公道で久しぶりの「フラットスポット」
ホントはいけないんだけど、公道で一般車と「バトルする」って結構あったりする。
RX-7を仕事で使うことは多いんだけど、普通に同じ時間帯に通勤に使うとかじゃないので、いろいろな「種類」のドライバーに遭遇する。
時間帯別にいうと、普通の通勤時間帯である、朝8時&夕方5時ぐらいに走っているドライバーは、ワタシ的には「これぞプロ」という人が多い。車間距離の取り方や、信号が変わってから発進までの反応の早さ、割り込みのスマートさ、ウインカーを点灯させるタイミングなど、とても「キビキビ」としていて、嫌味というか「敵意」がない。毎日、同じ場所を走っているから、もっとも効率のいい走り方を体得しているのだろう。
ところが、もうちょっと時間帯が早まると、そう、朝4~5時ぐらいかな。やたらと攻撃的なドライバーが多くなる。この時間帯は、本来の意味でのプロドライバー(職業運転手)が多いが、明け方で交通量が少ないのをいいことに、「ミラーで確認する」とか「一時停止で確実に止まる」とかをあまりしない。また、「どこでも駐車する」「平気でUターンする」というように、周囲に対する気配りがあまり感じられない。空荷のトラックが各ギヤでレブリミットまで引っ張るような走りをしているかと思えば、自転車と同じぐらいの速度で走るタクシーがいる。そして、歩道からは配達員と思われるプロライダーが不意に現れ、平気で逆走してくる始末。
昼間の時間帯は、朝10時から午後2時ぐらいまでは、「ゆったりまったり」のドライバーが多い。都内だと営業車(タクシーじゃなくて、営業マンが運転しているらしきクルマ)がセカセカ動いているけど、ウチの近所は「買い物中年&年配者」が多い。彼らの運転も油断ならない。左に目一杯寄せて信号の先頭に止まり、右ウインカーを出している。「おまえ、最初は左に曲がろうとしただろ」が明白だが、「もしかしてUターンするつもりか?」と周囲を惑わす。おばちゃんのスクーターはスーパーの荷物満載で時速10kmぐらいしか出ていない。おまけに左足をつねに出しているから(転ばないように?)危なくて抜けない。黙って着いてこい、か。
公道にはいろいろなドライバーがいて、「お互いに邪魔し合って」いるようだ。
そんなある日、仕事で現地に直行する際、途中の高速道路が夜中だというのに予想外の渋滞が発生していて、おかげで待ち合わせに遅刻しそうになったので、「久しぶりに公道を本気」で走らなければいけなくなった。
そう、バトルの相手は「明け方のプロドライバー」たち。ヤツらは尋常じゃない。こっちがRX-7だと認識したからなのか、ムキになってしかけてくる。
今どき、角目2灯のクルマなんてないから、相手は最初、軽自動車だと思うらしい。左右のライト幅が狭いしね、リトラクタブルは。
そんなヤツに後ろから突っつかれたからムキになったのか? もちろん、トラックなんか、いくら空荷といっても障害物のない道路なら抜くのは簡単だ。高速道路なら相手にならないし、ワインディングだってアウトから抜ける。それに、向こうも仕掛けてはこない。
しかし、今回の「明け方のプロ」は仕掛けてきた。路上の障害物を巧みに利用するのだ。2車線の国道で車線またぎをしたり、路駐のクルマを使って車線変更を妨害したり、たまたま遭遇した「ごゆっくりさん」の隣りでわざと速度を落とし、こちらを黄色信号で止まらせようとしたりする。つまり、「何としてでも前に行かせない」という作戦に出るのだ。
「いったい、何を争っているんだ?」と、我に返り自問自答する。彼らと付き合っていても、それは「競争」ではないのだ。決して目的地に早く到達するわけじゃない。逆に「遅刻」の可能性が高くなるのだ。
彼らは会社のクルマに乗っている。仮に接触しても、自分の腹は痛まない。だから、多少アバウトな運転もする。
こちらは後ろを走っているから加害者になりやすい。マイカーだし車両保険にも入っていない。絶対にぶつけたくないから、どうしても車間距離を空ける。ロータリーはエンブレが効かないし…。
そんなこんなで、たぶん、2kmぐらいバトルをしたんじゃないかと思うが、そこへまた空荷のトラックが交差点を曲がって進入してきた。ヤツはぜんぜん飛ばす気がないらしいが、それでも右側車線を走っていた。
そのトロトロ加減を見た瞬間、よせばいいのに、それまでのバトルで少々アツくなっていたこともあって、つい、そのトラックを「あおって」しまった。彼は(たぶん男だと思う)このバトルには関係ないのに…。彼はミラーでこちらの行為を確認したのか、猛烈にダッシュして、そして…そして…急ブレーキをかけた…たぶんそうだと思う。信号も交差点もない、中央分離帯の横で、あろうことか急ブレーキをかけて停止したのだ。
「止まれない」と思った。ロックするまでペダルを踏んだ。GT-RグレードにはABSはない。何となく追突する瞬間をシミュレーションしていた。「刺さるかな、潜るかな、これが走馬燈か?」。
クルマが止まった瞬間、後方からタイヤスモークが流れてきて視界を覆った。「助かった、どこにもぶつかってない」。スモークが霧消し、前方がクリアになったそのとき、すでに前走のトラックはいなかった。もっとも、放心状態になったワタシは、ヤツを追う気も失せていたが…。
だって、ヤツは、「サイドブレーキ」で止まったんだぜ?
ブレーキランプは点灯しなかった…たしかに点かなかった。だからこちらのブレーキが遅れたのだ。よく、トレーラーなどで牽引車両の配線をつなぎ忘れたりすると、ランプが点灯しないということがあるが、ヤツのトラックは1.5トン。ブレーキランプが切れていた可能性もゼロではないが…。
どちらにしても、状況からして明らかに追突させることを狙った行為だ。まさに「狂気」。会社のトラックでそこまでやるとは。
これまでの経験では、もし、こういう状況で、こちらの挑発行為に逆上したなら、クルマが止まったときに相手が降りてきて文句のひとつもいうんじゃなかろうか? 追突しなかったら、それで諦めて行ってしまうのか? ホンモノの愉快犯か?
幸い、目的地には定刻前に到着することができた。ただし、帰りの高速道路では、タイヤから連続的な振動が伝わってきた。
「フラットスポット」。でもそれほどひどくはなかった。たぶん、もう200~300km走れば治るだろう。しかし、その振動が続く間、何度も何度も「スモークの中の自分」を思い出していた。
「公道」には30年来の経験則が通用しないような、そんな危険が潜んでいるということを思い知らされた。
あおっちゃ、ダメなんだよ。
Posted at 2012/12/06 00:38:46 | |
トラックバック(0) |
そこはかとなく | クルマ