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かたむ~のブログ一覧

2017年06月16日 イイね!

たまに専門家でも間違えてるから困る…



自動車会社のプレスリリース,自動車雑誌,あるいは数々のネット記事でも。
未だにしょっちゅう見かける表現がこれである。


「高張力鋼板を多用することで軽量高剛性なボディを実現」


……う~む。

実のところ,開発ストーリーをかいつまんだのであれば,この表現は間違いではない。
制約あふれる市販車で,軽量高剛性なボディを作るのに高張力鋼板が欠かせないのは事実だ。
が,そういった行間読み一切抜きでこの表現を見た時,貴方ならどう思うだろう?

「鉄板を高張力鋼板ってのにすると軽くなって剛性上がるんだ!」

文系の諸兄は多分こうなるだろう。
無理もない。
時々理系の技術者でもこう思っている人がいるくらいだ。
私も「剛性足らんから板厚盛って」と言ったら「ハイテン化じゃダメ?」と言われたことがある。
……まぁ,塑性はしてないんすよ,って絵の説明を若干端折った私も悪いのだが。




さて,一部愚痴を交えつつ問題提起をしてみたが,今回の話題は高張力鋼についてである。
早速だが,高張力鋼とは何か,皆さんは正しく理解できているだろうか。

高張力鋼は,開発職の間ではハイテンという呼び方をされることの方が多い気がする。
私としては,高張力鋼という誤解を招きやすい呼称より,原義に近いハイテンの方が好きである。
ハイテン……High Tensile Strength Steelの略だ。
本当はHigh Tensile Strength(高引張強度)であって,High Tension(高張力)ではないのだ。
重箱の隅つつきのようだが,ここは意外と大事だと私は思っている。

悲しいかな「高張力鋼にすると剛性が上がる」と思っている人が多い。
強度と剛性の区別がついていない人が,技術屋の中にもいるのは事実だ。
剛性とは,ある重さをぶら下げた時にバネがどれだけ伸びるかの話。
強度とは,バネにどれだけ力をかけたらビヨビヨになって戻らなくなるか,または切れるかの話。
ざっくりした表現だが概ねこんな感じだ。全然別物であることが分かるだろう。
そして高張力鋼は,一般鋼(レトロニム)に対して,強度は高いが剛性は基本変わらない。
重いものをぶら下げてもダメにならないだけで,伸びにくくなるわけではないのだ。
よって,高張力鋼に変えただけでポンと剛性が上がるなんてことはない。勘違いである。

あるのだが,昔の誰かさんが「高張力」と訳してしまったせいで勘違いは絶えない。
高張力と言われたら,なんとなく伸びにくいのかな?と思ってしまうのも無理はないと思う。
そもそも張力と引張強度は,文字が似ているだけでさっぱり別物だ。
張力をWikipediaで調べるとこんな感じだ。ただの力である。強度要素は皆無だ。
いっそ高強度鋼って書いてくれりゃいいのにねぇ。
(と思ったら高強度鋼って表記もちゃんと存在する……統一しろよややこしいな~もお~)


とまぁ,こんな感じでハイテン(以下ハイテンで統一)とは何ぞやというのは分かったと思う。
次に,何ゆえ自動車にハイテンが使われ,使用範囲が拡大されているか見てみよう。
といっても,高強度と言っている時点で分かるだろう。強度を上げたいからだ。
なぜ強度を上げたいか。理由の多くは衝突安全性能向上のためだ。
どういうわけか分からないが,自動車に求められる衝突安全性能のレベルは年々高まっていく。
人間って年々強度低下していってるんだろうか?と最近真剣に疑っている。

ともかく。
衝突時に乗員を守るためには,運動エネルギーを吸収してやる必要がある。
金属に限らず物体は変形することで内部にエネルギーを吸収できるが,限度がある。
上で,バネを引っ張りすぎるとビヨビヨになって戻らなくなると言った。これを塑性という。
金属は,この塑性状態になるとエネルギー吸収能力がガクンと低下するのだ。
形状その他が同じでも,塑性しにくい材料を使ってやればエネルギー吸収量は増える。
というわけでハイテンのお出ましとなる。

