2024年06月09日
最近、知人のコンチェルトに試乗する機会を得ました。
当時の記憶がよみがえってきて、新車が出る度に各社のディーラーを訪問したり、友人がベルノ店で働いていたこともあって
特に90年代のホンダ車に触れる機会が多かった私。
そこで、試乗していない車種もあるのですが、「売れなくて残念だったな~」と思ったホンダ車を振り返りたいと思います。
1.コンチェルト
今は無きオースチンローバーとの提携が縁で開発された小型セダン&5ドア。
クリオ店扱いのアコードとシティの間を埋める車種として登場。
大衆車らしくベーシックなスタイルのシビック・セダン(EF型)に対して、コンチェルトは6ライトで構成された外観に内装は木目調のパネルを配して、
1.6Lのセダンでは珍しい革内装仕様も設定されたりと、英国調の雰囲気で良く言えば和製バンデンプラ…とも言えそうなクルマでした。
個人的には、当時乗っていたレオーネ(2代目)を洗練したかのスタイルもあって気になっていたクルマで、ディーラーに行った際にコンチェルトが
良いと思っている旨を伝えると、若いのに変わった人…と営業さんに顔を覚えてもらったことを思い出します。
世の中に小さな高級車を標榜したクルマは海外メーカーが作ると品のあるものになるのですが、国内メーカーが作ると高級”感”を履き違えて
野暮ったいというか、畳の部屋に場違いなソファー的な不思議なクルマ(シャルマンやローレルスピリットあたりが思い浮かびます)になることが
多い中でコンチェルトはローバーとの提携が功を奏したのか、高級”感”の解釈が日本車っぽくなく良い雰囲気を持っていました。
現在のホンダ車は米国人が好みそうなクルマが得意ですが、昔のホンダは欧州車的な雰囲気を持ったクルマが多かった印象があります。
エンジンは、1.5Lと1.6LのSOHC16バルブ。(ビッグマイナーチェンジ後にDOHC16バルブも登場していました)
当時、一番の売れ線は1.6Lデュアルキャブ搭載車だったと思います。
1.5Lの下位グレードにも装備を充実(当時はエアコンやパワーウィンドウがつくと特別だった)させた仕様(JEエクストラ)もありましたが、
木目調パネルの部分が黒樹脂だったので、ビジネスライクな感じはコンチェルトのイメージダウンを一身に背負っていた感もあり、メーカーが
思っているよりは売れていなかったと思います。
会社に同期入社した友人がこのJEエクストラを所有していましたが「親がシビックのセダンを買ったぞ」と言われて喜んでいたら、似て非なるクルマの
コンチェルトに対して「コンチェルトって知らない」「6ライトが嫌」と散々な評価を下されて、1回目の車検が来る前に違うクルマになってしまったことが
記憶に残っています。
走りは、落ち着いた見た目に反して、小排気量エンジンをぶん回して走らせるラテン系というか当時のホンダ車らしい元気ある走り。
パッと見はおじさんだけど実は硬派でカッコいい、という通好みなセダンに仕上がっていました。
当時試乗したのは1.6L(ZC型)のSOHCデュアルキャブエンジンでしたが、威勢のよい音が聞けると思いきやコンチェルトは遮音性が良いのか?
同じエンジンを積んでいたインテグラよりも静かに感じました。
一方、先日試乗する機会のあったインジェクションエンジンは他社のスポーツモデル並みの動力性能で高速走行も山坂道もそつなくこなすオールラウンダー。
どちらもホンダらしい活発な走りですがコンチェルトの性格に合っていたのは静粛性も兼ね備えたインジェクション仕様だと思いました。
1.5L(D型)は1.6Lと比べると非力でしたがクルマの性格を考えれば可もなく不可もない印象で、MTで乗ればちょうど良い感じかもしれません。
EF型のシビックの3ドア(通称グランドシビック)で1.5LのシングルキャブのMTを乗る機会がありましたが、MTだとクルマが変わったかのように走ったので
この時代のATは発展途上中だったのかもしれません。
蛇足ですが、後継のドマーニでは、同じ1.6Lのエンジンでも3000回転で最大トルクが発生するようにチューニングが見直されており、AT全盛の時代に
合わせたアップデートがされて乗りやすくなっていると想像します。
(丸目のインテグラで、ドマーニと同じ1.6LSOHCのデュアルキャブ仕様とインジェクション仕様(VTECなし)に乗りましたが、ATでの乗りやすさが向上していました。)
コンチェルトに話を戻しますが、乗り心地は当時のホンダにある小型セダン(シビック、コンチェルト、インテグラ)の中でコンチェルトはサスのストロークも
“ある方”なので良かったです。当時のホンダ車では高めのドラポジもあってシート座面が厚くなっていることも効いていたのかもしれません。
とは言っても、ホンダのダブルウィッシュボーン式サス(シビック系)はストロークが短く、荒れた路面でバタつくのは3車共通のことと思います。
当時、やたらとボンネットを低くするホンダ車が多い中で、いわゆる普通の形をしたセダン&5ドアのコンチェルトは 所謂よくできた “普通のクルマ” だったと
