2011年06月02日
タービン
タービン (turbine) は燃焼ガス流の通過・膨張によって回転し、そのエネルギーの一部を回転力として回収するための機構である。すなわちタービン部の役目は圧縮機やファンもしくは出力軸を回転させることであり、それらと直結されている。基本的に圧縮機と似た形状をしており、遠心式と軸流式がある。過酷な環境の中で動作させるために様々な工夫を必要とし、エンジンの他の部分に比べて入念な検査と頻繁な交換が行われる。
現在広く用いられているのは軸流式タービンであり、軸流式圧縮機と同様に回転するローターとエンジンケースに固定されて流れを整えるステーターにより構成され、両者の組み合わせが多段階に配置されている。ただし圧縮機より段数は少ない。
多くのジェットエンジンでは圧縮機が低圧部(前段)と高圧部(後段)の2つの部分に分けられており、加えてファンや出力軸を持つ場合もあるが、それぞれを駆動するためにタービン群も分割されている。高圧用圧縮機を駆動するためのタービンは大きな力を得られる燃焼室直後にあり、低圧用圧縮機もしくは出力軸を駆動するためのタービンはより排気口に近い側にある。エンジンシャフトを中空にすることでこれらのタービンは全て同軸で回転している。
タービンブレード
タービンは内径側と外径側で周速度が異なり、タービン・ブレードで燃焼ガスの膨張エネルギーを効率的に取り出すためにブレード形状にひねりが加えられ、先端側と根元側で角度が変えられている。このため先端部では反動タービンとして、根元部では衝動タービンとして機能する反動衝動タービン (Reaction-impulse turbine) 型となっているのが一般的である。
タービン部入口温度が高ければ高いほど出口へ向かう過程での膨張比が大きくなり、エンジン効率は向上する。このためタービンブレードは高温に曝されながら同時に遠心力や振動に耐えうる能力が求められ、その材質や構造には特別な注力が払われている。
実際の膨張仕事と理想的な膨張仕事との比をタービン断熱効率またはタービン効率と呼ばれ、21世紀現在では90%以上に達している。
タービン・ブレードの材質にはニッケル合金やコバルト合金といった耐熱合金が用いられ、近年ではさらなる高温に耐えうるセラミック製や溶融した金属の凝固時に温度管理を厳密に行う事で結晶化する方向を揃えた単結晶のブレードも使用されている。
特に燃焼室側に近いタービン入口部の最初の数段のブレードは高効率な冷却機構を備えている。多くの場合はブレード内部に空洞があり、そこへ圧縮機からバイパスされた圧縮空気がローター取り付け部より導入される。このバイパス空気によってブレード内部を対流冷却するコンベクション冷却は最も基本的な方式であり、さらに内部を冷却したバイパス空気をブレードの翼表面や後縁部の細孔から流出させて断熱層を作り外部からもブレードを冷却するフィルム冷却方式とするものもある。多くがコンベクション冷却とフィルム冷却を組合せた方式では、ブレード内に仕切りを作り流路を複雑にすると共に強度を保つようにしている。ブレードの穿孔にはレーザーなどを用いた高精度加工法が用いられる。ただしいずれも高度な加工技術を必要とし、消耗品であるブレードに適用するとコスト高となるため、費用対効果面での考慮が求められている。
ブレードの取り付け部には高温で生じる不均一な膨張によって熱応力がかかるため、クリスマスツリーやファーツリーと呼ばれるジグザクに入り組んだ噛み合わせ形状によって、熱応力を逃がす工夫がなされている。運転後にジェットエンジンが冷えるとクリスマスツリー部分の隙間が広がる仕組みになっている。
タービン・ノズル
タービン・ノズルはタービンの静翼であるノズル・ガイド・ベーンが多数環状に取り付けられている。動翼と同様に高温に曝されるために1段目や2段目までが空冷タービン翼構造になっているものが多い。
タービン・ケース
タービン部は熱による膨張と収縮によって各部の大きさと位置が変化し、特にブレードとケースの隙間はタービン効率に大きく影響する。タービン・ケースはエンジンの最大出力時にタービン・ブレードとの隙間が最小になるように設計されているが、巡航時等ではブレードに比べてケースの膨張が大きくなり、隙間が広がるため、アクティブ・クリアランス・コントロール・システムと呼ばれる、空気を吹き付けることでケースを冷却して適正な大きさにする仕組みが備わっている物が多い
