2016年12月30日
カチ・・・カチ・・・(PCのマウスをクリックする音)
その男は所有している車に古さを感じていたので、代替車を探していた。
と言っても、年収もそう多くはないので中古車が対象だ。
現在、乗っている車は初代ウィッシュ。
子供が生まれてから買った車に愛着もひとしおだが、子供の成長に合わせてウィッシュでは手狭になってきたのだ。
車に詳しくない妻も珍しく「スライドドアの大きい車があるといいわね」と後押ししてくれるのは良いのだが、住宅ローンを抱えて予算に制約がある上、妻の「他所の家と比べられない車だとありがたいわ」という難しい条件を突きつけられて車選びに難渋していた。
そんな中、中古なら外車を選ぶのもアリかもと試しにネット検索してきたら、VW、シトロエン、プジョー、ルノーなど他所の家と比べられない車があるではないか。
外車屋は売りっぱなしで買ったら地獄が待っている・・・なんて変な噂もあるみたいなので、まずはお店選びから…とネット検索してみたら、ある店が目に止まった。
「外車ミニバン専門店 カフェ959」
自動車屋なのにカフェを名乗っているところが妙に気になって、お店のブログを拾い読みしていると、実に面白い。
何が面白いって、店主さんの分かりやすい作業報告を兼ねたブログもさることながら、店主とお客のコメントのやり取りが微笑ましい。
やれ、「出さ~ん」「教祖」「かんちゃん」「ラーメン」と何でもありの内容から、時折読者同士のコメントで炎上しかけるなど、何でもアリだ。
男 「一緒の仲間になれたら面白そうだな」
でも、こうも考えた。
男 「本当に販売している店なんだろうか?」「怖いオジサンが修理している店だったらどうしよう。」
色々と考えてみたものの、男は車選びの相談に乗ってほしいメールを送信してみることにした。
メール送信した翌日、さっそく店主から返信がきた。
マスター 「お近くにお住まいのようですので、お店に来ていただいて、まずは色々とお話をしませんか?」
その男はちょっぴり驚いた。
だって、「どんな車にしますか?」と食い気味なコメントを想像していたので、拍子抜けしたのだ。
男 「本当に面白い車屋かもしれない」
そう思った男は、早速都合の良い日時を記載したメールを返信、その日が来るのをちょっぴり楽しみにしているのであった。
<訪問当日>
愛車のウィッシュをガソリンスタンドで洗車してカフェ959に向かう。
カフェ959に近付くにつれて、ブログで良く見るザフトラとかいう車とよくすれ違うことに気づく。
「そろそろかな?」と思って、交差点を曲がるとザフトラとかいう車と軽自動車が並んだ先に工場が見えてきたではないか。
男 「ここがカフェ959か。」
空いているスペースに車を止めて工場に向かうと電話をしながらリフトに載った車を点検している店主が目に入った。
目が合うと軽くを会釈をして、電話を切る店主。
男 「あの~、メールで問い合わせした者ですが・・・。」
マスター 「こんにちは、店主のゴーダです。 お待ちしておりました。 上の部屋に行きましょうか。」
男は心の中で「良かった、見た感じはやさしそうな人だ」とホッとした。
男が、商談ルームでキョロキョロしていると戸惑っていると
マスター 「車屋さんらしくないでしょう? お客さんが居心地の良い空間を考えたら、こうなってしまいました。」
あらためて商談ルームを見渡してみると、なるほど居心地の良い空間である。
本棚に目をやると、中古車屋さんらしく車のカタログから○○○(自粛)まで、振り幅の大きさに思わず吹き出してしまいそうだ。
マスター 「では、家族構成やどんな使い方をしているか教えていただけませんか? よろしければ予算も。」
男は質問の回答を一通りした後、店主にこう言ったのだった。
男 「私、このお店が気に入りました。 予算内で探していただければ構いませんので、よろしく…。」