逆に,材料をハイテン化することで,エネルギー吸収能力をそのままに板を薄くすることができる。
板を薄く出来るということはすなわち軽量化につながる。
昨今の自動車は装備が雪だるまのように膨らむ一方,排ガス他の規制で重量は制限される。
その上で衝突安全性能を維持したいなら,ハイテン化して薄板にするしかない。
引張強度を更に上げれば,もっと薄板に出来る(単純計算上は)。
そんなわけで今では超ハイテンに超々ハイテンにウルトラハイテンと絶賛インフレ中である。

じゃあどんどんハイテンにしてどんどん薄くすればいいのか,というとそんなわけはない。
というより,薄くすることで悲鳴を上げ始める機能はゴマンとある。
基本的に,鋼板の薄板化は剛性の低下にストレートにつながる。
断面積は減るし断面モーメントは下がる,メンバーがグニャグニャして操縦性はがたがたになる。
屋根が薄けりゃ雨音は煩いし,床が薄けりゃ路面振動で地震のごとく揺れる。
挙げればキリがないくらい弊害だらけだ。

メンバーの剛性なんて,断面形状で工夫すりゃいいんじゃないの?
構造力学を知っていればそう思うかもしれないが,ここでハイテンの特性が邪魔をする。
ハイテンは強度が高い分,延性が低い。要するに成形が難しいのだ。
生半可なプレス機では,狙った形状にならずうにょ~んと戻ってしまう。
何度かプレスを繰り返せば狙いのカタチになるかもしれないが,下手すると今度は割れる。
複雑なプレスラインなどもってのほかで,プレス機上げてみたら裂きイカになっていたりする。
最近は,特に国内サプライヤはこの辺の対策に熱心で,かなり解決はされてきている。
が,外国,とりわけ技術途上のASEAN他の工場には関係のない話だ。

つまるところ,ハイテンの多用は高剛性ボディになるどころか,間違えると剛性低下を招くのだ。
それでも技術屋は,適材適所にハイテンを使って軽くしつつ,肝は押さえて剛性を出している。
強度と剛性,コストと重量,複数の要目をバランスさせて最適化する地道な作業だ。
「高張力鋼板を多用することで軽量高剛性なボディを実現」なんて1文では済まない。
この文章を見て「高い材料使って良くしたんでしょ」と安易に思わないで欲しい。


最後に,ハイテンを使った軽量高剛性ボディの作り方を紹介しておこう。

一番の正攻法は「剛性は要らないけど強度は要る部品を薄板ハイテン化する」ことだ。
そして,薄板にして浮いた分の重量を振り分けて,必要な箇所の剛性を出していく。
発想としてはオーソドックスだと思うが,効果も微妙でやや時代遅れ感がある。
「剛性は要らないけど強度は要る」なんて妙ちくりんな部品はそんなにはない。
せいぜい270MPa~440MPa級の部品を590MPa級にするくらいのレベルの話だ。
ミラージュの作り方なんかまさにそんな感じである。
上記の文章もこの作り方を前提にして書いてある。

そうした地道なプラスマイナス法に代えて,最近にわかに流行っている手法がある。
ダイハツのDモノコックというのがまさにそれである。
なんと,通常270MPa級で作られるサイドアウターパネル(最外板)をまるっとハイテンにしたのだ。
そしてさらに,ハイテンにして板厚を下げたのかと思ったら,逆に厚くしてある(1.5倍)。
従来ただの板だったサイドアウターパネルを,剛性部材かつ強度部材にしてしまったわけだ。
結果,サイドストラクチャーの内部から補強部品を排除することに成功。
おかげで,アウターが厚板化で重くなったにも関わらず,トータルでは見事軽くなったそうだ。
自動車設計の常識からすると突飛だが,構造力学的には極めて理にかなった方法だ。
これを思いついた設計サイドもすごいが,実現しカタチにしてみせた生産技術サイドも大概だ。

