
ブックオフに引き取ってもらおうかと思っていた古い文庫本を読み返していたら、思いがけずにルノー車が出てきた。
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その家の裏手に、濃いグレイのルノーサンクが駐められていた。ハンカチと共につかんでいたバッグから、女はキィをとり出し、運転席のロックを解いた。
素早い身ごなしでハンドルの前にすわる。助手席にバッグを置き、イグニションキィをさしこむと、女はハンドルの上に両手をのせた。
フロントガラスごしに、一家とその親族が悲しみから深いあきらめに気持ちを整理すべく入っていった家をみつめた。
そこには、女にも強い、忘れがたい思い出があるようだった。
抑えこんでいたものが切れた。女はハンドルの上に顔を伏せた。肩が激しく震える。
そうして長い間、女は泣きつづけた。
やがて顔を上げた。ルームミラーを自分に向け、ハンカチで目をぬぐう。唇をかみしめ、イグニション回した。
(大沢在昌「シャドウゲーム」)
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サンク、よく似合っている。だからハードボイルドになるのかも知れない。クリオでもまぁ悪くないか。
これがルーテシアになると…微妙なところかも。ちょっとフワッとしたネーミングで、悪く言えば締まりがないような。
乗り手がこんなのだから、別にいいんだけどさ。

Posted at 2012/06/09 01:18:17 | |
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