2005年03月29日
長崎は愛媛や三重と並んで真珠の生産県です。何れの県にも共通するのは入り組んだ波静かな湾と綺麗な海があること。まさにそういう環境が真珠の養殖には要求されるんですね。
私の両親はつい最近引退するまで30数年真珠の養殖に従事していましたので、小さい頃の日々の生活は”真珠”でした。私にとっての”貝柱”はホタテではなく真珠貝の貝柱だったのです。美味しいんですよ。
ところで真珠の珠出しはすでに終わり、まもなく真珠の品評・競りの時期になります。そして次の年度の真珠の珠入れ。
ご存知と思いますが、真珠貝とはアコヤガイのこと。この貝の卵巣部に真珠の核となるものを入れるわけです。この核、北米辺りで獲れる、肉厚の二枚貝の貝殻を丸く削りだしたものが今は主流です。通常はその核をひとつのアコヤガイに2個入れます。
貝殻を3センチほど開けた状態で台に固定したのち、そのせまい隙間から覗き込んで専用の小さなメスで卵巣に切れ目を入れます。先がごくごく小さいスプーンのような器具に核を水で固定し、切れ目を入れた卵巣に”うまく”挿入します。このままでは切れ目を入れた箇所が閉じないので、”外套(がいとう)”を1センチ角くらいに切ったものを載せます。
外套とは貝殻の淵の部分にある、細長い活動のさかんな細胞組織のことです。食用になると”ひも”とか言いますね。
もちろんその施術の間貝は生きてます。が、人間のように生命力が強いわけでは有りませんから「いかに短い時間で手際よく、貝に負担をかけないように入れるか」で職人の腕が問われるのです。このとき入れた2つの核の位置が近すぎると2個がくっついたり変形したり、場所が悪いと死んでしまったりするんですね。
珠入れが終わると綺麗な静かな湾に作られたいかだに吊り下げられ、1年、2年・・と養殖されます。この貝は水温や水質には敏感ですので、夏場の平均水温が1~2度高かったり、赤潮といって大量発生した赤いプランクトンが水面を覆うと酸欠になって死んだりします。また、吊り下げたかごや貝殻には海藻やフジツボなどが付いてこれまた酸欠を起こしますので、定期的に引き上げては一個一個手作業で掃除しなくてはいけません。
そうして所定の年数を経たのち貝は上げられ、開けられ、入れた真珠が取り出されるわけですね。つまり2ヶ月弱の珠入れの結果は1~2年後に出てくるわけですよ。それもモロに。職人の腕がよければ7~8割くらいは生き延びて、綺麗な真珠もたくさん出てきます。が、腕が悪いと養殖の途中で死んでしまったり、出した真珠も使い物にならなかったり・・・ かなりシビアですよ。
最近は台湾や中国、韓国の業者が増え、輸入品が増えてきました。それらは6ミリから6.5ミリくらいの中玉やそれより小さい小玉が主流。ただ技術がそれほどでもなく、それらのほとんどが”1年もの”。ですので”巻き(真珠の層)”が薄く深みがないため、人工的に着色されたものも多くみられます。これらは安い値段でお値打ち品的に売られていますが、年数がたつと色が落ちてきたりします。
輸入品の安価な真珠に対向する手段として、日本の業者は”巻き”のより優れた高品質もの、あるいは粒の大きい”大玉”を狙うようになりました。
つまり1年目では出さず、2年3年と継続して養殖するわけですね。そうすると真珠層が厚くなりますので色や輝きに深みが出ます。”大玉”とは入れる核を大型化して大きな真珠を作ることです。でも核のサイズが大きくなるので貝の負担も大きく、職人の腕前が悪いと貝が死んでしまうんですね。
輸入品・国産品に関わらず、質の高いもの・低い真珠を並べて比較するとその差に愕然とするはずです。もちろん目的に応じて変わるでしょう。が、せっかくの宝飾品、もしかしたら一生物、値段だけでなくどうぞ気に入った”本物”を手にして下さい。
ちなみにサザエやアワビの貝殻の内側はつややかに光っていますよね。こういう貝は”真珠のようなもの”を作ることが出来ます。が、真珠のような綺麗な球にはならないそうです。
真珠貝の中に閉じ込められてしまった小さなカニが綺麗な真珠色に光ってたり、って言う事もたまに有ります。
Posted at 2005/03/29 11:50:09 | |
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五島・やんちゃ期 | 日記