ちなみにマツダの場合,似たようなことをフロアあたりでやっている。
フロアの場合,材料強度上げても振動問題で薄くできないから無駄,と思われていた。
そこをマツダは「板厚そのまま強度上げて衝突時に頑張らせよう」と考えたらしい。
そうしたら乗員区画の骨格はそんなに頑張らなくても良くなったそうだ。
当然,ボディ剛性に関わる部分は部分でマツダらしくちゃんと配慮されている。

どちらの例も,やっていることは本当の意味でのモノコック化だ。
無理に骨を通して継ぎ接ぎするより,高強度の外殻でぐるっと包んでしまう。
あるいは,これこそがハイテンの正しい使い方なのかもしれない。


こんな感じで,どこの自動車メーカーの技術者もとにかく頑張って頭を捻っている。
もはやハイテンなくしてクルマは作れない時代に突入しているのだ。
そのハイテンも決して万能ではなく,付き合うには高い知見と発想力が求められる。
強度と剛性を混同している場合ではない。

2017年06月13日 イイね!

2ヶ月違っても雨は降る



2014年以降ずっと雨に見舞われてるね。

何度も映るジャンクション手前のガードレールは誰が逝ったのか。


JN6は地元・群馬ナンバーの新井さんが3連覇で優勝。
悪天候のモントレーにめっぽう強いな新井さん……2014年には中破してるけど。
一方で,勝田さん今年なんだか調子悪いね。
あんだけベッコリ行って20秒以上ロスした奴田さんの方が順位は上なのか。
てかゼロカーに追いつくとか初めて見たよ,あぶねぇよw

JN5では,てっきりDS3にシフトしたと思っていたCUSCOの208R2が復帰。
なぜかCUSCOの全日本ラリーの戦績だけはレスポンスの記事になるという。
しかし,JN5って全日本ラリーなのに国産車が1台もいないのね……。
マツダあたりがアクセラディーゼルの魔改造とか出さないかしら。

……正直,いつもの調子で記事書いたけど,ほぼ感想がない。
J SPORTSのハイライト動画は今年はやんないのかな?


2017年06月11日 イイね!

Silly-Go-Round ~~~名古屋港工業地帯の夜編~~~



深夜過ぎて交通量がショボいせいか,明るさと華やかさに欠ける……。


IHI前辺りから一度南進して,新舞子マリンパーク通って,産業道路で北上……と考えていたのに。
そうか,新舞子マリンパークって夜間封鎖されんのか。
はるばるやってきてファインブリッジのゲートが閉まってるのを見た時の徒労感ったらね。

まぁ,なんとか夜の海が見えるアングルを確保できたから事なきを得ましたけども。
ロケハン1回したくらいで万事オッケーとは行かないっすね~。
途中こっそり道間違えてるし……。




最後はゴール地点で,工場成分補給と,尺余りの予備素材の撮影。
当初は動画の最後に使っていたけど,速度いじったら結局いらなくなった。

久しぶりに使った比較明合成……言わなきゃ誰も分からない合成。


ランプウェイが撮りたかっただけなのに,フェンスの影の縞模様が意外と面白くて。


なぜか異常に失敗しまくった1枚。


そしていつものアレ


やっぱりちゃんとしたマウント買おうかなぁ。
でもインパネの防眩カットしなきゃいけないのが面倒くさい……。
それに,とりあえずでマウント買ってもブレがなくなるとは限らないし。

そして,ぼちぼちネタがない。


Posted at 2017/06/11 15:50:16 | コメント(0) | トラックバック(0) | [日記]ドライブ | 日記
2017年06月10日 イイね!

心臓弱い人は見ない方が吉



どうやったらこうなるん?


