2011年10月17日
同乗走行って、難しい3
同乗が難しいもうひとつは、フィジカル面の個人差。
同乗した人とされた人の体を動かす精度差やセンサーの感度差を考慮しなければならない。
極論すれば、普通の人間がどれだけ走る練習してもカール・ルイスやウサイン・ボルトにはなれない。
ただ、モータースポーツは通常のスポーツとは違い、結果への寄与率は道具(車)の占める割合が多く、タイムが出るメカニズムも複雑なため、フィジカル面の差がそのまま結果には現れる訳ではなく、希望は十分にある。
例えば、ブレーキのコントロール能力が高く、限界のブレーキが出来る人の真似を、能力の低い人がそのまま表面上の真似をすれば、ロックをしたり逆に足りなかったりでマネをする前より余計にタイムが落ちてしまう可能性もある。
また、上級者がすべての面で優れているわけではない。
ドライビング能力を細かく分解していくと、フィジカル面では、腕力や体力差に始まり、ステアリングやペダル類の操作の繊細さ、速度感覚、タイヤのグリップを掴む力、ロールやピッチングのセンシング、前後左右上下Gのセンシング、動体視力で路面の状況を瞬時に掴む力、等々たくさんある。
つまり、ステアリングを無段階に動かせるか段階的か、アクセルペダルは8段階で踏めるのか30段階で踏めるのか、どんな状況でもステアリングを回せる腕力があるか、といった事だ。
あまり知られていないところでは眼球の動きがある。たとえば右から左にゆっくり眼球を動かしているつもりでも、鏡で見ればカクカクと段階的に動いていることが分かる。また上下と左右でも使う筋肉が違うため、カクカクの動きが違いスムーズさに個人差がある。このスムーズさは、動体視力に差が出るようだ。
このようにプロアマ問わず、人それぞれ得意不得意があり、能力をダイヤグラムに現せば、真円に近い人やいびつな人、多角形の大きい人や小さい人、いろんな形になり、ドライビングの上手さとは、真円に近い大きな多角形を持っているか、または、それぞれの自分の能力をどれだけ引き出せているか、、、の差とも言える。
プロといえども万能ではなく、上手い運転をしているとは限らない。
当然、それぞれのドライバーの能力は均質ではない。
不得意な分野は、不得意をカバーする操作をしているか、あるいはタイムに直結しないため影響していないだけの場合もあると動画から推測できる。
もちろんタイムを出すための高度なコントロールはしているが、繊細なコントロールはできていなかったりする。
WRCやF1等の世界選手権では見ないが、国内選手権レベルであれば、おや?と思う運転はたまに見かける。
プロドライバーの最優先事項は、上手い運転をすることが仕事ではなくて、タイムを出すことが仕事であり、国内選手権レベルであれば、それでも通じるのだろう。
同乗をする際には、その人は上級者やプロだからが正解だとか、上手いから自分とは違うんだ、と短絡的に捉えずに、なぜそれでタイムが出るのか、よく考えたほうが良い。
また、人のマネをするだけでは、その人以上にはなれない。
マネが出来ること、出来ないことを選択し、自分にあったドライビングを組み立てねばならない。
人に負けている分野があっても、逆に勝っている分野もあればカバーできるかもしれない。
自分の体の特性を理解して、能力に合った運転を組み立てることが、非常に大事。
また、能力が高まれば、組み立ても変わってくる。
筋力や体を動かす繊細さは訓練により向上するし、加齢や普段の生活の変化により変化していくので、それも考慮しなければならない。
同乗から得られる情報は多く、言葉では分からない微妙な車の動かし方も体感でき、とても有益ではあるが、誤った方向にも導かれ易く、非常に難しい。
モータースポーツは「タイム」という絶対的で明確な結果が目に見えて、強大な力を持っているため、それに目を奪われていると、罠にはまり易い。
広範に正しい知識を持つことと、短絡的な判断をしないことが必要だ。
より正しい見識を持った人に出会うことも大事な要素かもしれない。
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Posted at
2011/10/17 23:20:30
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