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なお今回の内容とはあまり関係ない模様。
モータースポーツにおけるチューニング
速いクルマの条件とは何か。
サーキットレース・ラリー・ジムカーナ・ダートラetc....
モータースポーツでライバルに勝つにはどうすればいいのか。
答えは,
F=Maにおける
aを出来る限り大きくすることだ。
止まる,曲がる,加速する。
その全てにおいて,ライバルより大きな
aを発生させることが出来ること。
平易に言い換えれば,より高い加速G・減速G・旋回Gを発生させられる車両を作る。
トップカテゴリーから市販スポーツカーまで,開発競争はそのために行われていると言ってもいい。
それはライバルとの戦いであると同時に,物理の限界との戦いでもある。
では次に,そのための具体的な方法論について。
と,ここで問題。
クルマが発生させられるGの限界を決める根本的な要素とは何か。
もっとも大事な部品要素を1つあげるなら何であろうか。
答えは「タイヤ」だ。
それ以外の要素は枝葉だと言ってしまってもいい。
エンジンの馬力も,ブレーキの制動力も,ハンドルを切ることによる旋回力も。
タイヤのグリップの範囲内でしか路面には伝わらない。
当然,その範囲内の力相当でしかクルマは動かない。
これは物理的な限界であり,ドライバーのテクニックがどうこうとかいう問題ではない。
というわけで。
エコタイヤを履いたクルマをどれだけ魔改造したところで,ハイグリップラジアルには敵わない。
すっごい馬力のエンジン,強力かつ安定したブレーキ,高精度でしっかりしたサスペンション。
それらに何百万とかけても,タイヤがショボかったら全て水の泡ということだ。
では,タイヤをハイグリップなものに交換すれば全て解決か。
と言われればやはりそんな簡単な話ではないわけで。
先ほど「タイヤが根幹でそれ以外は枝葉」と言ったが,枝葉がなければ木は生きられない。
モータースポーツの速さの真髄はタイヤを生かすことだ。
あらゆる場面において4本のタイヤのトータルグリップを最大限に引き出す。
そのために行う作業がチューニング(特にサスペンションとボディの)ということになる。
ここで,タイヤのグリップと荷重の関係について少しだけ。
タイヤのグリップは荷重をかければ増加する,というのは聞いたことがあるだろう。
しかしそれは一定範囲内においてであり,荷重をかければかけるほど延々増加するわけではない。
ある程度までは荷重に対し1次関数的に増えるが,そこから徐々に傾きが減って最後は頭打つ。
タイヤを生かすために行うべきチューニングは大きく3つだ。
1つ目はこの「傾きが減る領域」まで荷重がかからないようにすること。
すなわちピッチングやロールを減らして不必要に大きな荷重移動が生じないようにすること。
これは,タイヤにかかる負荷を分散させ,ひいてはタイヤグリップの持続にも繋がる。
2つ目は接地荷重をいかなる姿勢・路面においても安定させること。
路面のうねりなどでタイヤの接地性が変化すると荷重抜け・グリップ抜けを生じ挙動が乱れる。
そうならないよう常にタイヤが路面と安定して接地するようにすること。
3つ目は加速力・減速力・旋回力を余すことなく路面に伝えること。
折角発生しているタイヤのグリップを各所のたわみなどで無駄にしないようにすること。
これらの具体策は言わずもがなだろうが,サスペンション強化とボディ補強である。
ロール剛性アップ・それに合わせたダンパー特性・全てを受け止めるボディの剛性アップ。
このあたりの考え方は,過去に「チューニング考察」カテゴリーで投稿している。
特性概算のための理論式も記載してあるので,検討の際には適当に参考にでも。
タイヤを生かすためのチューニングと考えるなら,チューニングはタイヤ選定の後にすべきだ。
まずはタイヤ選び,そしてそのタイヤの概ねの特性・限界を推定する。
その時点でボディの剛性不足を感じることがあれば適切な補強をしておく。
それらが仕上がったところでサスペンションのチューニングをじっくり行っていく。
タイヤを生かすという目的に対しては,やるべきことは以上で全てになる。
加減速については,サスペンションまで済んだ後にタイヤの余力と相談してよしなに,だろう。
加速時間がそこそこあるジャンルを想定するなら,そこまで見越したタイヤ選びをするべし。
タイヤありきのチューニング,という考え方はあまりお目にかかったことはないだろうが,
タイヤ選択の幅が狭い車種に乗っている人は頭の片隅に置いていても損はないのでは。
というまとめを
大分雑につけたところで,今回はここまで。
(本当はセッティングまで話を広げたかったけど時間切れ,もう目が開かない)
次回は,ある意味でこの話の続きになるネタを予定。