しかも今日,ディーラーでオイル交換した帰り道の1号線で
このバスが反対車線をドナドナされていく
という衝撃の場面に遭遇。
文字情報でしか知らなかったけどひと目でわかったわ。

このバスも,直前で右に車線変更しなけりゃまだマシだったのかしら。
もはや「気をつけようね」って次元じゃないけど,気をつけましょう。

Posted at 2017/06/10 16:50:31 | コメント(0) | トラックバック(0) | その他 | 日記
2017年06月09日 イイね!

もっと評価されるべき



トーションビーム(TBA)というと,脊髄反射的にボロカスに毛嫌いする人がいる。
とりわけ"自称クルマ好き"に多いような気がする。

やれ安っぽいだの(安っぽいんじゃねぇ安いんDA!),
やれ商用車みたいなサスだの(カングーを除けば商用車はだいたいリジッドだわい),
やれF1はダブルウィッシュボーンだの(もはや何を言っているのか分からない)。
TBAはこうしてこうだから性能的にイマイチ,的な主張があまり見られない。

そもそも,スイフトスポーツやFK2型シビックRの速さをどう説明するのか。
国産車じゃ嫌だというなら,VWやプジョーなど欧州FFの多くはTBAだ。
庶民がハンドリングを所望し,長距離高速移動が日常の国のクルマに装備されている。
ダメだったらそんなことにはならないのではないか。

何もトーションビームがもっとも素晴らしいなどというつもりはない。
が,やたら崇拝されるマルチリンクと比べても,特段劣っているわけではないとは思っている。
少なくとも「トーションビーム」の表記ひとつで貶められるような代物ではない。




では,TBAの特徴とは,直截に言ってしまえばメリット・デメリットは何か。


まずは,みんな大好きデメリットの方から行こう(え)。
簡潔に言ってしまえば,TBAは横力に弱い,横剛性が低い。
数あるサスペンション形式の中でも,おそらくトレーリングアーム式に次いで弱いのではないか。

なぜ弱いのかは,この図を見ると分かりやすいだろう。サスペンションの上面視(上が前)である。


TBAのアームは,上から見るとHの字型をしている(故にHサスと呼ばれることも)。)
赤い部材が左右のトレーリングアーム,その間を繋ぐ青い部材がトーションビーム。
Sはスプリング(大抵ココ),Tはタイヤとかハブとかその類のもの。
そして画面上部のオレンジの線が書かれた四角がブッシュジョイントだ。

TBA式では,サスペンションアームは2箇所のブッシュジョイントでしか車体と固定されない。
車体とサスアームを横方向に支えるような部材が存在しないのだ。
横支えのないサス形式は他に,トレーリングアーム式と,一部リーフリジッドぐらいか。
そのようなサスペンションに横力,タイヤのコーナリングフォースがかかるとどうなるか。

ざっくり描くとこうなる。

(ざっくり描きすぎておかしいところがあるけど赦して,パワポで頑張って作ったのだ)

右旋回中だとして,力は左から右にかかっている。
その結果,TBA全体がブッシュを軸に右方向によれる。ブッシュも軸方向によれる。
図ではタイヤは前方を向きっぱなしだが,実際にはアームと平行のはずなので,向きが変わる。
外側のタイヤがいわゆるトーアウトの傾向を示すのだ。これはまずい。
本当にこんなことになれば,スリップアングルが不足して横力が出ずスピンに至る。
横力依存で起きる現象なので,車体が重かったりハイグリップだったりすると問題が大きくなる。

が,自動車メーカーだってそんなことはとっくに気づいている。
どのくらい昔から気づいていたかというと,今から遡ること33年前。
初代ゴルフ……TBAを初めて採用した車種の登場の時点からである。
具体的にどう対策をしているかというと,またまた図にするとこんな感じである。


