってるよ」

こいつゲイだったのか。

なんだか妙になつくと思ったらそういうことだったとは;;;

「だから、信じて。なんだったら実印と印鑑証明も預けるからさ」

結局、俺は奴の言葉に巻かれて、焼肉屋でクルマの購入契約書とローンの申込書、今乗ってるRS4の売買契約書を書いてしまった。ローンは5年。金利は低金利の2.9%。たしかに銀行から短期融資の借り入れをするよりずっと安い。


そんな、夕べのことを思い出しつつシャワーを浴びたあと奴に電話をかけた。

これで出なかったらアウトだ。本当にだまされたことになる。

6コール後奴が出た。

「もしもし、ごめん連絡遅れたから心配させたかな、だいじょうぶだって(笑)。無事ローン承認されたから今日これから陸運いって名変して、昼過ぎにはクルマもってけるよ」

奴が本当にくるまで、俺は居てもたってもいられなかった。
ずっと憧れていたあのクルマがうちに来る。しかも今乗ってるRS4と交換だ。3ヶ月の約束だけだけど、3ヶ月でも自由に乗れるなんて夢のようだった。

昼過ぎに奴は爆音とともにやってきた。

バルコニーに飛び出して下を見ると、そこにはスーパーカーのオーラーが立ち上っていた。靴をはいて上着を羽織って、玄関を飛び出しエレベーターをまたずに階段を駆け下りた。

爆音に何事かとマンションの管理人が出てきていた。

「なんです?この爆音。まさか、あのクルマお友達ですか?」

「いや、俺のクルマだよ」

バカ丸出しだって自分でわかってるけれど、ついつい自慢げに話してしまう。

それぐらいあのクルマは特別だった。

「え、あれはカウンタックですよね?あれを買われたんですか!!」

「そそ、しかもあれはLP500だよ、ただのカウンタックじゃないんですよ」

マンションの前には、いつしか人垣ができていた。それは子供のころからの憧れのクルマだった。助手席のガルウイングがあいて、奴が顔出した。

「はい、オーナー、お届けしましたよ!。どうぞ!」

早速クルマに乗り込む。くそみたいに重いクラッチをけりこむように切って、トラクターみたいにストロークの長いシフトをローに入れる。

「トルクあるから、そのままつないでも走るよ」

「本当に大丈夫なんだろうな?」

「なにも問題ないよ。うちには現金入ったから、そこから、あなたのRS4の下取り代金はらうしね。」

「で、半年でいいんだな。」

「約束したとおり。半年たったらローン残債ついたままうちが下取りにだしてくれればいい。」

「その半年間のローンも払ってくれるんだな」

「もちろん。これでうちはつぶれなくて済むから。本当に助かったよ。」

「もし半年たっても、俺が返したくなくなったら?」

「そのときは、RS4の下取り代金で一部返済して残るローンを払ってくれればいいから、問題ないよ、他のクルマに乗り換えるときは、RS4の下取り金を頭にしてくれればいいしね。欲しい車は責任もって探すから」

「もし事故ったらどうする?」

「保険でなおせばいいだけ。問題ないよ。心配しなくてもみんなやってるんだよ、こういうの。BLOGとか見てると同業にはすぐにわかるよ」

こうして、俺の半年限定カウンタックライフは始まった。

名前を貸したというより売った気分だけど、そんなことであのLP500のオーナーになれるなら安いもんだ・・・たぶん、きっと。



※ この物語はフィクションです。実際する人物や団体と一切事実関係はありません。
Posted at 2008/12/17 18:30:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 夢のドライブ | 日記
2008年07月11日 イイね!