思うのですが地味なコンチェルトと取扱いのクリオ店は店舗数も少ないので販売が低迷していました。
イントラックと呼ばれる4WDや前述の革内装などアピールするものはありましたがクルマ自体が地味すぎたことに加えて、同じクリオ店扱いのアコード
(1.8Lがライバルになってしまう)も競合相手になってしまう環境もあっては、販売不振は如何ともしがたいようです。
そして、アコード・インスパイアのデビューがアコード共々トドメを刺してしまいます。
バブル期は価格の高いクルマが飛ぶように売れたのでコンチェルトは次第に選択肢から外されていったようです。
そんなコンチェルトですがホンダも何とか売ろうとして、2度目のマイナーチェンジではフロントマスクを大幅に変更。
良く言えばスポーティ、悪く言うと無国籍感が協調された面構えとなって1代限りで消滅となりました。
ホンダ車って、他メーカーにやられる前に、自社内での生き残りが大変な印象があります。
(カローラより売れたフィットもN-BOXにやられています)
小さくて高級感のあるクルマは一定の需要もあるでしょうし狙いどころは良かったと思います。
実際にシート生地も上質なものが使われていましたし控えめに配された木目調パネルも良かったです。
しかし、バブル景気の真っ只中でマークⅡ3兄弟がじゃんじゃん売れていた時代では、さりげなくも本物志向の
高級感をもったコンチェルトの良さは理解されず、分かりやすい高級感の方が好まれました。
当時、日本で一番売れていたカローラ(90系)の商談で「SEリミテッドのシート生地はマークⅡと同じ」という
セールストークが購入の決め手になったという話がありました。
(マークⅡのシート生地は埃がつきやすいワインレッドのモケットでスナックのソファーみたいでしたけど、これが良く売れました)
当時の日本人受けする高級感とコンチェルトが主張したかった高級感には乖離があったのだと思います。
では、時代が味方すればコンチェルトが売れたか? と言われるとこれが微妙で、日本人の好む小さな高級車的な市場はコロナや
ブルーバードの1.5~1.6Lのグレードが何気に強く、最近だとトヨタ・プレミオ/アリオン1.5Lエンジンでの上位グレードは年配の方に
好まれてコンスタントに売れていた印象があります。マーケットが特殊な日本ではクルマの持つブランドがものを言うのかもしれません。
ホンダの場合、1代限り…という車種も多く、ブランドを育てるのは下手という社風も関係しているのかもしれません。
(ドマーニ、オルティア、ストリーム、クロスロード、エリシオン、セイバーetc.)
対して、トヨタだとプレミオ/アリオンはコロナ/カリーナの後継車になるのですが、バブル期は、社長がクラウン、部長がマークⅡ、課長がコロナorカリーナ、
係長や既婚者がカローラ/スプリンター、新入社員~若手の独身者がスターレットやター・コル・カロⅡから始まりレビン・トレノ とトヨタ車のラインナップに
なぞらえたりしていました。 1.5Lでもコロナやカリーナのバッジは威光があった時代でした。
またまた話が横道に逸れましたが、クラスレスを感じさせるコンチェルトはローバーとの提携とバブル期だったからデビューできたのかもしれません。
「小さな高級車と言えばコンチェルト」というブランドを確立できていたら、と想像すると、惜しいような気がしてなりません。
インテグラを買わないでコンチェルトを買っておけば良かった…と地味に後悔しています。
2.アスコット(2代目)/ラファーガ
アスコット(2代目)/ラファーガは縦置きの直列5気筒エンジンを搭載した5ナンバーサイズのセダン。
スタイルはBMWの3シリーズ(E36)を丸っとさせた感じではありましたが、よく見れば精悍な顔つきで悪くはないスタイル。
FFならではの広い室内に大きなトランクも実用的と弱点が少ないセダンだったと記憶しています。
排気量は2Lと2.5Lで、横置きの直列4気筒を搭載したアコード(当時は2Lと1.8L)よりは上級なイメージ。
高性能なエンジンを搭載することで、他社(他車)との違いは “乗れば分かる” クルマとなっていました。
当時のホンダ車では最良と言って良いくらいのアンコが詰まったシートにパワーとトルクに優れた高性能なエンジンの組み合わせは
駆動方式がFFではあるものの外車にも引けを取らない出来だったと思います。
しかしながら、アスコット/ラファーガがデビューした頃はセダンよりもSUVやワゴンが人気になりつつある頃で知名度のないアスコット/ラファーガ
の販売は最初から苦戦していました。
特徴である5気筒エンジンとプロスマテックと呼ばれる制御を行うATとの組み合わせによる走りも申し分なく、高回転までよく回るエンジンと相まって、
VTECではなくてもホンダエンジンの楽しさを再認識させるものでした。
この5気筒エンジン、一説には一世を風靡したF1のV10エンジンが関係していると噂もありましたが真相は果たして?!