ブッシュのボルトを,真横ではなく斜め前方向に通すようにしている。
それに伴ってアームも湾曲し,ちょうど筆記体のHのようになる。
これにより旋回時にサスアーム全体が動き,外輪のトーアウトを打ち消すことができる。
設計次第ではトーインにして安定性を稼ぐことも出来る(いいか悪いかは別)。
ちなみに白状すると,筆者,なんでトーアウトになるか正確に理解していない。
「左右ブッシュボルトの軸線の内接円に従って動くのかな?」くらいの印象である。
(……あれ,だとすると,ブッシュ固めるとこの効果って弱まる?)
詳しく分かるという人は,コメントなどで補足いただければ幸いである。

あとは,左右ブッシュ間の距離を可能な限り長く取ることでも解決策になる。
逆説的になるが,この図を見て欲しい。いかにも横剛性が低そうである。


幅を広く取れば,ブッシュが多少柔らかくくてもよれにくくなる。
スズキのTBAはこの辺がよくできている(らしい)。
それよりは狭いものの,現在売られているBセグは全般的にちゃんと作られている。
一昔前の国産TBA車がケチョンケチョンに言われるのは,ここのせいかもしれない。

話を戻して。上記の通り,TBAは旋回中にアーム全体が動く。
無論,定常旋回中にグラグラ動くようなことはないから安心していい。
(まぁグラグラするやつもたまにいるんだけどねぇ……)
問題はこのあとだ。
ステアリングを戻して横Gを減らすと,動いていたアームが元に戻ろうとする。
サスアーム前端で変形していたゴムブッシュも横力から解放されて原形復帰しようとする。
この時ゴムブッシュは,自ら蓄えていた弾性エネルギーによってオーバーシュート気味に戻る。
ゆっくり戻すなら何事もないが,戻しが速い場合,後輪が暴れて舵が効かなくなる。
旋回状態の変化に対して後輪が遅滞なく追従してくることができないのだ。
実際の運転動作に沿って言えば,切り返し性能に難があるということだ。
これがデメリットその2である。

原因はゴムブッシュが動いてしまうことなので,ブッシュを固めればこの問題は解決はする。
実際,FK2型シビックRはこのブッシュを固めることであの性能を確保している。
もっと確実に動きを止めたいなら,ピロボールをぶち込む手もある。
さすがに純正では見たことないが,コペンやVW,あとアバルトのアフターにあるにはある。

じゃあ固めればいいのかというと,そんな単純ではないところがTBAの本当の難点である。
車体とサスアームを繋ぐ唯一(唯二?)のブッシュを固くするとどうなるか。
お察しの通り,タイヤからの振動を遮断できず騒々しくなる。いわゆるNVH性能が悪化する。
この2つの性能はどのサスでも基本的にトレードオフだが,TBAはそのレベルが他より低い。
ゴムが2つしかない以上,これは固めていい、これはダメ,とマルチリンクな真似はできない。

なので,TBAは基本,1つのゴムの部分部分の固さを変えたり,穴を開けたりで対処している。
路面振動の振幅方向には柔らかく,それ以外には固く,と言った具合だ。
単純なゴムの円筒を突っ込んで終わり,とはいかない,高度な見識が要求される。
そんなわけでここは,チューニングを考える場合でも迂闊に触らない方が無難だと思う。
うっかりブッシュのバランスが狂ったりすると大変なことになる。

……とまぁ,考えられるデメリットは,実際のところこんな程度である。
「こんだけ?」と思われるかもしれないが,これだけである。
少なくとも吊るしの市販車であれば,これらだけ気にしておけば問題はない。
ついでに,上記からTBAが本質的に向かない車種を挙げてみよう。

まずは重量級の車種。
最初に述べたとおり,TBAは横力に弱い。
同じ旋回Gでも,横力は車重に比例して増加していく。
一方でパッケージングに制約がある以上,上で挙げた対策も無闇には打てない。
どの程度からかは一概に言えないが,あんまり重い車種にTBAを使うのは得策ではない。