【夢のドライブ】雨宿り。

【夢のドライブ】雨宿り。梅雨の合間の久しぶりの星空に誘われてナイトドライブに出た。夜空にはまるでスリットが切れたように細い三日月浮かんでいて、開け放した屋根ごしに低いビルの谷間に月が見え隠れする。

自己顕示欲に駆られた者どもの走り回る環状線はスルーして北上。外環道を抜けて関越道に入った。平日ということもあり、交通量は少なめで3車線の一番右側をいつものペースで走る。

所沢を過ぎたあたりで、月が見えなくなったことに気がつく。すでに沈んだのか、雲が出てきたのかとっさにわからなかったが、先ほどまでかすむ夜空にかすかに見えていた星もみえなくなっている。

三好を過ぎるころは空気が湿ってきたのがわかった。
次の高坂SAで屋根閉めないとやばいな。そう思いつつ雨が降り出したらすぐに路肩に寄れるように右の車線から中央車線に移って先を急ぐ。

川越ICを過ぎたところで、いきなりフロントガラスに大粒の水滴がポンポンポンポンとあたって砕け始め、やばい、路肩にって思った瞬間にワイーパーを動かさないと視界が確保できないほどの降りになってしまった。

こうなると路肩に止めて屋根を占めるのは無理だ。陸橋の下とか雨をしのげる場所を探さないと、路肩に止めるための減速する時間とトップを占める30秒程度の時間の間に室内はびちゃびちゃになってしまう。

幸い今どきの屋根なしは90kmぐらい出せば大雨でも室内に雨は入らないからトップを閉める30秒程度の時間雨をしのげる場所を考えながら探先を急ぐ。

ーそうだ!鶴ヶ島JCなら路側帯も広くて停めやすい。

雨は一層激しく降っていて、シートバックがウインドディフレクターが巻き込んだ飛沫で濡れ初めた。鶴ヶ島JCの圏央道行きランプを通り過ぎたら一気に減速し交錯する圏央道への導入路の陸橋の下に滑り込む。ここは4本の導入路が交錯するおかげで、これだけ強い雨が降ってるのに路面はほとんど濡れていない。

陸橋の下には先客がいた。現行のアルファスパイダーのシルバーだ。おそらく自分と同じようにトップを閉める為にこの場に止めてるのだろう。スパイダーの手前のスペースは濡れそうだったので、追い越してその前5mほどの場所に止めてハザードを付けて急いでクルマを下り、トップを閉じてしまうと手が入りにくいシートバック裏側の濡れてる場所を賢明にタオルでふいた。

あらかた拭き終わって運転席に戻りトップを閉じようとすると後ろで女性の声が・・・。通り過ぎる車の走行音が橋に響いていたのでなんて言ってるかは聞き取れなかったし時間が時間だから背筋に寒いものを感じながらも、振り返ると肩より短い髪がびっしょり濡れた女性が立っていた。

「え!」って声を上げてしまったけれど、通り過ぎるクルマのライトに照らされた顔は青ざめて不気味な様子ではなくて、ほんとに困った表情だった。

どうやら普通の人間らしい(笑)

「おどろかせて、すいません。雨に濡れてしまって・・・」

「いやぁ、ちょっとびっくりしちゃいました(笑)。あのスパイダーの方ですが?ひどく濡れちゃいましたね。ウエスのきれいなのがあるから貸しますよ」

「ありがとうございます。自分もそうですがクルマも結構ぬれちゃって、でもタオルとかなんにも持ってなくて。」

トランクを開けて、カーショップでまとめ買いしてるウエスの袋から何枚かを彼女に渡した。

「ありがとうございます。本当に助かります。・・・それで、実はもう一つお願いがあるんですが・・」

「なんでしょう?クルマ動かなくなっちゃったならJAF呼んであげますけど」

「いえ、クルマは走るんです。でもどうやってもトップが閉まらないんです・・・さっき開けたときはちゃんと動いてたのに」

偶然にも自分には思い当たることがあった。

「とりあえず、ちょこっと見てみましょうか」

「ほんとですか!!!申し訳ないです。このままじゃ雨がやむまで動けないしどうしていいかわからなくて」

とりあえず自分のクルマの屋根をしめ、念のためにキーロックして彼女のスパイダーへ向かう。歩きながら、よもやの考えが頭をよぎる。

―ひょっとして、これ新手の美人局だったらやばいな~。
 これでいきなりデカイ男が現れて、お前のクルマのキーと有り金をだせ!って
 言われたらどうすっかな・・・
 
そんな、自分の思いを図られたかのように、いきなり彼女が振り返った。

「屋根しまらなかったら、このまま雨宿りするしかないでしょうか・・」

「大丈夫。自動がだめでも手動でしめられます。女性一人じゃ厳しいかもしれないけれど僕がしめてあげますよ。」

「すいません、本当に。」

クルマのまわりに人が隠れてる様子はなかった(笑)ので、運転席に座りエンジンをかけたうえで、センターコンソールのトップ開閉ボタンを押す。忙しくポンプの音ががするもののトップは動かない。

