
私が好き勝手に選んだ
2020年の新車 BEST5
(対象車は、2019年11月1日から2020年10月31日までに発表または発売された乗用車。日本カー・オブ・ザ・イヤーの流儀に則る事とする。)
1. マツダ MX-30

やっと日本車でこんなクルマが出たか!と感激した一台。今年のNo.1どころか、自分の中では、ここ数年の国産車でトップレベルにお気に入りのクルマだ。

日本車で本物のプレミアムコンパクトの誕生を待ちわびていたのだが、やっと現れたかもな〜と思っている。
一見地味だが、見れば見るほど、知れば知るほど、魅力にどんどんハマっていく奥ゆかしきクルマ…それがMX-30なのだ。
まずは開発思想に惹かれた。「自然体」「自分らしく生きる」「気持ちが整う」とか、やたらと精神論が多いのが面白い。今の私の気分に、とても合っている。

立ち気味のAピラーに水平なボンネットなど、自動車の普遍的なカタチを大切にしているのもお気に入り。
見れば見るほど愛嬌が出てくる。たぶん恋に近い。
スポーティだとか立派に見えるとか、そういった価値観から一線を引いているところに深く共感を覚える。
わかりやすいものじゃないからこそ素敵だ。

じつは自動車関係のツテで、“マツダ社内の一部でベリーサと呼ばれている新型車がある”といった噂を数年前から小耳に挟んでいたけど、このMX-30の事だったのかなぁ…と思う。
マツダの主流と少し違った癒し系のスタイルに、かつてのベリーサと近いものを感じるのだ。
他のマツダ車と毛色の違うデザインで、あまり周りと被らないというのも、所有する上で満足度を高めてくれそう。

MX-30は一般層には魅力が伝わりづらいし、売れにくいだろう。
しかし、失敗が許されず、“遊び”のある車、敢えて“ハズした”車が少なくなってしまった今、このような面白い車種を発売する姿勢を高く評価したい。多様性が豊かさを生むのだ。
ニッチかもしれないが、マツダブランドがこれから目指していく方向性を考えると、MX-30は必要なモデルだ。

今後、MX-30はマツダブランドにおける電動化戦略のトップバッターとして進化を続けていくと思われる。
それこそかつてのベリーサや、国外では同じMXシリーズに属するロードスターのような、ロングセラーモデルになりそう。
でも大丈夫。このデザインはきっと色褪せないだろう。
2. シトロエン ベルランゴ

日本導入を熱望していたクルマがついに登場。
この手のユーロバンといえばルノー・カングーがいち早く日本に参入し、大人気となっている。長らく日本ではカングーの一択だったが、シトロエン ・ベルランゴとプジョー・リフター、まさか2台揃って進出してくるなんて、夢のようだ。
個人的には、ベルランゴのヘンテコリンで明るい雰囲気に猛烈に惹かれる。
C3そっくりのフロントフェイスは、最初は若干の違和感があったものの、今では惚れ惚れするほど気に入っている。

インテリアのデザインセンスも、流石フランス車だな〜と唸ってしまう。
商用車ベースなので機能性は折り紙付き。それに加えて、乗用車として満足出来る演出がしっかりと施されている。

カングーより価格は高いものの、こちらはディーゼルにアイシン製8速ATというパワートレインが魅力的。快適/安全装備も充実していて、モデル末期のカングーとはやはり世代が違う感じがする。
とはいえ、カングーにはカングーならではの朴訥とした魅力があるんだけどね。
次期カングーはらしさが薄れちゃったし、ベルランゴ/リフターに流れるユーザーも居るかもしれない。

初回限定モデルはあっという間に完売してしまったという。
カングーのように、日本におけるシトロエンの販売を牽引するヒットモデルに育つことを期待したい。そうなる資質は充分に備わっていると見た。
3. ホンダ フィット

親しみやすく優しいデザインに生まれ変わったフィットを、私はいたく気に入っている。
まず間口の広いベースモデルを作り、そこから派生型として、様々な個性を持ったタイプを用意し、幅広いユーザーにアピールする。
これぞベーシックカーの在るべき姿!と思った。