次にハイグリップタイヤを履く車種。
これも基本は上のと同じだ。タイヤのグリップが上がれば横力が増える。
とはいえ,早い話が,NVHを妥協すればハイグリップタイヤは使用可能だ。
そもそもハイグリップタイヤを履くような車種に求められるNVHっても,ねぇ。
なので,純正がそこそこなのにアフターで履かせるなら,という話と思ってもらっていい。
ブッシュはどうにかなっても,アームの構造は如何ともしがたい。対策にも限度がある。

あとは高級車。
基本的に重い。振動は嫌われる。挙動が不安定なのもダメ。
第一イメージがよろしくない。合理主義は,無駄こそ正義な高級車には向かない。
安いBセグと同じサス形式で「高級車!」と謳われても「…は?」となるだろう。


さて,上に書いたようなデメリットは聞いたことがある人も多いだろう。
逆に,TBAのメリットは?と聞かれてすんなり出てくるだろうか。
コストが安い,スペース効率がいい,このくらいなら出てくるかもしれない。
あまりアピールされないが,TBAの走行性能に対するメリットは意外と多い。

まず,ストロークに伴うトレッドや対地キャンバーの変化が少ない。
アームが車両後方に突き出ているトレーリングアーム系ならではの強みだ。
横方向に突き出ている形式でこの両方を実現できるものはまずない。
車幅が小さくなればなるほど,トレーリングアーム系の優位は大きなものになっていく。
しかも,トーションビームがあるおかげで車軸保持剛性はただのトレーリングアームより有利だ。
さらに,両輪同時ストロークであればトーの変化も微小で,少なくともトーアウトにならない。
接地性変化が少なく安定したグリップを発揮できるサスだと言える。

次に,バネレートをあまり上げなくてもロール剛性を保つことが出来る。
トーションビームがスタビライザーの役割を果たすためだ,それも極太の。
スタビライザーとしてのレートは並の独立懸架に使われているほっそい棒の比ではない。
FFの後輪用として考えると,このロール剛性の高さは魅力だ。
さらに,トーションビームでロール剛性を稼げる分,バネレートを低くできるから乗り心地も有利。
ただ,不整地ではスタビとして効きすぎるため,減衰が追いつかず接地性が下がる場合もある。

さらに,意外かもしれないが,バネ下重量は割と軽い部類に入る。
これより軽いのはマクファーソンストラット式とトレーリングアーム式ぐらいだ。
リジッドとは比べるまでもないとして,マルチリンクやダブルウィッシュボーンよりも実は軽い。

あとは,最初に出したが省スペースであること。
だから何?と思うかもしれないが,要するにアームを通すにあたって無理が少ないということだ。
結果,幅広い条件下でサスペンションが設計通りに動きやすい。
部品が少ない故にフリクションも小さいこともあって,ストロークは基本的にスムーズだ。
妥協に妥協を重ねつつアームで知恵の輪しないといけないマルチリンクとは対照的といえる。
……まぁ,1箇所でも設計を間違えるとお手上げになる,とも言えるけど。

メカニカルではないが,シンプルさは運転にあたって有利に働く場合が多い。
アームは2本,それぞれゴムブッシュ1個だけで車体に留まっている。難点は前述のとおり。
が,逆に言えば,何か外乱があってもそこぐらいしか動くものがない。
シンプル故に動きが分かりやすい。予想の斜め上なとっ散らかり方はほぼしない。
とっ散らからないとは言わないが,その場合でも何が原因かがすぐ分かる。
今時のTBA式の車種で「ん!?」となることがあったら,ゴムブッシュのボルトを点検するといい。
ミラージュ納車当初,普通に走っていただけなのに山道でハーフスピン(!)になったことがある。
調べたところ,右後ろのブッシュのボルトが意味不明なほど緩んでいた(左ハーフスピンである)。
おそらく取付部にガタがあって,バンプトーインが正しく働かなかったのだろうと思う。
念入りに締め直して以降,そんなことはなくなった。以降も定期的にチェックすることにしている。