「ここに止めてからずっとこんな感じなんです。開けるときはすんなり開いたのに。」

クルマから降りて運転席を倒し、座席の裏にある物入れを開け、怪訝そうに見ている彼女に問いかけた。

「ここ最近触ったりしました?」

「え?、あ!はい。さっきここに止めたときに、そこにタオルをしまってた気がして開けてみたんですけど・・入ってなくて。」

「ああ~、その時になんかワイヤーみたいなもの引っ張っちゃったりしたかな?」

「あ、はい。暗かったので中を探ったときに指がひかかってひっぱちゃいました・・・でもなにもおきなかったので、そのままです。あれがまずかったんでしょうか。」

「たぶん。でも、それが原因だったらすぐ直りますよ!」

小物入れの中にある小さな輪っかのついたケーブルを、ゆっくりと中に押しむと中に入っていく手ごたえがあった。

「これで閉まるかもしれない。」

再びトップ開閉ボタンを押すと、オイルポンプがちょっと唸ったあとグンっという音とともにトップが動き出した。

「ああ!!うごいた!なおったんですねー」

彼女は満面の笑顔で喜んだ。

ややこしい動きをするスパイダーのトップは、ロールバーにトップのライナーがやや引っかかりながらも無事しまった。

「やっぱり思ったとおりでしたね。あの輪っかは油圧ポンプの圧力抜きなんですよ。実は自分も以前に同じミスをしてね(苦笑)」

「それは、どういうときに使うんでしょうか?」

「ポンプが故障したときに手動でトップをしめるのに抵抗をなくすためですね。間違えて引っ張っちゃたら今みたいに押し込んでみてください。」

「覚えておきます。本当に助かりました。なんてお礼を言っていいやら」

「わたしたタオルで車室内と自分の髪を拭いたほうがいいですよ。レザーシートはふきあげたあとで、保湿剤をぬったほうがいい。」

「はい。ありがとうございます。これは洗ってお返ししますので」

「いやいや、いらないですって(笑)。1枚10円もしないんだからそのままクルマ用のタオルとして使ってください。」

彼女は黙々とタオルで、すっかりぬれてしまっているシート後ろ側のスペースをふく。
ひとしきりぬれたシートを拭いたあと、彼女は自身の濡れた髪をタオルで拭った。

「革シートの保湿剤ってオートバックスとかで売ってますか?」

「ええ、お手軽なシートタイプがいいですよ。ちょうど空き袋あるからあげます。お勧めです。」

「ありがとうございます。回りにオープンカー乗ってる人いなくていろんなことわからないままなんです。実は他にも教えていただきたいことがあって・・・」

それから屋根の洗浄剤のこととか防水用のケミカルとかオープンカーならではのメンテについて問われるままに立ち話をしてたら、いつしか雨もあがり日付が変わりそうな時間になっていた。

ぼちぼち引き時だ。

「じゃ僕はぼちぼち行きます。帰り道、お気を付けて。」

「あの、メールアドレスとか教えていただけませんか?」

「いいですよ」

自分の携帯のメールアドレスを彼女の携帯で入力して渡して、車に戻ると、ゆっくりとスタートした。バックミラー越しにお辞儀をする彼女が見えた。

― あ、名前きかなかったな・・・まあ、メールが来ればわかるからいいか。


あれから半年。いまだに彼女からのメールは来ていない(笑)。

※ この物語はフィクションです。実際する人物や団体と一切事実関係はありません。
Posted at 2008/07/11 09:53:12 | コメント(2) | トラックバック(0) | 夢のドライブ | クルマ
2008年01月09日 イイね!

【夢のドライブ】犬を棄てる女

【夢のドライブ】犬を棄てる女喉が乾いたので、いつものパーキングエリアに入りクルマをとめた。

エンジンを止めてクルマから降りると、隣に停まってるS600の車中で大きな声がしていることに気がついた。

「だから、そういう意味じゃないって」

「じゃーどういう意味よ。一体全体このピアスはなんなのよ」

あー、痴話喧嘩してるよ。

さしづめシートの隙間かフロアに彼女の見覚えの無いピアスの片割れとかが落ちてたんだろう。よくある話だ(笑)。

くわばらくわばら~、障らぬ神にたたり無しってか(笑)

とりあえず隣のクルマは見ないようにして車から降り、PAの自販機コーナーへ向かう。トイレに行き缶コーヒーを買って出てくると、駐車場では隣の車の戦線が拡大したようで、男が車外でドゲサしてる。おまけにクルマの窓があき、中から怒鳴る女の声は小さなPA中に響き渡っていた。

とりあえずこの状況で、あの火花飛び散る最前線に戻るような危険は冒したくないし、人の痴話げんか観戦も面白そうだからPAのベンチに座って観戦を決め込んだ。

女の声は一段と大きくなっていた。

「ドゲサしたって、しらねーよ、お前なんてゴミだよゴミ!。」

「堪忍してください。あっちが誘ってきたんですよ」

「誘われたら、誰でもやるのかよーっ、しかも人の車、勝手に使いやがって。誰にでも尻尾ふるお前は犬野郎だよっ!。」

車中から窓をあけ顔をだして激昂する女性は外でドゲサする男を容赦なく罵倒する。

こりゃすげーな。かたぎじゃないな。

仕事柄、そっちの筋の人間と会うことは少なくないから匂いで解る。しかも、この女の方が立場が上だ。おそらく姐さんだろ。

つーことは女も浮気か・・・やばいな、この男。下手すりゃ死ぬ。

窓が開いてるので、初めて気づいたけれど車中では犬がキャンキャンと吼えてる。お定まりの水犬だ(笑)

「おめーは、もうイラねーよ!。ふざけやがって。ここで終わりだよ!」

「え?なに?どういうこと?」

きょとんとする男にむかってクルマの中から、男のものだと思われるポーチやタバコ、ライター、携帯などが次々と投げ捨てられた。

おいおい、もうちょっと手加減しろって。
うちのクルマにあたりそうだぜ。

投げられたものを拾いもせず、男は泣きそうな声で懇願を続けてる。

「やめてよ~、おいてかないでよ。だいたい俺がいなくなったら、明日から、その犬の面倒は誰がみるんだよー、犬がかわいそうだよー」

犬の面倒を見るための男だったのか(笑)

「だったら、これも一緒に棄ててやるよ!」

え?もしかして・・・

犬の鳴き声がひときわ高くなったと思ったら、窓からトイプードルがお尻から飛び出してきた。明らかに女が投げ出したに違いない。男は慌てて犬を受け止める。ナイスキャッチだ(笑)

「馬鹿犬同士、一緒に死ねっ!」

車中の女は、そう吐き棄てるとホイールスピンさせながら発進。パーキングエリアを駆け抜けていってしまった。さすがにS600のフルスロットルは速い。あっといまに見えなくなった。

後には鼻声でなく犬を抱えた薄着の男だけが残され、犬を抱きかかえながら散らばった荷物を拾ってる姿はいい奴に見えた。

私は自分の車に乗り込むときに男に声をかけた。

「たいへんだな。あれ追っかけるなら乗っけてやるけど。」

「いやいいよ。追いついたってダメだろうし、あんたにまで余計な迷惑かけちゃったら大変だから。・・・・・潮時だよ。」

あらためてちゃんとみた男の顔は井上順みたいだった。ハンサムだが気の弱い感じで、年齢はたぶん私とおなじか少し若いかもしれない。かたぎにはみえないが筋者ではなく、たぶんホストとかの水商売だろう。

男は続けた。

「高速バスのバス停って、近所にあるかな?」

「ああ、このPAの出口付近にあるよ」

「そりゃ助かった。でも犬連れても乗れるかな」

「むきだしはダメじゃないかな・・・、とりあえずバックでもなんでも、なんかに入ってないと。トートバックならトランクにあるから貸してやるよ。その犬なら入るだろう。ケージが壊れたとか、とりあえず言い訳すればなんとかなる。」

私はトランクをあけ、友人からもらったまま入れっぱなしになっていた販促品の布製トートバックを渡し、男は鳴いている犬をやさしく入れた。バックの上から犬の顔がでてるが、まーいいだろう。

「助かるよ。ありがと」

「気をつけてな」

いつまでも手を振ってくれる男の姿をバックミラーでみながら、私は本線に向かって一気に加速した。

※ この物語はフィクションです。実際する人物や団体と一切事実関係はありません。
Posted at 2008/01/09 13:32:09 | コメント(8) | トラックバック(0) | 夢のドライブ | 日記
2007年08月27日 イイね!

