
カトゆー家断絶で見た
このニュースと写真を、私はずいぶん前に小室直樹の
『日本国民に告ぐ』で知ったものでした。
該当部分を引用しましょう。
(引用開始)
国益ということで言えば、尖閣列島領有問題のマスコミ報道も重大である。
尖閣列島は、すでに明治時代以前から沖縄群島の一部であることは台湾の公文書にも明記されている。さらに、中華民国九年(大正九年)、中国(中華民国)の長崎領事は中国漁民救助に対する感謝状を沖縄県石垣島の村民に送っている(215ページ参照)。
これは大正九年の冬、中国の漁民三一人が遭難し、尖閣列島の魚釣島に漂着したとき、石垣島の住民が看病したことに対するもので、その感謝状には明確に「八重山郡尖閣列島」と記されている。この「八重山郡尖閣列島」と明記されているのがポイント。だが、この事実を報道したのは産経新聞のみであった。
ちなみに、戦後、台湾政府(中華民国)は、沖縄群島まで中国領だと主張したので、呆れたりオロオロしたりする人もいるようだが、この間の事情は次のとおり。
日清戦争より前には、沖縄は日本領か独立した国家かはっきりしなかった。というのは、沖縄も中国人も日本人も、ハッキリした近代的領土概念がなかったからである。
日清戦争の講和会議で結ばれた「下関条約」(馬関条約)で、大清(中国)は、「沖縄は大日本(帝国)の領土である」ことを公式に認めたのであった。戦後、中華民国は、「馬関条約」(下関条約)は、無効である宣言し、この宣言を中華人民共和国(中共)も継承した。下関条約が無効であるとすれば、つまり中国の主張では、沖縄は中国領となる。
しかし「沖縄全体」ではなく、尖閣列島だけを中国領だという主張は、昭和四六年より前にはなかったのである。
こうした歴史的事実に加え、戦後の日米安保条約でも、沖縄返還に際し、大東諸島と尖閣列島も沖縄と一体のものとして、日米安保条約の適用対象となっている。
このことから当然、尖閣列島に中国(中華民国でも中華人民共和国でも香港でも)が軍事力を行使すれば、アメリカも軍事力を行使して、これを守る義務が生じる。
読者諸君、右のこと一つでも知っていますか。これほどまで重大なことを一つも報じないのが日本の大マスコミなのですぞ。
(引用終了)
―この本が出たのは
1996年なので、当時まだ2chが無かった時代。(それどころかまだ香港も返還されていない)
博士の慧眼にはいつも驚かされます。
目次を見れば大体分かるとおり、あの頃から起こった歴史論争(≒従軍慰安婦論争)の嚆矢ともいうべき本ですが、これから知ったことはかなり多いです。
(ところで、最近よしりんが「エトス」とか「予定説」とか言ってるのは明らかに小室博士の影響だな。うん)
長いので箇条書きにすると、
・博士が大学の寮で会った、お化けが怖いマルキスト
・山本七平のいう、「空気」(ニューマ)
・日本の法律が実生活で役に立たないのは、それが治外法権の制度を撤廃するための「政治上の手段」(川島武宜)だったから。(要は欧米の単純コピー)
・物神化の意味でのフェティシズム
・マルクスのいう「疎外」
・ヴェーバーの伝統主義
・日清、日露戦争の勝利まで、天皇は現人神と認められなかった。「たれが統領に王冠を与えたのじゃ? 戦場の勝利じゃ!」(ヴォルテール)
・旧約聖書と日本書紀にみる予定説(ユダヤは条件付き、日本は条件無しで約束の地を得た)
・明治維新のイデオロギーとなった崎門の学
・毎日新聞にあった「元帥! 元帥! 今年も実りは豊かで(ry)」な記事
・GHQによるウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム
・大東亜戦争に感謝するアジアの声
・
ヒトラー・フロイトの法則(カリスマの保持者は、カリスマを手放してはならない)
・三島由紀夫の「などてすめろぎは人間となりたまいし」
・西部邁が左翼運動家として「安保条約に反対した時、実は安保条約など全然読んでなかった」と告白したこと
・学生運動の目的は暴れることだけにあった
とまぁ、こんな具合。
のちにゴー宣にも出たネタがありますね。
(繰り返しますが、この本が出たのは1996年のこと)
特にも頭に残っているのは、
数学の教科書や問題集に載っている問題はすべて解があって、しかも解ける方程式であるため、学生がみな問題には「正解」があり、それが一つしかないと信じきっていることに関するくだり。(現実には解が無い方程式のほうが多く、解があっても解けない方程式や近似値しか求められない方程式もある。詳しくはアーベルやガロアを参照)
(引用開始)
実生活で直面する問題に「正解」があるとはかぎらない。むしろほとんどの、場合「正解」は用意されていないと言ってよい。仮にあったとしても、「正解」が一つであるという保証はない。正解が一つであったとしても、求める方法がないために、近似値にしか近づけない場合もある。まさき「一寸先は闇」なのだ。その闇に果敢に立ち向かっていくための土台を築くことが本来の教育の目的なのである。
ところが、受験勉強というプロセスの中で、問題にはかならず一つの正解があるという刷込みを受ければどうなるか。政界が用意されていない問題に直面した時、右往左往するばかりで、どう対処してよいか分からなくなるではないか。
日本人がすぐに思考停止するのはこのためである。けっして自分の頭で考えようとしない。右往左往しながら、誰かが正解を与えてくれるのを待ち望み、教えられたことだけを従順に信じこむのである。
(引用終了)
こと歴史認識問題、外交問題ですぐに思考停止する、政治家、官僚、マスコミ、学者の多さには私も含め辟易している方も多いでしょうが、その原因をきちん認識できるようになったのは割と最近でした。
(2chですぐ「キボン」とかいう人間も、ある意味思考停止していると思う。左翼よりははるかにマシとはいえ)
Posted at 2005/09/07 23:04:43 | |
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