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Posted at 2011/06/02 00:25:21 | |
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ジェットエンジン | 日記
2011年06月02日
燃焼室
空気の流れから見て圧縮機とディフューザーの後に位置している燃焼室 (Combustion Chamber) の役割は、取り込んだ空気流に熱エネルギーを与えることであり、燃料噴射による火炎を維持しながら適度の流入空気を取り込んで、空気と燃料をすばやく混合して燃焼させ、後に続くタービンや排気ノズルに高温ガスを送り出すことである。
燃焼室にはいくつか異なる形状が存在するが基本的には入れ子状の構造をしており、燃焼室の外形を構成するケーシングと内側のライナ (Liner) から成る。ライナは多数の孔が開けられており、燃焼前の空気の層流で冷却されるように配置されている。ライナの内側に燃料噴射ノズルが設置されており、点火プラグは燃料噴射ノズルに近い4時と8時付近の2ヶ所に設けられることが多い。
燃料にはジェット燃料が使用され、その主体であるケロシンの理想的な空燃比は15対1であるが、実際に燃焼室に送り込まれる空気流量の全量と噴射される燃料の総空燃比(重量比)は40 - 120:1程度である。燃焼室の上流部では、燃料噴射ノズルの周囲のオリフィス (Orrifice) の機能を持った旋回案内羽根(Swirler、スワラー) から、14 - 18:1程度の混合比になるように空気流量の25%程だけがライナで囲われた燃焼領域に取り込まれ、これは一次空気と呼んで区別される。残りの空気流量の75%程は二次空気と呼ばれ、燃焼室の内部冷却と燃焼ガスの希釈、一次空気で完全燃焼しなかった燃料の二次燃焼に利用される。
燃焼室直前の圧縮空気の流速は100 - 200m/sであるが、ライナはその流れから火炎を保護し、部分的に10 - 20m/s程度に減速された燃焼領域を作り出す。ケーシングとライナの間およびその孔には空気が流れ、燃焼領域に流れる空気量が調節されるとともに高温に晒されるライナが冷却される。
燃料コントロール装置によって高圧に加圧された燃料はノズルから噴射されて霧状にされる。始動時は圧縮空気の流れの中で、ノズル近くに位置する点火プラグの電気火花によって霧状の燃料に点火される。一次空気の持っていた軸方向での運動量はスワラーによって旋回運動に変換され、燃料噴射ノズルから噴射される霧状の燃料との混合とその初期燃焼に必要な時間だけ旋回しながら燃焼領域の前部を形成する。最初に点火プラグによって点火された後は、火炎は自ら燃焼領域内で維持するため、電気火花は始動時だけ放たれる。
旋回渦(スワール)を形成しながら空気と燃料は混ざり合い燃焼することで一次燃焼領域を形成する。ライナの冷却も兼ねた二次空気が、ライナの孔から一次燃焼領域の下流側に流入することで、二次燃焼領域を形成する。流入する二次空気の流れがその上流である一次燃焼領域内に環状渦を作り、これが火炎を持続させる効果を生む。二次燃焼領域内では一次空気で燃焼しきれなかった燃料まで燃焼されると共に二次空気による希釈が始まる。ライナ内の後部は混合希釈領域となって一次空気と二次空気が混合され、後に続くタービンノズルやブレードが部分的な高熱で損傷を受けないように高温ガスは平均化される。燃焼直後の一次燃焼領域のガスは2,000℃程になるが、二次空気と混合希釈されることでタービン直前では1,000℃前後まで低下する。
エンジンの停止時に燃料が燃焼室内に残留することで、次回の始動時に燃料過多となってホット・スタートや燃焼室の焼損の可能性があるため、底部にドレンバルブを設けてドレンタンクへ残留燃料を排出するようになっている。
Posted at 2011/06/02 00:17:17 | |
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ジェットエンジン | 日記
2011年06月02日
遠心圧縮式 (centrifugal compressor)
