ストリートチューンの在り方
ストリートチューンとはどんなものか,というのを定義するのは困難である。
というより「ストリートチューンとはこういうものだ」という決まりきったセオリーは存在しない。
最低条件として車検に通って公道を走れれば,あとは基本的にオーナーやチューナーの自由だ。
1人乗りで内装なし,富士スピードウェイをラップタイム1分40秒で走ってます,
みたいな車両でも車検を通して公道を走れるようにはできるので,もう少し付け足すなら,
「オーナーが一般道をストレスなく走れる仕様」という条件も必要だろうか。
この「ストレスなく」を外している人が意外と多い。
平日の通勤に使うけど,たま~にワインディング飛ばしたりたま~~~にサーキット行ったり,
みたいな車両は,市街地で扱いづらいエンジンと跳ねるサスが高確率でセットになっている。
週5日の通勤で溜めたストレスを,週末ぶっ飛ばして発散するような生活だ。
私も昔はそうだったから,言い分はよく分かる。
「サーキット走るんだったら,それなりのサスを入れないと面白くないし」
「乗り心地は
ガマンすれば何とかなるレベルだよ(あるいは,慣れれば大丈夫)」
で,たまに誰かを横に乗せると腰の痛みを訴えられる。
「ガマンすれば」公道を走れる仕様になってしまう人の多くには共通認識があると思う。
1.ノーマルはクソ
2.乗りづらいのがチューニングカー,それを乗りこなすのがスポーツドライビング
ざっくり言えばこんなところである。
チューニングカー乗りの人たちには思い当たるフシがあるのではなかろうか。
本当のストリートチューニングにあたっては,まずこの誤解を解くことが必要だ。
とかく軽く見られがちなノーマルだが,その車種の全ユーザーの評価を平均してみたなら,
ノーマルに勝るチューニングカーを作ることは非常に困難である。
少なくとも開発時のターゲット領域内であれば,総合性能でノーマルに勝るものはないだろう。
今日のクルマはそれほどの完成度であり,自動車開発にはそれだけの金と時間がかかっている。
とはいえ,特定用途向けの特殊工業製品ではない以上,自動車開発には常に妥協が伴う。
他性能のために走行性能を程々で諦める(無論,設けた開発目標値はクリア)のはよくあることだ。
主として耐久性を理由に,それはスポーツカーであっても例外ではない(スポーティカーで顕著か)。
それでも,ストリートユーザーのレベルに限れば,絶対スペックに不満を覚えることは少ないだろう。
(あぁ私? エコカーでスポーツ走行してる方がおかしいって自覚ぐらいありますよ)
本人はスペック不足を感じていると思っていても,それはスペックを引き出せていないだけ。
根本理由は「クルマが思い通りに動いてくれない」ことにある。
これは,全てのストリートチューンにおいて踏むべき手順といってもいいかもしれない。
不満箇所を最小限の改修で修正し,自分が望む動きをするようにクルマを調整=チューンする。
限界を
(引き出せもしないのに)無闇に引き上げるのではなく,今ある性能を思い通り操れるようにする。
いってみれば一体感という性能の向上だ。
スペックに変化はなくても,クルマのスポーツ性は上がったと感じるはずだ。
それでいてノーマル由来の乗りやすさは維持,ないしむしろ向上が期待できる。
ストリートに軸足をしっかりと置いた,チューニングの基礎と呼べる思想である。
以上は,巷でスーパーノーマルと呼ばれる考え方だ。
詳しくはチューニングショップ「オリジナルボックス」のサイトを参照されたい。
これだけでサーキットのラップタイムが目に見えて縮まるという類いのものではないが,
クルマが思い通り動くということは,常に安定したペースで走れるということにつながり,
結果としてラップタイムのバラつきが少なくなることが期待できる。
ある程度のチューニングレベルに至ったら,この考えに戻ってみるといいのではないだろうか。
さて続いては,そこからもう一歩踏み込んだ考え方について。
上で述べた通り,ノーマルカーは各性能のバランスを高度に取って開発されている。
それに伴って一部の性能が妥協(言い方が悪いが他に思いつかない)されるわけであるが,
逆にいえば,その性能を妥協した結果として良くなっている性能があるということでもある。
では,その背反性能が,個人的にはそれほど重要でないものであったとしたら。
背反性能を許容できる範囲で削っていいなら,より積極的なチューニングができるのではないか。
先程のスーパーノーマルがクルマとしての最適化とするなら,こちらは個人への最適化。
不要な機能をそぎ落とし,重視する性能をその分だけ向上させる。
簡単に言ってしまえば
ロボットアニメのエース専用機みたいなイメージである。
この「いらない」レベルは自分だけで判断してもいいが,他人を考慮すると大人なチューンになる。
家族や恋人がいるなら考えてしかるべきだし,営業の外回りに使うなら尚更だが。
他人の視点を含めても,削り代は意外とあるので恐れずやってみればいい。
私自身がA05Aにやった中でこの考え方に当てはまる例を挙げれば,
・グレード選び(クルマを買うときにアイドリングストップ等のない軽い
&安いグレードを選択)
・タイヤ(燃費の低下は最小限と判断し,グリップを重視してタイヤを交換)
・ボディ補強(グレード選びでチャラになると見込み補強バーをフル装備)
・ブレーキパッド(ギーギー鳴るけど気にもしないのでスポーツパッドを選択)
などなど,エコカーとしての本分をぶち壊しそうなことばかり実施している。
(乗り心地に絡むことをやっていないことに自分でビックリ)
注意するべきは,「下がっちゃった」ではなく「いらないから下げる」でなければならないこと。
上げ幅だけでなく下がり幅も考えた上で手を入れる必要があるということだ。
そうでなければ最初に述べた「ストレスなく」の条件から外れてしまうからだ。
もっとも,何がどのくらい低下するか,実際に付けてみないと分からないパーツも多いと思う。
そこで「南無三」するかリスク回避するかは,財布とチャレンジ精神と相談して欲しい。
(ちなみに,サスペンションに手を出すならローダウンスプリングよりサスキットのがオススメ)
今回挙げた考え方は,ストリートとしても結構なライトチューンのように思えるかもしれない。
しかし実際,競技入門レベル(走行会でなく)にならないとこれ以上を真剣に必要とはしないと思う。
勝ち負けを競わない走行会レベルなら,これだけやれば十分楽しく走れる。
むしろ開き直ってコントロールする練習をしようと思える分,壊すリスクも減るような気がする。
ストリートチューニングで大事なのは,持て余さない程度の手の内感。
足るを知ると,クルマはもっと楽しめるものになるはずである。
調子が出なくて時間ばかりかかったので,雑な終わり方だが今回はここまで。
次回ネタは未定(多分少し間があきます)。