【夢のドライブ】 1年後のランデブー。

【夢のドライブ】 1年後のランデブー。マンションの駐車場に降りて、ゆっくりとカーカバーをはがした。この半年間毎週欠かすことなくエンジンをかけて、地下駐車場の中を2周してきたけれど、今日はよいよこの車で外に出る。

思えば、長い一年間だった。

面倒な仕事から遅く帰ってきて、先に寝ている彼の寝顔を確かめたのが、去年の夏。テーブルの上にはホワイトボードのサインペンでメモに走り書きされた

「ごめんね、風邪っぽいので先に寝ます」

というメモがあった。

申し訳ない気分で凹みながら、とりあえず暖かいお茶を入れて一人で飲んでると、いつもと違う雰囲気に気が付いた。

なんかおかしい・・・・寝室が静か過ぎる?!。

胸騒ぎがして、あわてて寝室のドアを開けベットに寝ている彼に駆け寄った・・・・安らかな寝顔とは裏腹に、彼の体はすでに冷たくなっていた。慌てて救急車を呼んだが何の役にもたたなかった。司法解剖から戻ってきたのは数日後。死因は脳梗塞だった。

亡くなる前の数日、帰宅した彼が頭か痛い風邪っぽいって言っていたのが思い出された。

葬儀とかは親類と会社の同僚、友人たちがやってくれて、ほとんど何もせず日々泣いていた。自分を責めても仕方ないことだと解っていたけれど、あの日もっと早く帰っていれば・・・・前日とりあえず引っ張ってでも病院に連れて行ってたら・・・・と、たらればの後悔の波が、後から後から押し寄せてきて涙がとまらなかった。

四十九日を過ぎたころ、会社の同僚であり旧来の友人のM君が訪ねてきてくれた。M君はあの日、最後に彼と話した人だった。

「今まで黙っていたけれど、あの日、昼飯食べたとき、あいつは変なこといってたんだよ。」

「どんなこと?」

「俺に何かあったら車の処分はお前に任せるからさーって。いつものことながら、あまりに唐突なB型っぽい話の飛び方だったから、おうおう、もらってやるよ、俺が大事に乗るよって適当に答えたんだけど・・・・。あいつなんか予感してたのかもしれない。」

そうだった。

彼が愛してやまない車があったことを私はすっかり忘れてた。結婚してすぐに買って以来大事にしてる車。

「いいよ、彼がそういったんなら。M君なら問題ないし手続きして」

「いやいや、勘違いしないで。あの時はこんなことになるとは思いもよらなかったから適当に答えただけで、僕が乗るとは思ってない。いろいろ考えたけれど、僕は、妻である君がちゃんと乗りついで欲しいと思う。」

「えええ!!!、無理。ぜったい無理。免許とってから3回ぐらいしか運転したことないしAT限定免許だし、左ハンドルだし。」

「AT限定からMTへの限定解除なんてたいしたことないし、左ハンについては、僕のゴルフで教えてあげるから大丈夫。彼も常々君が運転できたらいいのにって言ってたのは、君も覚えてるだろ?」

たしかに。

彼はことあるごとに、オープンカー好きな私に、自分ひとりであの車に乗れるように限定解除をしろって勧めてたけれど、めんどくさがりの私は、助手席で十分だから結構ですって突っぱねてた。

M君につれられて、ほぼ二ヶ月ぶりにマンションの地下駐車場に降り、持ち主を失った愛車の前に立った。うっすらホコリが積もったシートカバーを剥がすと、ぴかぴかのAudiTTロードスターが飼い主のことを待つ忠犬のように佇んでいた。