ボルボやアウディの5気筒エンジンと違って、高回転まで一気にビューンと回るのが印象的で、排気量は2Lと2.5Lの2種類。
2Lは回転数を上げてトルクとパワーを出し切る、高回転型でスポーツカーの様なフィーリング。
2.5Lはトルクが太く、低い回転数でも余裕のある走りができる一方で、一度アクセルを踏み込めば、ガツン! とくるパワーが刺激的でした。
5ナンバー、2Lクラスのセダンと言えば、アコードやカムリ/ビスタの専売特許みたいなカテゴリーですが、アスコット/ラファーガもその牙城に喰い込める実力は
あったと思います。 がしかし、トヨタや日産と比較して知名度&販売力の差は如何ともしがたく、せっかくの5気筒エンジンも販売訴求力は弱い(6気筒より
下に見られがち…)ことから、通好みのセダンで終わってしまった感は否めません。
モデル末期に設定されたCSグレードはリアスポイラーが標準装備されたスポーティなグレードで初期から設定されていたら地味なアスコット/ラファーガのイメージも
変わっていたかもしれません。
アスコット/ラファーガは、5気筒エンジンと共に消える運命だったのかもしれませんが、縦置きエンジンを搭載することで実現が容易な4WDが発売されていたら?
5気筒エンジンがDOHC&VTEC化されたら? と色々と想像をしたくなるクルマでした。
3.アスコットイノーバ
欧州版のアコードをサッシュレスドアに仕立て直した5ドア風味のシックスライトが美しいセダン。
顔つきは4代目プレリュードにも似ていて、2LのSOHCとDOHCに加えて、2.3LのDOHCも設定されていました。
シビックを販売するプリモ店扱いでシビックからステップアップするユーザーに受けると思いきや、RV車が流行してきた時代背景もあって販売は低迷。
「出番が遅すぎ」な感は否めず、本当に残念なクルマでした。
ベースはアコードなので、居住性、トランクの積載性は充分でしたし、走行性能もベースグレードでも2LのSOHCインジェクション仕様だったので、
速くも遅くもない充分な性能は確保されていたと想像します。(試乗車がなく運転することは叶わず)
内装もバブル期の名残が感じられて、グルーブボックス表面にクロスが貼られていたり(S13シルビアっぽかった)と気合いを感じられましたが、何故だか
ガッカリした記憶もあり、よくよく考えているとホンダらしくない頑張り方に違和感を感じたのかもしれません。
ホンダがトヨタや日産っぽい雰囲気を真似るとダサくなってしまう印象があり、アスコットイノーバもどこか大味な感は否めませんでした。
5ドアっぽいシルエットも不人気だったのかな? あまり話題に上がることもなくひっそりと消えてしまった印象しかありません。
サッシュレスドアに仕立て直さず、欧州仕様のままで販売時期が早まっていれば…
プリモ店だけでなくベルノ店でも扱っていれば…
アスコットというブランドを何とかしたかったのかもしれませんが、販売戦略も含めて、残念なクルマだったと思います。
4.Z(2代目)
1999年に軽自動車が新規格になった際にデビューしたZ(2代目)。
初代は金魚鉢と呼ばれたリアデザインとジャンボーグ9に変身したことで有名? でしたが、2代目のZもなかなかの曲者でした。
2代目のZは軽1BOXのアクティがベースでミッドシップにエンジンを積んでいます。
物は言いようで、アクティがベースであることを “UM-4” (ホンダお得意の表現)と呼びかえて、ZZ-TOPの曲にのって颯爽と登場しました。
ボディは3ドアのみでしたが、2WDと4WD、ノンターボとターボとバリエーションは豊かで、当時は珍しい15インチホイールを履いたクロスオーバー的な
スタイルが特徴で良く言えば軽らしくないクルマだったと思います。(こちらも試乗車がなく運転することは叶わず)
このZ、なかなかの意欲作でリッターカーであるロゴよりもお金の掛かっているフロントシートやナビ(オーディオ)の搭載位置が
現代的なインパネ上部に配されているなど、駆動方式を除けば、現在でも通用する仕立てだったと記憶しています。
スタイルはフィアット・パンダ(初代)に似て非なるカクカクした形状でミッドシップエンジンであることからグリルレスな顔つきも
特徴的でした。ボンネット内にスペアタイアと荷物が入れられる箱が入っていて、リアのラゲッジと合わせて収納に困らないようで
グローブボックスはない…というところも面白かったです。