マスター 「ちょ、ちょっと待ってください。 そんなに焦らなくてもイイですよ。」 「うちで決めてくれるのは嬉しいですが、中古車ともなるとタイミングも重要なので。」
男 「タイミングと言いますと?」
マスター 「予算内で車を探してくるのは簡単です。でも、それではうちの店を選んでもらった意味がありません。」 「お客様に購入していただいた後も、安心して乗っていただける個体を見つけるには運も重要でして…。」
男 「ますます、気に入った。 じゃあ、それでお願い致します。」
マスター 「お客様せっかちなんですね。わかりました、頑張って良い車を探してまいります。」 「それじゃあ、インターネットでオークションへの出品車が見られるので、一緒に見てみませんか?」
男 「便利な世の中なんですね。」
インターネットの情報をディスプレイに映しながら、検索する二人。
"他所の家と比べらない"という条件がネックとなって、良さそうな車を見つけても
男 「これは、○○さん家が乗っているんですよね。」
と、なかなか首をタテに振らない。
やがて、ある車のところでカーソルが止まり、価格や状態を映像でチェックすると、充分予算内に収まりそうだ。
マスター 「じゃあ、オークション会場で実車を確認して程度が良かったら、入札してみますね。」
男 「よろしくお願い致します。」
数日後、男の携帯電話に吉報が入り、納車に向けた契約やらを進めていくことになった。
<納車当日>
納車当日、男は長きに渡って家族の一員であったウィッシュを洗車して労った。
1.8Lのエンジンはまだまだ元気、きっと次のオーナーの元でも活躍するであろう。
コンビニのある角を曲がり、お店に近づくとミニバンにしては珍しい赤系の色をまとった次の愛車をちょうどマスターが洗車を終えてふき取りをしている最中だった。
男 「こんにちは。 実車を見ると派手と言うか、注目を集めそうです。」
マスター 「こんにちは。 でも、良い色ですよ。 今ふき取ってしまいますから・・・。」
"他所の家と比べられない"という愛車の名は マツダ・ビアンテというそうだ。
なるほど、近所でもなかなか見ない車なので、他所の家と比較されることも少ないだろう。
これなら、妻の要求にもピッタリだ。
商談ルームで、書類の説明やらを終えて、実車を前にしてレクチャーを受ける。
男 「派手な見た目も、乗り込んでみると気になりませんね。」
マスター 「基本はプレマシーなので走りも悪くないですよ。」
男 「メーターの照明がきれいなので、妻や子供が喜びそうです。」
マスター 「家族の一員として大事にもらえると良いですね。」
男 「家族の一員か…そう言われると愛着もわきますね。」
ふと気づくと、時間が経つのも忘れて話し込むマスターとお客さん。
あまりの居心地の良さに時計の針が気づくと夕刻をさしていたほどだ。
男 「ブログの拝見していたお店そのままで驚きました。」「修理メインで販売をしてくれないかと不安でした(笑)」
マスター 「うちは誤解されやすいのですが、本業は自動車販売なんですよ!(笑)」
男 「あの~、ずっと聞こうと思っていたのですが『出さ~ん』とか『教祖』『支部長』って本当なんですか?」
マスター 「なぜ、それを・・・。」「実はですね・・・ゴニョゴニョ・・・」
男 「なんと! 実はウチも子供は娘なんですよ。」
マスター 「(ニタ~と笑いながら)もう会員ですね。」
カフェ959のファンがまた増えた、ある日の出来事でした。
カフェ959を訪れたことのない人は、話題豊富な店主と話をしながら、まずはオイル交換からお付き合いを初めてみませんか? もちろん、クルマの購入やメンテナンスの相談は大歓迎です。
マスターは話好きですから、もしかしたら業界の裏話が聞けるかもしれませんよ。
カフェ959は、C県のN市で絶賛営業中です。
Posted at 2016/12/31 00:41:19 | |
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