「ほら、やっぱりこれは僕が乗る車じゃないよ、こうしてシートカバーをとった時に君の事待ってたって感じがするよ。」

M君がドアを開け、イグニッションをオンにするとキュルキュルという長めのセルの音とともにヴォーンとエンジンが掛かった。と、同時に彼が電源を入れっぱなしにしてたのだろう、カーステが鳴り出した。

それは、二人のドライブで定番だった曲。
メセニーの「Last Train Home」だった。
何処に行くときでも、必ず帰り道に彼が聞いていたっけ。
きっとこの車に最後に乗ったときにも聞いていたに違いない。

あまりに、できすぎの偶然だったけれど私の気持ちはこの曲を聴いて固まった。

「やる!。乗れるようにがんばる。」

まずは教習所に通い、AT限定の解除まで半年。なんとか右ハンドルのMTの教習者を乗れるようになったところで、今度はM君の足車のゴルフIIIのGTIで、隔週の週末ごとに左ハンドルMTの練習すること半年。先週末、ようやく外に出るお許しがM君から出た。

地下駐車場のスロープをゆっくり登って外に出た。
真っ青な空が目に痛い。

長い間土のなかで暮らした蝉の幼虫が外にでるってこんな感じなんだろうか。

駐車場からでてすぐに幌を開けると夏の日差しが容赦なく照りつける。


幼虫が羽化して羽ばたいた気分ってこんな感じなんだろうね。


混んでる国道をなんとか抜け外環道にのり、関越道、上信越道と進む。目指すゴールは彼の実家のある長野。平日ということもあって、高速道路には車が少なく、自分のペースで走れた。

走りながら、このクルマの楽しさがステアリングを通してひしひしと伝わってきて、彼が生前に見た風景、ステアリングの感触、それらを実感した。

この車、ホントに楽しいんだ。


気持ちよく上信越道を走っていると、小諸ICを越えたあたりで、追い越し車線をかなり速く走って来る車がミラーに写った。


ポルシェ?・・・・って思ったとたんにそのクルマは横を通り過ぎた。


あ、同じ車!緑色のTTロードスター。同じ左ハンドル。

通り過ぎるときに運転席をみたのだけれど、あちらはトップを閉じていてドライバーの顔があまり見えなかった。でも男の人のごつい手がステアリングを握ってるのが少し見えた。

そのTTRは追い抜いた後ブレーキを踏んで速度を落とし、私との距離をキープしながらハザードを点滅して並走しはじめた。まるでテレビでみた宇宙船のランデブーみたいに。見ず知らずの人が、同じクルマに乗っているだけで挨拶してくれるなんて初めての経験だった。

こんなことあるんだなー!

そのまま30秒ぐらいランデブーで並走してたら、後ろから来たレクサスが、不躾に何度もパッシングをしてきた。そのとたん、その車は、ハザードを消し、まるでワープするみたいにスルスル加速していった。もちろん、パッシングしたレクサスを置き去りにして・・・。

見る見る小さくなる後ろ姿をみてたら、ひょっとして、あれは彼が乗ってたんじゃないかって気がしてきて、久しぶりにポタポタと涙がほほを伝って落ちた。

彼が降りてきて一緒に走ってくれたんだよね、きっと。


遠くに消えて見えなくなったTTRを見送って、これで本当に彼とお別れだって感じた。同時にあの日から1年間眠ってたような私は、今日で終わりにしよう。

そう思ったら、なんだか大きな声が出したくなった。高速で走る風切り音に負けないように私は浅間山に向かって大声で叫んだ。


「明日からちゃんと前を向いて、窓も屋根も開けて気持ちよく走りますよーっ!! 行ってきまーすっ!!」

すっきりした。

長野の目的地まであと1時間。

「Last Train Home」は、もうちょっと先で聞こう。

青い空の向こうに見える長野を目指して、私はアクセルを踏んだ。


※ この物語はフィクションです。実際する人物や団体と一切事実関係はありません。
Posted at 2007/08/27 17:15:26 | コメント(5) | トラックバック(0) | 夢のドライブ | 日記

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「@サンデ 納車?」
何シテル?   11/08 16:06
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