どうだろう。
やや恣意的な文章になったことは否定しないが,TBAにはメリットがこんなにあるのだ。
デメリットもあるがはっきりしているし,対策の方向も明快だ。やろうと思えば出来る。
車幅も利幅も大きく取れない小型FF車にとっては,リアサスの最適解と言っても過言ではない。
コスト重視の安物サスなどではない。コスパ重視の質実剛健なサスペンションなのだ。
そして,シンプルであるがために,あらゆる状況で適切に機能させるには高度なノウハウが要る。
30年間,自動車業界は1つの構造と向き合って知恵を積み重ねてきたのだ。
トーションビームはもっと評価されるべきだと思う。




最後に。

トーションビーム式の印象がイマイチよくない理由をついでに考えてみた。


真っ先に浮かんだ元凶が,先代のヴェルファイア。
「その高級車は強い」とか言っていたアレだ(お値段はそんなに高級じゃなかったんだな)。
2tの車重にトーションビーム,高級車なのにトーションビーム,4WDだろうがトーションビーム。
流石にネガを隠しきれなかったのだろう。トーションビームを合言葉に色々言われていた。
エンジニアは頑張ったのかもしれないが,チーム内のどこかで認識に齟齬があったのだろう。
エスクァイアもほぼ同じ状況なのにあまり言われなかったが,今更誰も気にしなかったのだろう。

正直,あのクラスに使うなら,ラテラルロッド付きのリジッドが最適だと思う。
プロボックスの後ろについているアレだ。横剛性もバッチリ,乗り心地もいい。
余計イメージ悪いかも知れないが,しょうがない,重いし室内空間は要るしじゃ他にない。
仕上がりが良ければ結果的には認めてもらえたんじゃなかろうか。


次がFN2 シビックRユーロ。
ホンダとしてはユーロとつけることで,欧州スポーツ的なしなやかさを表に出したかったのだろう。
それまでの「一般道? なにそれ?」なタイプRと一線を画す商品のつもりだったのだと思う。
が,日本ではFD2,欧州ではEP3の後継と扱われ,それらと比較されて血祭りにあげられた。
コンセプトが違うのにタイプRの名を外せなかったホンダもホンダだが,雑誌媒体も大概だ。
某有名誌など,長年ホンダを猫可愛がりしてきたと思いきや,コンセプトひとつ理解していない。
速いは正義なんて時代でもなかったろうに,バカのひとつ覚えのようにサーキットサーキット。
サスペンションの方向性が違う上に,そもそもエンジンとタイヤが別次元だ。勝てるわけがない。
ホンダのタイプRに退化は許されない。FN2はFD2に勝てなかった。これは退化だ……。
その原因として槍玉に挙げられたのが「トーションビームになった…」。風評被害もいいとこだ。
FK2がわざわざトーションビームでニュルに挑んだのは,この時の意趣返しかと勘ぐってしまう。

今でも見れるのかは分からないが,FN2の公式サイト,私は意外と好きだった。
当時まだガチガチのサスに乗っていたが,こういうのもありだなぁと思いながら見ていた。
コンセプトは悪くなかったんだと思う。実際にどうだったのかはともかくとして。
こういう例を見ると,売り出し方って難しいなぁと思う。


文字で書かれたスペックだけで自動車を語るのは素人だと思う。
やるなら物理法則に則って突き詰めていくべきである。
でなきゃ乗ってみて感覚で判断するか,そのどちらかだ。
先入観って怖いね。






カテゴリが手薄なので書いてみたら予想外の長文になった(汗)。
Posted at 2017/06/09 17:19:10 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ

プロフィール

「ノーブレーキどころかフル加速で信号無視して側突はさすがに草も生えない。どこを見ていたというのか。」
何シテル?   08/28 21:29
人生うまく行かないことばかり。 エコカーで非エコ運動して鬱憤発散。 GANREFはじめました https://ganref.jp/m/h-kata_l...
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