リアシートはエンジンの真上にあったので座面が薄く実用的に見えるがそうでもない…という、ある意味ホンダらしさ全開ではありますが
2by2(軽だから4人乗りなんだけど)と考えればアリです。
ホンダがZで何をしたかったのかは分かりませんが(所有して楽しいクルマであることは理解できます)、特徴的な駆動方式が故に面白いけど
使い方がイメージできない中途半端な感が最後まで拭えず。素質はあるクルマだったと思うのでとても残念に思いました。
話は逸れますが、個人の嗜好ではありますが当時のホンダ車デザインはベースグレードが大変好ましい印象があります。
当時の流行りとはいえ、やたらとエアロパーツを付けることで迷子になっちゃった感はあるような気がします。
個人的には、”見た目だけは” 和製フィアット・パンダになりそこねた…残念なクルマ、と勝手に思っています。
昔のホンダ車はマーケットを開拓して販売が好調になると、模倣したクルマにマーケットを奪われる傾向がありました。(WISH、シエンタなど)
ホンダは小型車づくりが上手なメーカーなので、イタフラ車的にシンプルな ”日本の小型車” を作ったら良いクルマを作れたのではないかと思うのです。
軽自動車の2代目ライフもワゴンRやムーブとは違う立ち位置で一定の成功をしましたし、初代トゥデイにインスパイアされたルノー・トゥインゴ(初代)
を見るとホンダって何だか惜しいな…と思うのです。
駆動方式が普通のFFになってしまったとしても、クロスオーバーのベーシックカーというコンセプトは、現在のハスラーみたいになる可能性があった訳で
N-BOXの成功を見ると、ホンダがマーケットを開拓した世界を見てみたかった! と思うことがあります。
不真面目だけど真面目な良いクルマというイメージを持っています。
5.That’s(ザッツ)
660㏄になってからのライフをベースに角ばったボディを載せたライフの兄弟車
バンパーのカラーバリエーションを楽しんだり、ターボや4WDの設定もあり、と軽自動車にしては豊富なバリエーションがあったと記憶しています。
惜しむらくはATに4速ATがなかったこと。ワゴンRやムーブ等が4速ATを装備していく中でホンダの4速AT化は遅れていましたので、
スペック大好きな日本人にとっては魅力ダウン! 3速ATも乗ると息の長い加速も相まって楽しいものですが燃費や騒音の面では不利も否めません。
第1印象は軽自動車版のトヨタbB。
内装も特徴的でステアリングの前には大きな1眼メーターのみでbBみたい。
S-MXが小さいbBにやられたので、今度は軽でやりかえそうとしたか? と勘ぐってしまいたくなりました。
(S-MX→bB→That’sと並べたらマトリョーシカみたい)
デスクタイプのインパネは “無印良品”的な機能的なデザインで、ホンダらしいシンプルさと若々しさに満ちていました。
シートは生地が特徴的でテカテカ光るジャージ地で滑りそうに見えるけど座ると身体にしっくりくる感じが何とも不思議でしたが座り心地はなかなかのものでした。
しかし、数多のワゴンRタイプの軽自動車が乱立する中でThat’sは早々に埋もれてしまい、気づけば「こんなのあったっけ?」状態に。
モデル末期に設定されたベースグレードに装備を追加したお買い得仕様は価格も安かったのでソコソコ売れていた様ですが、その頃にはライフも
モデルチェンジを果たして4速ATを装備していたりゼストもデビューしていたので、生まれた時期が悪いのか? 何とも運が無いモデルでした。
That’sもモデル末期に展示車を見ただけで試乗する機会は無かったのですが、営業だった友人曰く「NAだけど良く走るし3速ATも悪くないね」と
なかなかのコメント。お買い得仕様は100万円を切る価格設定も相まって、セカンドカーにちょうどいいクルマだったそうです。
で、何が残念だったかというと、That’sのデザインそのままで普通車のサイズでデビューして1.3L~1.5Lのエンジンを積んでいたらどうだったのかな~と。
bBやキューブあたりの対抗馬になれたのではないかと。
デザインは今見てもなかなかのものだと思うのですが…。
以上、曖昧な記憶もまじえながらではありますが、勝手に綴ってみました。
Posted at 2024/06/09 21:08:48 | |
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