2015年12月31日
「チューニング」の基本理念
大前提として,チューニングとは「チューンアップ」でなくてはならない。
いじった箇所は,最低限いじる前よりも良くなっていなければおかしい。
そうでなければ高い金をかけてデチューンをしているという妙なことになる。
そんなのはアタリマエのことだと思われるかもしれない。
しかし,本当にそのチューニングは性能向上になっているのか?
数値的に確認してみると,実は前より悪くなっていることが往々にしてある。
例を挙げると,よく話題に上るメニューとして吸排気系のチューニングがある。
エアクリーナーをごそっと毒キノコにした,マフラーをチタンの直管にした。
喜び勇んでサーキットに持ち込んでみると,あら不思議,1秒もタイムがダウンした……。
他の例としては,「ブレーキはでっかくてよく効く方がいいだろう」と勘違いしてやりがちなこと。
ローター径を大きくし,対向6ポットのキャリパーを前に付け,よく効くパッドを入れた。
これまたサーキットで走ってみたら(その前に気づくと思うが)ものすごく扱いづらい。
扱いづらいだけならまだしも,変更前より制動距離が伸びる。フロントロックする。
ノーマルブレーキの頃と比較するのも恥ずかしいタイムになってしまった……。
例えばの話ではあるが,上の現象について軽く説明してみよう。
1つ目の吸排気の例,シャシダイで最高出力が上がっていたとしても,これは起こりうるのだ。
上記のような吸排気のいじり方をした時,パワーバンドが高回転寄りになることが多い。
んで,ノーマルのパワーバンドに合わせて作られた純正T/Mのギア比と合わなくなってくる。
シフトアップたびにパワーバンドを外れ,加速が良くない,速度のコントロール性も良くない。
ストレートでもコーナーでも前より遅いんじゃないの?と頭が疑問符だらけになる。
頭文字DでENG載せ替え直後にハチロクに乗った藤原拓海の状態だ。
ちなみにこれはターボ車でもありえるので注意。
(中谷明彦氏がライトチューンのエボで「半端にいじったせいでゼロカウンターできない」とコメント)
2つ目の例は,とても大事なあるものの換装を怠ったために起きる現象。
最大の原因はキャリパーのポット数を増やしたこと,「何か」がこれに対応できていないこと。
その正体は,マスターシリンダー。
ポットの数が増えているということは,必要なフルード送り出し量が増えているということ。
マスターシリンダーがそのままでは,最悪シリンダーが底づきしてどうにもならなくなる。
あと,入力側と出力側のピストン経が違いすぎるので,超ウルトラカックンブレーキになるはず。
ローターの熱容量が上がって熱ダレしにくいのはいいが,それ以外は全部デチューン。
多分マスターシリンダーに原因を見出す前にブレーキ一式を元に戻すでしょう。
とまぁ,少し長くなってしまったが。
クルマはパーツを入れたら入れただけ速くなるんだ!というのは幻想だと知るべきである。
良くなるはず,良くなるに違いない,と思い込みで実行して結果が伴っていない例は腐るほどある。
チューニングの本質は「クルマの特性を変えること」…変えた特性がマッチしなければ結果は出ない。
チューンアップの王道は「ここをこう変えたら,クルマの動きがこう変わる」と理論立てて考えることだ。
それにはクルマの各部構造・原理について深く理解することが求められる。
まぁそこまでは過剰かもしれないし,かえってドツボにハマるかもしれないから,とりあえずは
「チューニングは良くなるばかりではない」
という前提で考えるようにすれば,挙げたような罠にハマることも少なくなるだろう。
もうひとつ,チューニングにおいて大事なことがある。
これも往々にしてハマっている人が多い気がする(というか私も以前そうだった)が,
「チューニングが目的になってはいけない」。
上で述べたように,チューニングとはクルマの特性を変えることだ。
求めるスペック・フィーリングになるようにチューニングする,これは目的と手段として正しい。
かかる時間と金はともかく,おそらくいつかはゴールに到達するだろう。
問題なのは,これといった目的も目標もないまま,とにかくクルマをいじり倒すこと。
いわばチューニングが目的になってしまっているパターンだ。
ステータスは注ぎ込んだ金と装着パーツのブランドが全て。
ベースとなった車種の良さも,装着したパーツの性能も宝の持ち腐れになっている。
そこまで極端な例はなかなかお目にかかれないが,とりあえずチューニングの人は結構いると思う。
私も昔FTOを購入してすぐの頃,車高調を入れ毒キノコを入れと憑かれたようにチューンしていた。
別に足回りやパワーに不満があったわけでもない(てかそんなこと分からない)のにひたすら。
あてもないツギハギ仕様だったから,走行会でも所詮それなりの速さだった。
チューニングを行う以上は,それなりの理由や目的があるべきだ。
サーキットでタイムを削るとか,全日本選手権で優勝とか,ハイレベルな目的でなくていい。
次回話す予定だが,「現状気になるところを直す」でも理由としては十分だ。
というより,チューニングを突き詰めていくと結局はそれが理由として全てだ。
チューニングジャンキーに陥る前に,まずは今のクルマと十分に向き合うこと。
そこで「特に不満はないな」という結論になったならそれでいい。
「ここのこういう動きが嫌だなぁ」となったら,それを解消することを考える。
解消できる必要十分レベルのチューニングとは何かを考える。
それでも個人レベルでは,どこかをいじると今度は別のネガが見えてくるだろう。
出てくるネガが目を潰れる,または「これも味」と思えるようになるまで,思う存分やればいい。
このやり方でも,ゴールまでには結構なお金と時間がかかるだろう。
金銭面や家庭などで挫折・中断もあると思うが,それはそれ,お金を工面するのも一興ということで。
(あるいは,この車種ではパーツがないのでお手上げ\(^o^)/というパターン……俺だ)
これら基本理念を抑えたところで,今回はここまで。
次回は「ストリートチューンを考える」とし,ショップやメーカーの論理を交えて考える予定。
Posted at 2015/12/31 10:34:20 | |
トラックバック(0) |
[日記]チューニング考察 | クルマ