本シリーズは,クルマについて回る分かりづらい数字の類を,
できるだけ分かりやすく表現しようとするものです。
導出過程は計算式を用いて進めていきますが,
結論はドライバーにとって直感的に使いやすいものにしたいと思います。
計算式はあまり具体的な数字を出さないようにし,
計算演習じみたことにはならないようにします。
必要に応じてグラフを使用することもありますが,
単位にはこだわらず,したがって本来必要な定数を省くこともあります。
ぱっと見でイメージできればイイや,くらいの感覚です。
*第1回 馬力とトルク
クルマの動力性能を語る上で欠かせない2つの数字。
それが馬力とトルクである。
では,馬力とトルクが,クルマの加速・最高速にどのように関係するのか,
簡潔に説明しろと言われてもなかなか出来ないのではないだろうか。
一般的に多くなされる説明は次のようなものだろう。
・馬力はトルク×回転数で表される(厳密には更に定数をかける)。
・トルクは加速,馬力は最高速に影響する。
・パワーウェイトレシオは(日本式では)小さいほうが加速がいい。
正直,これらは合っているようで合っていない。
実際,このレベルの認識しかなかった頃の私は訳が分からなかった。
訳が分からなくなるのは,出てくる変数が多すぎるため,
そして変数と変数が互いに影響しあいすぎているためである。
・馬力=ENGトルク×ENG回転数
・車速=ENG回転数÷変速比÷最終減速比×タイヤ周長
・出力軸トルク=ENGトルク×変速比×最終減速比
・推進力=???
・空気抵抗=車速×???
……シフトアップした瞬間に計算が飛ぶこと請け合いである。
何かもっと,運転しながらでも直感的に分かりやすい表現はないか。
各変数の単位系・意味を考え,辿り着いた結論がこちらである。
「横軸が車速,縦軸が馬力のグラフ」
シフトアップの回転数は任せる(最高出力回転数でもいいしレブリミットでもいい)が,
次のようなグラフを書いてみればいいのである。
(かなりざっくりだが,後期型NIVEC仕様のFTOのグラフ)
このグラフに至った理屈を説明していこう。
まず,馬力=ENGトルク×ENG回転数,これはいいだろう。
(なんで?と思った方はググってください,不必要に長くしたくないので…)
そして,この馬力というのは非常に考えるのが楽な代物で,
ENGで計ろうが出力軸で計ろうが同じなのである。
馬力とは仕事率である,という定義からすれば当然なのだが,
計算式を2つ書いてみればより納得できるだろう。
出力軸トルク =ENGトルク×変速比×最終減速比
出力軸回転数=ENG回転数÷変速比÷最終減速比
出力軸馬力 =出力軸トルク×出力軸回転数
=ENGトルク×ENG回転数
=ENG馬力 QED
「495年の波紋」
で,馬力は仕事率である,ということであるが,
この仕事率というのは,単位時間あたりになされる仕事のこと,
そして仕事というのは力の大きさと移動距離の掛け算である。
すなわち,馬力をENGトルクを用いない式で表現すると,
馬力=推進力×移動距離÷時間
=推進力×速度
となる。
本来であればENGトルクにあれやこれやをかけて求めることになる推進力(と加速度)が,
この考え方だと馬力と車速から逆算的に求める事ができるのである。
この式からすると「トルクは加速に~~」という表現は正しくなく,
正確には「同じ車速に対し大きい馬力を発生している方が加速がいい」となる。
そして,この考え方からすると,「パワーバンドだけ使って走る」のも必ずしも正解ではない。
最高出力発生回転数でシフトアップした場合と,
レブリミットまで引っ張ってシフトアップした場合,
グラフを重ねて書いてみるとこうなるからだ。
赤が最高出力発生回転数でシフトアップ,青がレブリミットでシフトアップした場合だ。
(若干グラフが汚いのはご容赦願いたい,回転数を500刻みにしてしまったもんで)。
同時に,縦軸を推進力に変換したグラフも書いてみた。
明らかに赤のグラフはシフトアップでの馬力・推進力の落ち込みが激しい。
つまりシフトアップで加速がもたつき,遅いということになる。
ということはこのクルマの場合,レブリミットまで引っ張った方が理論上は速いということになる。
(ちなみに高回転型NAはだいたいこの傾向を持つ,というか最高出力がレブリミット寸前)
また,この考え方からは「パワーウェイトレシオが小さい方が加速がいい」わけではないことも分かる。
(ピークパワーから算出しているレシオなので,この考え方がなくてもなんとなくは分かるが…)
赤が最高出力180馬力のNAエンジン,
緑が最高出力160馬力のダウンサイジングターボのイメージである。
(多分コルトVersionRがこんな感じ)
車重が同じであれば,パワーウェイトレシオで表現すると赤の方がハイスペックに見えるが,
実際の加速力は緑の方が優れていることになる。
ただし,それはあくまでも150km/h以下の中速域までの話で,
170km/hを超えるぐらいからは赤の方がわずかに逆転を始める。
クルマに限らず最高速というものは,推進力<抵抗となったときのものであるから,
空力特性が等しいなら,赤より緑の方が先に空気抵抗に負けて速度が頭打ちになることだろう。
一概にそうともいえない部分はあるものの,
「馬力は最高速に影響する」というのはこうしてみると確かに正しい。
ひと通り世間で言われていることについて検証してみたところで,
今回のまとめに入りたいと思う(眠くなってきましたスミマセン)。
①クルマの加速・最高速を考えるには,
ENGトルクは見る必要なし,馬力だけでいい。
②ただし,馬力は
ピークパワーだけでなく全域の性能曲線を意識する。
③有段変速機なら,
各車速に対してもっとも馬力を発生できるようシフトアップする。
④そうなるようにしているのが最近の多段変速機,理論上の理想はCVT(伝達効率がよければ)
こんなところで,今回は終了とする。
……とまぁいかがだったでしょう。
ぶっちゃけ分かりやすさ分かりにくさよりグダり感が半端ないorz
いや実際眠くなってきてグダグダしてしまったのは反省してますが。
実のところ今回のは「車速-馬力グラフ」という考え方を公表したかったのが全てなので,
それ以外の内容は無理矢理裏を取って書いたというか……。
え~,次回講座をやるときはもっとキリッと書きます。
スミマセン,仕事で追い詰められすぎて頭ん中がブロー寸前なんで,
今夜はこれで失礼させていただきます。
明日は有給とったし。
おやすも……Zzz