流入空気を羽根車(インペラー (impeller))によってエンジン回転軸の遠心方向に90°偏向させ、その遠心力と圧縮機出口に設置されたディフューザーで圧力を高める方式である(インペラーとディフューザーの組を1段と数える)。構造が簡単で1段当りの圧縮率が高く、回転数がある程度変動しても効率が落ちないといった利点があり、小出力ならば軸流圧縮式に比べて軽量化が可能である。このような特徴からオハインやホイットルが製作した初期のターボジェットはこのタイプの圧縮機を使用している。ただし、軸流式と組み合わせなければ段数を増やすことが難しく、圧縮比を大きくするためにインペラーの直径を増すと前面投影面積が大きくなる(機体に搭載した場合空気抵抗が増加する)という欠点を持つ。したがって今日の航空機用大推力エンジンにはほとんど用いられない。しかしながら、中型輸送機用ターボプロップや中・小型ヘリコプター用ターボシャフトなどの比較的低出力のエンジンには、その構造の単純さ故に今なお使われている(その場合、軸流式との組み合わせであることも多い)。また、ホンダジェットに搭載されたターボファンエンジンHF120の高圧圧縮機(最終段の圧縮機)にもチタン合金製の遠心式圧縮機が使用されている。ちなみに航空用レシプロエンジンのスーパーチャージャーもインペラーとディフューザーを備える遠心圧縮式である。
軸流圧縮式 (axial compressor)
流入空気を回転する動翼(ローター、Rotor)と固定されていて流れを整える静翼(ステーター、Stator)によって加圧し、空気がエンジン軸方向に進むにつれて加圧されていく方式。ローターは可動ディスクの周囲に細長いブレードを配列した羽根車で、ステーターはローターと同様のブレードをエンジンケースに固定することで構成される。ローターとステーターの組み合わせが交互に何段か連なっており(ローターとステーターの組を1段と数える)、空気はそれらを通過するごとに次第に高圧となっていく。構造は複雑になるが多段化しやすく、よって高圧縮比を得られ、エンジン直径を小さくすることができる。一方、ブレードの製作にはコストがかかり、加工精度如何でブレードによるフラッターを起こしやすいという欠点がある。このフラッターはステーターの角度を調節することである程度まで対応できるが、回転数は限られる。現在では1軸式は少数派で低圧タービンで低圧圧縮機を駆動し、高圧タービンで高圧圧縮機を駆動する事により効率を高める2軸式が主流である。近年の大型、高出力ターボジェット、ターボファン、ターボシャフトのほとんどはこの軸流圧縮式を用いている。小型のものでは圧縮機の後段の高さが小さくなるために効率が低下しがちであり、最終段のみ遠心式とする場合もある。
ディフューザー
圧縮機の後方に位置し、圧縮機出口と燃焼室との間をつないでいる。ディフューザー (Diffuser) は、圧縮機で圧縮された空気の流れを燃焼室で利用するのに適した速度まで落とすため、末広がりのダイバージェント・ダクト形状になっている。圧縮機から送られた空気の速度エネルギーが静圧に変換されるため、ディフューザー出口ではエンジン中でも最も圧力が高くなっている。
Posted at 2011/06/02 00:11:28 | |
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ジェットエンジン | 日記
2011年05月31日
ドラッグレース(Drag race)は、アメリカを発祥とする直線を停止状態から発進し、ゴールまでの時間を競う自動車競技。
シグナルが変わった瞬間の一瞬の反射神経と巨大なパワーを路面に確実に伝えるためシフトチェンジやペダルワーク、そしてそれらを維持する精神力を競う。元々はアメリカの若者の間での夜中の違法レースが発祥とされている。サーキット競技とは違い、十数秒、ドラッグレース専用のハイパワー競技車の場合は数秒で勝敗が決し、またスタート前のバーンナウトおよび、場合によっては走行中にも濛々と上がる白いタイヤスモークやナイトラス・オキサイド・システムのパージバルブを作動させたときに出る白煙、盛大なエンジン音を響かせるレースカー等、見た目にもインパクトが強い競技でもある。そのため、競技としてではなく興行として行われることもある。
発祥地のアメリカではさまざまなクラスに分けられ、全米規模の協会もあるなどモータースポーツとしての地位を確立している。日本国内ではJDDAやビッグエンドレーシングクラブ(BERC)のレースが知られている。
概要に書いた通り、公道で行われていたレースが発祥である。ただし、このころは競技化されていない。 それを、アメリカのドラッグレース団体「NHRA(ナショナル・ホット・ロッド・アソシエーション)」が競技化したことが「競技としての」ドラッグレースの始まりとされる。
スクーターからスポーツカー、果てはトラクターヘッドや特殊な競技車まで多種多様な車種で行われる。車種は通常競技では統一しているが、公道での違法レースや興行の場合は違う車種(例を挙げるとバイクのスーパースポーツ対スーパーカーなど)で行われることもある。 また、ほとんどの場合2台で1対1の形式で行われる。 距離は特に定められていない。ルールによって短い距離で行うこともあれば、長い距離で行うこともあるが、1/4マイル(約402m)で行われることが多い。特に1/4マイルでのドラッグレースのことを日本では約0-400mの競技区間であることからゼロヨンと呼ぶ。
そのわかりやすさからか競技にまったく関係ない市販車の性能を表す一つの物差しとしてゼロヨンのタイムが使われることがあり、かつてはメーカーがカタログスペックの一つとしてゼロヨンのタイムを掲載することもあった。(少なくとも、かつての日本車や韓国車のカタログ・CMで見られることがあった。SS:スタンディングスタート4分の1マイルx秒と表記される場合もある。)
また、国鉄専用に用意される高速バス車両の性能要求には「ゼロヨン29秒以内」というものが含まれていた。これは元々、高速道路上のバス停から発車することを考慮したものである。
Posted at 2011/05/31 21:35:20 | |
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ジェットエンジン | 日記
2011年05月31日
広く実用されているジェットエンジン(ターボジェット、ターボファン、ターボプロップ、ターボシャフト)は原動機にガスタービンエンジンを使用しているので、内燃機関としての仕組や熱機関としてのサイクルもそれに準じている。すなわち作業流体・酸化剤として外部から取り込んだ空気を圧縮機で加圧し、燃料(主にケロシン)と混合してブレイトンサイクルの下に連続的に燃焼させ、その燃焼ガスによるジェットの反動そのものを推力として利用したり、羽根車(タービン)を用いて回転力を生成しプロペラやファンの揚力に変換し推進力にする。そして回転力の一部は圧縮機を回転させる動力となり、自身の持続運転に使われる。
ガスタービンエンジンは(レシプロエンジンの間欠燃焼と異なり)連続燃焼による連続回転機であるため、連続的なジェットガス生成用の原動機としても最適であった。もしジェットエンジンを間欠燃焼で作るとレシプロエンジンを原動機に使うまでもなくパルスジェットを実現できる。
上記ガスタービン型の航空用エンジンに加え、エアブリージングエンジン(作業流体および酸化剤として空気を吸入・排出する内燃機関の総称でレシプロエンジンも含む)の内、何らかの方法で空気を圧縮して燃料と混合し、燃焼後に高速の排気流を得て推力とする機関(ラムジェット、パルスジェット、モータージェット等)もジェットエンジンとして言及される。このうち圧縮機やタービンを用いず燃焼ガスをそのまま出力として利用するラムジェットとパルスジェットはガスタービンエンジンに対してダクトエンジンに分類されることもある。タービンの入り口温度が限界に達しているために、今より高効率、超高速ジェットエンジンを目指す手段として再び注目されている。
なお空気燃焼以外でジェット流を生み、その反動を利用する推進装置にはロケット(非エアブリージングエンジン)や水中翼船用のウォータージェットなどもあるが、それらはジェットエンジンとして言及されない場合が多い。発電用もしくは船舶や戦車の動力として航空用ガスタービンエンジンが転用される事例も多いが、それらは回転力を利用するだけなのでジェットエンジンとは呼ばれない(単にガスタービンもしくはターボシャフトと記載される)。
Posted at 2011/05/31 21:19:50 | |
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