
修理記録の続きです。
納艇回漕時より右舷機にはオーバーヒートの兆候がありました。置かれていた平塚のマリーナから出て相模川を下る際、キングストンから何かを吸い込んだのが最初の原因でした。
その後、キングストンから海水経路を順々に清掃するも吸水がイマイチ。
そこで、海水ポンプのインペラー、加えてカムを交換しました。

更に奥にプレート(名称が分かりません)を追加で入れます。
プレートには経年で生じた摩耗を補う役割があるそうです。
ポンプのOHで、前よりは各段に改善されましたが、それでも未だイマイチ。状況をメカニックさんに相談すると、「ミキシングエルボの詰まりかな?」とのこと。そこで、ミキシングエルボを外してみると確かに詰まっていそうな雰囲気。原型こそ留めていますがかなりの惨状です。

試しに通水テストをしてみました。

流れるには流れますが、ポンプの水勢だと通水が足りなそう。
そこで、メカニックさんの工場に持ち込み、修正して貰いました。

詰まりを取り除き各部修正したミキシングエルボを元通り組み付けます。
再びエンジンを掛けようとすると今度はエンジンが掛かりません。
バッテリーは正常でセルも回っており、燃料もきちんと送られている様子。
一体どうしたのでしょう…、頭が真っ白です。
状況を整理してトラブルシュートします。電子制御されていないディーゼルエンジンですので、犯人は簡単に見つかりました。インジェクションポンプに付くエンジンストップソレノイドに電気が入りっぱなしいなっていました。

コネクターを外すとエンジンはすんなり始動。しかし、コネクターを入れると当然エンジンは止まってしまいます。何で電気が入りっぱなし?制御の故障など疑いますが、何か大切なことを見落としているような気が。
考えること数分…、FB側のキーがきちんとOFFになっていませんでした。超イージーミスです。
さて、ストップソレノイドの問題も解決されて再びエンジンを始動します。
すると今度はどこからか水が漏れています…。

ミッションクーラーからスタンチューブのシールへ水を送るホース、その取り出し部分のエルボが折れて水がドボドボ出ています。
そこで、今度はミッションクーラーを外し、再びメカニックさんの工場へ持ち込みます。
高価な部品なので、容易に交換はせずに、きちんと直して貰うことにしました。
先ずは、もげた取り出し口を修正して新たなフィティングを作成して貰います。

塗装を剥いて下地を整えて、

キレイに塗装してもらいました。

ミッションクーラーの水漏れも治まり、いよいよ下架して試運転です!
桟橋に舫って、アイドリングでしばし各部点検。
水漏れもビルジも無し、水温も吸水もOK。点検OKでいよいよ出航します。
徐々に回転を上げて行き、3,000回転で巡行すること10分。右舷機がまたまたオーバーヒート…。
左舷機は80℃でピッタリ収まりますが、右舷気は100℃を超えてしまう勢い。しかし回転を下げると温度は再び下がります。

再び回転を上げると水温は上がり、回転を下げると水温も下がります。
水廻りは一通り修理してあるのに一体何で・・・、目の前が暗くなります。(笑)
桟橋に戻り、エンジンを再び観察。思い当たる原因は何もありません。
エンジン本体か…、半ば諦めかけた時、ふと何か大切なことを見落としている気が。
「船」という先入観を一旦置いて考えることにします。
この症状、クルマに置き換えると明らかにクーラント不足の兆候、
まさか!と思いタンクを見ると、クーラントが入っていません。またしても凡ミスです…。
水を入れ加圧すると、冷却水がポタポタ。ウォーターポンプとヒートエクスチェンジャーを繋ぐ配管の付け根から漏っています。しかも、よく見れば漏れ部分の下に来るオルタネーターには明らかに錆の痕跡も。充分に点検観察すれば気付くことなのに…、またしても反省です。

問題の部分をバラしてみると、何のことはない、只の組み間違いでした。どうやら以前に修理した方が組み間違えたようです。組みなおして水漏れの治まりを確認、再び試運転に出ました。
30分くらい巡行しましたが、水温・水漏れ全てOK!ようやく遅い春を迎えることが出来ました。
これで完成!と言いたいところですが、今シーズンこの状態で乗って様子を見て、シーズンオフにエンジンを下してフルOHして貰おうかと考えています。
「シーズンオフにエンジンフルOH」 文字にすると20文字にも満たないこの行為、
果たして何人の諭吉様に旅立たれることでしょう。(笑)