立派に見えるとか、スポーティで速そうだとか、そういう価値観から脱し、人間の気持ち良さにフォーカスしたという“癒し系”の開発思想に私は深く共感する。

デザインはすっきり。内外装は全体的に優しくて、柔らかい印象。
視界が良く、開放的で清潔感のあるインテリアは、触れるほどにデザインの説得力が増す。

中でも、極細のAピラーは素晴らしい。視界の良さは日々の安心感に直結する。こういう地味な部分にこだわった優しい設計こそ、ベーシックカーの在るべき姿だと思う。

愛嬌のあるフロントマスクも結構気に入っている。柴犬っぽい人懐っこさがある。
怖い顔、攻撃的な顔のクルマはもうお腹いっぱいだ。
ホンダは特に顕著だが、最近は少しずつシンプル・クリーンな、引き算のデザインがトレンドになってきて、ホッとしている。
もっとこういう優しいクルマが増えてほしい。
4. Honda e

このルックスはズルい。秀逸なスタイリングだけでも買う価値のある一台。
愛くるしいエクステリア、未来感と安らぎのテイストが共存したインテリア。
シンプルで、それでいて鮮烈なインパクトのあるデザインは何とも魅力的だ。

このクルマの存在意義はEVであることなのだが、あまりにもキュートなので、EVじゃなくてもいいから欲しくなる。
300km以下という航続距離は大いに不満なので、エンジンを載せた仕様が欲しい。絶対に出ないだろうけど。

そういえば後輪駆動なのも、クルマ好きとしてはグッと来てしまう。モーターの強大なトルクと鼻先の軽さで、下手なスポーツカーより楽しめそう。

航続距離以外の大きな弱点は、リアシートとラゲッジがかなり狭いこと。要するに実用車のパッケージでは全くない。スペシャリティカー的だ。
ホンダらしいかと問われると、MM思想がまるで感じられないので、多分きっと本流ではない。

それにしても、やっぱり魅力的なルックスなのだ。あまりにも愛くるしい。これはズルい。
5. トヨタ ヤリスクロス

トヨタの会心の力作「ヤリス」シリーズ。その中で私が一番気に入ったのはSUVモデルの「ヤリスクロス」だ。

ヤリスクロスはデザインが上手い。ハッチバックのヤリスと差別化しつつ、しっかりヤリスファミリーに見えるし、RAV4やC-HRといった一連のトヨタSUV群の仲間としてもちゃんと認識出来る。
派手なキャラクターラインや小手先の加飾などに頼らず、面の構成による塊としての存在感で勝負している。そこら辺に若干フランス車っぽさを感じる。最近のトヨタ車にしてはスマートな印象だ。

街で見掛けると、ちょっとハッとするほど格好いい。ルノーとか、テスラとか、その辺に近い雰囲気を纏って見える。
宇宙人っぽい顔付きは好みが別れそうだが、吊り目に大きなグリルの怖い顔ではないのがいい。シンプルで上品だ。
リアフェンダーの張り出しっぷりもかなりの迫力だ。存在感があり、見所の多いスタイリングだと思う。

荷室の使い勝手のよさも高く評価したい。見た目重視かと思いきや、しっかり広い。左右2分割で高さを変えられるデッキボードや、4:2:4で分割格納出来るリアシートが特徴。

個人的に、ヤリスクロスには何となく、ファンカーゴの匂いを感じる。ヤリスをベースに流行のカテゴリに参入する派生モデルで、ファミリーユースにも対応する。専用設計ながら、ハッチバックと共通性のあるヨーロピアンスタイルを纏う。
パッケージ的にはistに近いが、商品ラインナップにおけるポジショニングとデザインテイストは、かつてのファンカーゴに近いと感じている。
ちょっと話が逸れたが、ハッチバックのヤリスより実用性が高く、デザインもシンプルに見えるヤリスクロス。なかなか魅力的だと思うのだ。
以上。
というわけで、
2020年の新車 BEST5 は
1. マツダ MX-30
2. シトロエン ベルランゴ
3. ホンダ フィット
4. ホンダ e
5. トヨタ ヤリスクロス
と相成りました。