2011年10月30日
走る楽しさの本質を教えてくれる
だから、いつの時代も輝いている
スポーツセダンのパワートレーン・レイアウトは、やはりフロント搭載エンジン(できればフロントミッドシップ)の後輪駆動またはFRベースの4WDというのが妥当なところであろう。以前にホンダがインスパイアで採用した縦置きフロントミッドシップ(とホンダが称していた)のFFというのは少し凝り過ぎたレイアウトといえる。FFではそもそも前後の重量配分を50:50に近づけることと、駆動輪のトラクションを確保することは両立することが難しいのである。このレイアウトはやがて消えていったことやその後に同社がリアミッドシップのNSXやFR仕様のS2000を出していることをからも、同社が上記の問題を身銭を切って学んだということではなかろうか。
FR搭載であれば、前後の重量配分やヨー慣性からは、フロントミッドシップに軽いエンジンを搭載することが望ましい。理論的にはヨー慣性値が小さいほど曲がりやすく運動性能的には高くなる。エンジンや搭乗者、燃料タンクなど重量物を重心に近いところ(ホィールベースの中心辺り)に配置することで、このヨー慣性を小さくすることができる。
例えばエンジンが重くて重量配分が前側に偏っている場合など、燃料タンクをリアのトランク下に配置すれば重量配分的には改善できるが(少なくとも満タン時は)、ヨー慣性(垂直軸回りの慣性モーメント)は大きくなってしまう。
本質的には、エンジンを軽くしてフロントタイヤの中心からのオーバーハングを減らすことが必要なのである。1994年からスタートしたJTCCツーリングカーレース用のFF車両がエンジンをフロントタイヤよりリア側に置くフロントミッドシップ・レイアウトをこぞって採用した理由もここにある。それでもFFであるためフロントタイヤのトラクションを稼ぐために重量配分はフロントを60%程度に抑えて妥協している。FF車ではこれ以上フロント荷重を減らすとタイヤがスリップして、加速時の加重移動によりコーナー立ち上がりの加速が悪くなるのである。
リア駆動であれば前輪は操舵に、後輪は駆動に役割を分担できるため、フロントの荷重分担は40~50%程度に抑えたい。リアミッドシップ車でも後輪荷重分担は60%以下に抑えたいところだ。
加速時は荷重が後ろ側に移動するため後輪駆動が有利である。これに対して前輪駆動では、駆動輪の荷重が減ってトラクションが減少する。
それではブレーキ時はどうか。もともと後輪荷重の大きいリアミッドシップはブレーキ時にフロントに荷重が移動し、前後輪の荷重分担が平準化されてこの点で有利である。前輪荷重のもともと大きいFF車は、ブレーキ時はますます前輪の負担が大きくなって不利である。
サイズが同じであれば、タイヤ1輪あたりの発生できる摩擦力は一定であるので4輪とも同じだけの荷重がかかるのが理想的なのである。
このように考えてくると、理想的なスポーツセダン像が具体的に浮かんでくるであろう。即ち、
・全長は4.5~4.6m程度、ホィールベースは2.6~2.7m以内
・エンジンはフロントミッドに搭載し、駆動はFRもしくはFRベース4WD(エンジンの出力に応じて選択)
・燃料タンクはリアシート下配置
・前後のオーバーハングは極力短く
・バッテリーなどの重量物はフロントタイヤ後ろ、リアシート下などに配置
そして開発する上で大切なことはスーパー耐久(N1)のような、市販車の性能がそのままレースでの成績に直結するカテゴリーに挑み続けることである。動性能の3要素を高い次元でバランスさせることを常に要求され、それを開発に反映し続けることでクルマトータルの性能が磨かれていくのである。
これからの時代は電気自動車やハイブリッドカーが世間の注目を集めるようになっても、まだ当分の間は内燃機関が主流の座を守っていくに違いない。例え、電気自動車やハイブリッドカーが主流になったとしても自動車が個人の移動手段である限り、意のままに走る楽しさが求められなくなることはない。そして、運動性能を追求していくのであれば、例えエンジンはモーターに、ガソリンがバッテリーに替わろうともクルマ作りの基本は何も変わることはないのである。新しい時代でもGT-Rが存在し、輝き続けることはできるのである。
RB26DETTの真実 終了
Posted at 2011/10/30 08:40:23 | |
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R32 | クルマ