• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2013年04月25日

陸の快速帆船 プリンス・クリッパー

プリンスクリッパーの楕円グリルが「気になる」人は多いと思います。

飛騨生コン歴史資料館展示車

楕円グリルといえばBuickのコンセプトカー、Le Sabreなど、ごく少数の例があるにせよ、何物にも似ていない個性的な顔つきが生まれたルーツがどこにあったのか、長年の謎でした。

今回雑誌の連載では「飛行機屋が生んだジェット時代のマイクロバス」としてクリッパーを取り上げています。かつてなく長い時間この顔に向き合った中で「これだ!」と、一つの結論に達しました。誌面でも紹介しましたが、ここで少し補足しておきます。


世界初のジェット旅客機、デ・ハビランドDH.106 コメット (1949年初飛行)

ボーイングやダグラスなどのアメリカ勢とは違い、イギリス製の旅客機です。デザイン画から抜け出してきたような美しい飛行機。主翼の付け根にマウントされたエンジンや段差のない鼻先のスマートさなど、近未来的な魅力があって好きな機体です。

特徴的なジェットエンジンの空気取入口、クリッパーにはこの影響があると思われます。

飛行機のデザインをカーデザインのアイデアとするのは、1949年のフォードのグリルやキャデラックのテールフィンのように、戦後の大きなトレンドでもありました。

あまり知られていませんが、初代クラウンの「逆さブラジャー」グリルもコメットの楕円形の空気取入口をヒントにデザインされています。

昭和27年、BOAC所属機が羽田空港へ初飛来。翌年にはロンドン-東京間の定期便が就航しています。

>占領下で航空機開発の一切を禁じられ、ジェット時代の到来に為す術もなく航空分野から
>離れていた日本の旧航空技術者達は、コメットの銀翼と快音に切歯扼腕したという。

wikipediaより

世界初の快挙と羽田飛来時のインパクト、そしてその後の悲運については、子供の頃に図鑑巻末のモノクロページを夢中になって読んだ記憶があります。

プリンス自動車に移った立川、中島系のスタッフや、クリッパーの組立に関わった昭和飛行機の元航空技術者もコメットの先進的な姿を目にしたことでしょう。クリッパーのミステリアスな楕円グリルには、アメ車的なスピードへのロマンというよりも、翼をもがれた飛行機屋の無念を感じてしまいます。

結局、現在に至るまで国産の大型ジェット旅客機は生まれることはありませんでした。
(小型機では三菱重工のMU300やホンダジェット、ほかに自衛隊の輸送機C-1、哨戒機P-1など、ジェット機自体はいくつかあり、三菱重工がMRJを開発中)

コメットは、日本航空も発注を行いました。デ・ハビランドの輸入代理店は、なんとコーンズ。イギリスですからね!

しかし栄光の時は連続墜落事故によって悲劇に変わります。

高高度を飛ぶ全室与圧キャビンの金属疲労、という当時としては未知の原因により、2度(もしくは3度)の空中分解事故が起こりました。ここで、日航機の発注もキャンセルされてしまいました。
(詳しくはwikipediaコメット連続墜落事故などをご覧ください。)

対策型のコメット Mk. IIIおよびMk.IVはイメージの悪さとライバル勢の台頭によりセールスが振るわず、メーカーのデ・ハビランド自体が買収されてしまいます。

改装型の対潜哨戒機・電子戦機HS.801 ニムロッドがつい最近まで現役だったことを思うと、基本設計自体は悪くなかったのでしょう。

新技術における未知の欠陥を見つける難しさを痛感します。現在飛行停止中のボーイング787のリチウムイオンバッテリーのトラブルが予想以上に長引いているのも、想定外を想定する、という過去の教訓が生きているはずです。

追記)かつて存在したパンアメリカン航空の機体には「クリッパー・アメリカ」などの愛称名「クリッパー・ネーム」が付けられていました。これは同社が戦前に長距離航路をマーチンM130飛行艇などで運行していた名残り。つくづく飛行機に縁のあるクルマだと思います。
ブログ一覧 | デザイン | クルマ
Posted at 2013/04/25 18:38:00

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

G.W中の...。
138タワー観光さん

プチドライブ後は、たこ焼きを❢
ブクチャンさん

BH5旅行記2日目(群馬県吾妻郡〜 ...
BNR32とBMWな人さん

芝桜
THE TALLさん

大雨でした 用水堀掃除 除草剤散布 ...
urutora368さん

🔥リピ番123,123km&煉獄 ...
kentacさん

この記事へのコメント

2013年5月3日 23:27
お疲れさまです。
有鉛の記事、興味深く拝読させて頂きました。

クリッパーの楕円グリルのデザインのルーツは
ジェット機のエアインテークにあったのですね。

後に楕円の中に”プロペラ”が入ったことも
航空機との関連性を想起させるに充分です。

1950年代の航空機をモチーフにした自動車デザインとなると
もっぱら翼(フィン)に目が行きがちですが、中島出身者からすれば
自分達が手掛けていた時代と大きく変わった翼(後退翼)よりも
変化の少ないエンジンのインテークの方が馴染みやすかったかも知れませんね。
コメントへの返答
2013年5月6日 20:52
おそれいります。

近年でいえばホンダNSXがF16戦闘機キャノピーをモチーフにしていたり、スピード感の演出に航空機を使うのは永遠のテーマなのでしょう。

プロペラといえば49年のフォードが51年のマイナーチェンジで双発機になったのも面白いと思います。トヨペットマスターあたりにも影響が見えますね。

金網然としたグリルから、1950年代の"bar and teeth"デザインへ発展を見ると、さらに大きな転換点だったとも言えそうです。

そう思って先代のAKTGトラックを見ると、グリルが複葉機っぽく見える気もします。とはいえ、これは考えすぎかもしれません。

プロフィール

inQueです。とある車雑誌でライターのようなことをしてます。 BLOGでは、調査ついでに脱線してつい深入りしてしまったことや、調査中のことなど、活字にす...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/5 >>

    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

リンク・クリップ

驚きの大発見!!・・・☆祝アクセスカウンター190000ヒット☆ 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2018/04/01 18:20:05
淡路ロータリーミーティング見学 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2018/02/06 22:59:15
デイライトを自作してみよう!(;`д´)ノ ヌヲー!(④ヒートプレス本番!) 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2015/11/28 01:10:57

愛車一覧

ホンダ スーパーカブ C100 ホンダ スーパーカブ C100
昭和38年製の初代スーパーカブ 2016.10公道デビュー
マツダ ルーチェ マツダ ルーチェ
昭和52年式マツダ ルーチェレガート。ボディカラーはテーマ色のスプレンダーパープルメタリ ...
スズキ アドレスV100 スズキ アドレスV100
中央観光バス仕様の通勤快特号。

過去のブログ

2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation