
2016年に発売された新型車の中から、個人的に気に入ったクルマのベスト3を挙げて、思う存分に語り散らかしたいと思います。
① スズキ イグニス

イグニスは、“SUV風のコンパクトカー”という独特のキャラクターが与えられている。
まずは、このオリジナリティ溢れるデザインが素晴らしい。一目見てインパクトのあるエクステリアは、スズキの過去の名車のエッセンスが随所に散りばめられたアイコニックなもので、日本車離れしたハイセンスさを醸し出す。
印象的なヘッドライト周りや、スリットの入ったCピラーのデザインなど、とにかく見所が多いスタイリングだ。それでいて煩雑にはならず、まとまっている。

流行りのSUV要素をうまく採り入れつつ、老若男女が乗れるデザインとなっているのだ。見所は凝ったディテールだけではない。全体のフォルムもどっしりとした塊感のある造型となっており、欧州車的な佇まいがある。
秀逸なのはインテリアも同様で、こだわりを感じる楽しげなデザインだ。中でも目を引くのは、エアコンの操作パネル周辺の凝った造型。ケチなスズキにしては珍しく(?)他モデルとの共用品ではなく専用品が奢られ、特徴的なデザインに仕上がっている。実際の操作感覚も良好だ。

他にも、Cピラーの造型を反復したようなセンターコンソール、タブレットのようなモニター、色違いのドアハンドル等々、あちこちにデザイン性の高いパーツが効果的に配置されている。
走らせてみると、優等生的な印象だ。1.2L自然吸気エンジンとCVTのみの組み合わせなので何ら刺激はないが、嫌な部分もない。不快な振動は適度に抑えられ、しっかり感があり、ステアフィールは重厚感すら感じさせる。一方で、ボディの軽さを活かした軽快なフットワークも魅力。燃費もかなりいい。
見た目は遊びゴコロたっぷりだが、パッケージングは至極真っ当な実用コンパクトカーである。運転しやすく、居住性もいい。
ラゲッジはこのサイズなりで決して広くはないが、二段式になっており使い勝手は優れている。廉価グレードを除きリアシートはスライド可能で荷室長を調整できるのも嬉しい。

ちなみに、最新モデルなら付いていてほしい予防安全装備は、オプションではあるが全グレードで選択可能だ。ただし、5人乗りなのにリアシート中央にヘッドレストと三点式シートベルトが未だに装着されていないのは残念。
軽量化の弊害なのか、ドアを閉めると「パフッ」という頼りない感じで、半ドアになりやすいのも気になった。
イグニスが属するAセグメントのコンパクトカー・クラスの日本車は、実用に徹した面白味に欠けるモデルがほとんどだ。ハイセンスで楽しいクルマを求めようとすると、これまでは欧州車を選ぶしかなかった。しかし今はイグニスがある。このクルマのセンスは欧州車に負けていないと思える。
現状でも魅力的だが、もう少し内外装のカラーリングに、例えばアースカラーなどの選択肢が増えたら嬉しい。もうちょっと元気に走れるスポーツモデルがあったらもっと面白い。絶対出ないだろうがカブリオレなんかも似合いそう。そんな楽しい想像も膨らむぐらいチャーミングなクルマである。
イグニスは、遊びゴコロ溢れるデザインと優れた使い勝手を見事に両立しており、日本車のコンパクトカーの中でキラリと光る存在だと思う。
② ルノー トゥインゴ

とにかく愛嬌のあるクルマだ。フランス車ならではの陽気なムードが漂い、思わず「乗ってみたい!」と思わせる魅力に溢れている。
フランス車自体がマイノリティーな日本にあって、ルノーのクルマは完全に趣味の乗り物であり嗜好品の世界だが、本国での位置付けはあくまで実用品。トゥインゴはエントリーモデルであり下駄車だ。無理に立派に見せようと着飾ったりはせず、あくまでシンプルでありながら、貧乏臭さを感じさせない秀逸なデザインに仕上げられている。
実用品をここまで楽しげで華やかな雰囲気に染め上げてしまうところが何とも素敵で、好感が持てる。エクステリアもインテリアもチープではあるが、造型やカラーリングのセンスでカバーしているあたりは、さすがフランス車と思わせる。カングーもそうだが、この雰囲気の良さはルノー車の魅力として明確に光っている。
今回のトゥインゴはスマートと兄弟車になったため、歴代初のRRレイアウトを採用することとなったが、これもまた陽気なトゥインゴのキャラクターにマッチしており、個性として好意的に受け止められる。軽自動車以上に小回りが利くのもRRレイアウトの恩恵だ。
ハッキリ言って欠点はいっぱいあるクルマだ。触れてみれば粗は見つかる。正直、クルマに対して全体の完成度や使い勝手などを重視するのであれば、トゥインゴは適さない。道具としての性能は日本の軽自動車の方がよっぽど優れているかもしれない。
しかし、である。欠点を補って余りあるほどの魅力がトゥインゴにはあるのだ。一筋縄では語れないのがクルマの面白いところ。何より、この陽気なキャラクターでいろいろ許せてしまうのがニクい。細かい事を言う気にならなくなってしまうのだ。
最新モデルとしては装備設定などにかなり不満もあるが、ルノー・ジャポンの売上規模であまり贅沢を言うのは忍びないと思う部分も正直ある。
とはいえ、低価格でMT車の設定があり、豊富なボディカラーも用意されており、キャンバストップ仕様も選べるなど、トゥインゴの日本仕様はなかなか魅力的なラインナップが揃えられた。今後もスポーツモデルや、よりファッショナブルな限定車などの日本導入が期待できる。
ここ数年のルノー・ジャポンは、日本の輸入車市場がニッチであることを理解し、マニアに刺さる商品を積極的にラインナップし楽しませようとしてくれているのが嬉しい。
③ スバル インプレッサ

いいクルマ感がある。抽象的な表現だが、それが新型インプレッサの魅力だ。
質感、走行性能、安全性能は、この価格帯ではピカイチ。インプレッサが属するCセグメントで絶対王者といわれるVWゴルフにも、大きく劣ってはいないと感じる。国産車で競合車種であり同じく昨年登場したマツダ・アクセラの1.5Lディーゼルに乗った時も感じたが、国産のこのクラスはここ数年で本当に成長した。作りもサイズも立派になったなぁとしみじみ思う。
中でもインプレッサは、全体のクオリティーでも、性能面でも、装備の充実ぶりでもクラスを超えたバリューを見せており、コストパフォーマンスが高い。軒並み値上がり続ける他車種のプライスボードと見比べると割安感がある。

「スバル全体のフルモデルチェンジ」と謳うほど気合いの入った新プラットフォームを初採用し、中身は飛躍的な進化を遂げたインプレッサだが、見た目の印象はあまり変わらない。
内外装のデザインにはもう少し新しさが欲しいと感じる。先代でスバル全体のデザインの方向性が定まった感があり、今回もその路線を踏襲している。無難だ。とはいえ、下品なほど押し出しの強いスタイリングのクルマが増えた中にあって、インプレッサの落ち着いた雰囲気は安心感があり、この方向性には賛成だ。
10年前のスバルのように変に奇をてらって失敗するよりは余程いいし、デザイン思想に迷いが無くなったのはいいが、スタイリングはまだまだ垢抜けていない。以前に比べると面質は綺麗になったが、まだ野暮ったさが残る。

一方のインテリアは質感、見せ方がかなり上手くなった印象で、ぱっと見は上級モデルのレガシィより立派に見えるほど。だがインターフェースやカラーリングに新しいアプローチが欲しいところだ。
新型インプレッサ最大の弱点は燃費。これはスバル車全体に言えるが、前時代的な数値だ。ハイブリッドのラインナップが欲しい。
進化したアイサイトや歩行者エアバッグが全車に標準装備されるなど、安全性の高さを前面に打ち出す一方で、後方への安全支援装備やハイビームアシストが最上級グレードでもオプション設定なのは残念だ。あれだけ安全をアピールしておいてこれはいただけない。チグハグな印象を受ける。

売れているのは大半がハッチバックの「インプレッサ・スポーツ」である。セダンの「インプレッサG4」は見かける機会が圧倒的に少ないが、日本でも扱いやすいサイズで落ち着いたデザインの上質なセダンというのは、もはや貴重な存在。もっと売れてもいいと思う。
新型XVも、インプレッサの出来の良さに華やかさが加味されてかなり魅力的だ。
インプレッサはかつてはマニア向けのイメージがあったが、今では、良質な実用乗用車として客層を大きく広げることに成功。フォレスターなども同様だが、スバル・ブランドはここ数年でうまく脱皮した。その象徴がインプレッサである。
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以上です。
ハスラー、アルトに続いて、まさかの3年連続でスズキのクルマを選んでしまいました。とくにスズキオタクってわけでもないのに、自分でもびっくりです。
最後までご覧いただきありがとうございました。