この記事は、ある放射線作業従事者のつぶやき②について書いています。
放射線医学での
重要な考え方を伝えておきますね
ものすごく大切な概念で、私の医療現場でも放射線診断の場所で患者さんがたに読んでいただくパンフレットに書いてあるものです
このことを理解いただくと放射線の影響への考え方が明確になります
確定的影響 と 確率的影響
この両者は全く違います
現在の報道では状況説明の言葉の中で何とか混乱をしないように専門家が苦労しておりますが、
これは受け止める皆さんが理解しておかねばならないことです
説明の要求に必要なのは
説明されたことに関して理解するための知識の把握です
●確定的影響
放射線による人体器官への損傷などで、ある線量を超えて被曝すると障害が現れます。
この線量をしきい線量といい、対象となる臓器・器官によってそれぞれ異なっています。
しきい値以下の線量では、傷ついた細胞は自己補修機能により回復します。
発がんや、遺伝的影響以外の障害はすべて確定的影響に分類されます。
つまり、目の前で明らかに病的被害や死亡などの結果が現れる放射線被害をイメージしてください
○しきい線量について
放射線の影響が出現する最小の線量です。
ある集団が同様に被曝したとして、そのなかの1~5%の人々に異常がみられる線量、
あるいは、10%の人々に影響が認められる線量の3分の2の線量とされています。
(詳細調べたければネット検索「確定的影響」)
●確率的影響
がんや白血病の発症と、寿命などの遺伝的影響など、
統計科学的に明らかになってきた「確率的」な「影響」のことです
被曝線量が増えれば、それに比例して影響の発生率も上昇するのは想像されるとおりです。
さまざまなこれまでの放射線の事故などの調査で
おおむね100mSvを超える被曝を受けた時、有意な発がんリスクの上昇があるというのが
業界の専門家の間での一致した見解です。
先ほどの確定的影響との違い、特に今原発事故問題で把握、 注意しなければならないのは、
たとえば「がんになる」のではなく、「がんになる可能性が高まる」とかいう意味での影響
ということです
~になる・・・のが確定的、可能性は確率的ですね
当然、確定的影響を与える放射線の指標は確率的影響のそれよりも遙かに大きな値です。
(数値や詳しいデータもネット検索でつかめますので是非調べて把握してくてください)
今回のたとえば何キロまでは大丈夫とかいう話の場合
そのラインが確定的影響ラインと確率的影響ラインのどちらなのか、なども大切な見方です
私の感覚では今、原発事故の現場ではむしろ確定的影響下にならぬようにぎりぎりで
関係者が作業に当たっており、しかしすでに彼らは確率的影響にはさらされていると感じています。
私たちが生活している環境には、宇宙からふり注いでいる高エネルギーの粒子(宇宙線)や大地にある放射性核種など、 さまざまな放射線がすでに存在しています。
実は私たちは、毎日、少ない量ですが放射線を浴びながら生活しているのですね。
日本の平均ではこれまですでにニュースなどでも出ていますように年間1ミリシーベルトくらいは平均的に自然放射線を浴びています。世界の中では割と少ない地域だと思っています。
世界には凄い場所もあるもので、10mSv(ミリシーベルト)となる場所もあります。
また、高度が上がると宇宙からの放射線も多く受けますので 飛行機で東京―ニューヨーク間を往復すると0.2mSv程度を被ばくします。
さて、ここまでは言葉としての定義なので、意味は理解できても今度はじゃあ、やっぱり影響があるなら悪いぢゃんという言葉に対応できません。
こんな時、マスコミや価値観の基本を把握していない人ほど過激にヒステリックに感じて誘導されます。
そこで、じゃあ、人体に影響のある事って世の中にはいろいろあるけれど
それと放射線の被爆のリスクを比べてみようと言うことになります。
ここにおもしろいデータがあります
表.寿命の短縮からみたリスクの比較
原因 平均寿命より短くなる日数
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独身男性 3500日
独身女性 1600日
コーヒー 6日
酒 130日
たばこ 2250日
パイプタバコ 400日
X線検査による被曝 6日
自然放射線 8日
自動車事故 207日
肥満(20%) 900日
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(BERNARD.L.COHEN I-SING.LEE による)
独身であるということで平均寿命にこれだけ差があるということには驚きましたが
