2017年02月14日
急がば小回れ
特にジムカーナの練習会などでよく言われることですが,
「大回りでスピードを出そうとするよりも,ゆっくりでいいから小さく回れ」
がタイムを出すための鉄則です。
とりわけ入り組んだパイロンセクションでのライン取り考察で話題になります。
あとはパイロンの間をくねくね回ってゴールするだけ,みたいなあたりがいい例。
理論的に考えてみましょう。
話をシンプルにするために定常円旋回を例に取ります。
ひたすら真円を描いて走るアレです……ってやったことある人は実は少ないと思うけど。
進入のブレーキングも立ち上がりの加速も無視,考慮できるほど頭働いてないんで。
ある半径を保ちながら徐々に旋回スピードをあげていくと,やがて円から逸脱します。
(大抵のクルマは前輪が外に膨らみますが,これが真義のアンダーステアです)
それがどういう状態かといえば……半径維持に必要な横力をタイヤが発揮できなくなった状態。
要するに遠心力がタイヤのキャパシティを超えた状態ということです。
タイヤのキャパシティは,こと定常円旋回においては旋回半径によらず基本一定とみなせます。
加速も減速もしない以上,4輪それぞれの状態は不変ですから,トータルでは一緒です。
小さく回ろうが大きく回ろうが,タイヤが耐えられる遠心力は同じということ。
では,遠心力の式は?
覚えてますか,高校の物理です。
F=(m・v^2)/r←顔文字じゃないっすよ
m:質量 v:速度 r:旋回半径
質量は一定なんで省きますと,得られるものは横Gです。F=maですから。
G=(v^2)/r
旋回半径によらず,定常円旋回の限界はこの横Gで決まります。
タイヤの性能に応じて出せる横Gが決まり,その横G限界と旋回半径で限界速度が決まります。
式から分かる通り,倍の半径で回ろうとすると,約1.4倍の速度で回れるということ。
が,しかし,倍の半径で回るということは,通らなければならない距離も倍になるということ。
倍の距離を1.4倍の速度で走る……1.4倍時間がかかるわけです。
小回りした方が速いじゃ~ん。
というふうに,どシンプル考えてみても首記の言葉は正であることが分かります。
しかし,いざこのアドバイスをしてみても,タイムが縮まらない人の方が多い。
なぜか。
上記の考察は,全て「タイヤの性能を発揮しきっている」条件で比較しています。
対して,アドバイスを受けた(受けるような)人がそこまで行けているかどうか。
低速コーナーは恐怖がない分,摩擦円とかその辺の概念を置き去りにしてしまいがち。
小さくゆっくりタイヤの限界を引き出して回るってのは,意外と難しいものです。
私見ですが,このアドバイスは「小さくゆっくり回れ」以外の言い回しを考えるべきかと。
人によっては「ゆっくり」だけが印象に残って中途半端な半径でスロー旋回したり。
人によっては「小さく」だけが印象に残ってフルステアでフルアクセルかましてみたり。
で,なんとなくステアとアクセルのバランスが(自分の中では)取れるラインに戻ってしまう。
何かもっとピンとくるような,標語的な言い回しはないでしょうか。
「タイヤの限界探りながら出来るだけ旋回半径を絞りこめ」では長すぎますかね。
……まぁ,別に思いついたからって誰に教えるあてがあるわけでもないんですが。
とりあえず,来月また美浜にオートテストに行ってくるんで。
前回の参戦時には,やや膨らみ気味のラインにも若干の問題があったのではないかと。
今度は紙に書いてインパネにでも貼っておこうかな。
「急がば小回れ」
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[解説・考察]ドライビング関係の話 | 日記
Posted at
2017/02/14 23:26:56
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