これをみると1mSvの意味がわかりますね。
今わかっているのは100mSvまではこの表の日数が変わってしまう科学的データがない
ということです
逆に100mSvを超えると明らかに何らかの遺伝的影響やガンの可能性が増えますので
たばこ程度にはなるという目安となるかもしれませんが、これは私見です
それでも、よい伴侶を見つけて暮らすことの方がいいというレベルですね。
追記 20110325
老婆心ですが補足します
被曝は蓄積合計ですので
mSvとかの値が1時間あたりとかいう表示には気をつけてくださいね
その場合、mSv/hとか表記されます
ですから100mSv/hのところに10時間いれば
1000mSv被曝したことになります
以下は、読むのは暇な人だけでおねがいします
ちょっと難しい話だけど、余談です
(ついてこれないはなしがおおい きけんれべる6いじょう めるとだうんじょうたい)
私がお世話になったある放射線分野の専門家なんですが・・・
私は十分に彼の専門性たち位置を知った上での情報交換をしたかったのですが・・
彼は「放射線物質の飛散と拡散」に関する原発事故のシナリオの機械的要因の十分な理解とその可能性のバリエーションが頭に入っていない可能性を感じました。
イギリスとロシアとドイツの専門家の意見の相違もそのような情報科学的価値のパラメータの差なんですね。
専門家のかれでさえこうなんです。
こういったバックボーンやプラットフォームの定義づけやコンセンサスをつくった上でないと議論はすれ違います。
一般の方やレベルの低いジャーナリストは「専門家の理解力の差」としてそれを受け止めようとしますが、実はそうではなく、意見の相違のほとんどは情報学としては「コントロールのとれていないバックボーンの差違」なんです
その人が持つ情報の差が意見の相違の最大の要因であって、プロセッシング、つまり考え方の相違ではないことが多いのです。
困ったことに、議論の対象が社会的に重要な問題である場合、そこに政治的思惑や立場からの社会的影響への配慮や経済的背景などのプライオリティがポリティカルに絡むため、ますます定義づけに関するコンセンサスを成立させるのが困難になります。
今回のような有事でさえ、すでにその背景が見え隠れしていますので正確な判断というのを求めるのははきわめて困難です。
有事に正確な対応というのを求めるのなら、その準備として平静なときにやはり情報の定義付けの整理をしっかりやっておくほかないのですね。
まさにレース当日に騒いでも結果は変わらない。日頃つちかった練習や準備でタイムやチーム力を確保しておくことと同じです。
私が学会等に望むのは「情報の収集」と「情報の整理」、さらに「情報の理解に必要な根拠の整理と定義付けの整理」なんです。
医療現場が本当にほしがっているのは医療に関する情報のガイドラインとか、コンセンサスなんです
でも、私からみると少なくとも今の医療の学会では「情報の収集と提供」が多すぎて多くが整理するときには雑音となっています。情報の整理や根拠の整理、定義付けの整理は間に合っていません。
そして医療でさえ、かなりの情報の価値の序列は社会での経済的効果の反応に任されつつあるのが現状です。つまり経済競争原理に身をゆだねてしまっているところが多くなってきているんです。
これはとても恐ろしいことなのですね。
だって、社会が求めているのはまさに「専門家の価値観」なんですから。ですからすでに社会の本質的な要求とそれに応えるべき専門分野との信頼関係に関する構造は根本的には未分化な状態なのですね。
私は以前、医療情報のメルトダウンは進んでいるという表現さえしたことがあるのです。
今回、発生場所となる原発の今後のシナリオに放射線被害に関する機械的物理的な確定的な科学的バックボーンの情報錯綜が見受けられます。
この点は専門家同士の意見交換に必要な定義付けでの相違です。
しかし、幸いなことに、絶対的距離はその差を埋めますので、対応は可能。
というのが私の判断。
つまり、怖ければそこからできるだけ離れておきなさい。が正しいのです。
そして被害を受けたからといって人のせいにしないことです。
すべては人災でもありますが、すべては天災なのです。
そう。神は自然に勝る科学力と理解力を人には与えなかった。つまりすべて天災に帰結するのです。
ただ一つ、想像力だけは自然を超えています。
そうなんです。人は夢見る動物だったのですね
すべては夢の中の出来事なのかなぁ・・・・
ちょっとつかれました
さいきんしぜんにとけこんでしまいたくなるがんぼうがでてきました。
いかんいかん
原発事故現場で戦う人たちの安全を祈ります