
初秋のある日のこと、私たち山仲間一行は
上越国境
谷川連峰を越えて、目的の小屋に
向かっていた。
山の稜線は時折ガスがかかり、肌寒い風が
吹いていたもの、正午前後には一時視界も
ひらけて、稜線の紅葉がはじまった秋山の
風景が展開していた。秋の山特有の優しい
斜光線を浴びながら、縦走路を辿ってゆく。
上越国境には、
中部山岳のような立派な営業小屋がほとんど無いため
何日か山を渡り歩くには、寝具や食料などの生活品をすべて背負って
の登山になる。だが、この不便さを求めて入山する人たちもいるのだ。
私たちも、そんな
大バカ軍団である(笑)
一行の中には、本格的な登山が始めてという初心者が含めれていた。
多少の遅れはあったが、彼らの頑張りで、何とか予定通りの行程を
こなし、ガスで視界のきかない山頂に未練を残しながら、目的の
小屋へ急いだ。
「お~い、見えたぞぉ~、もうすこしだぁ、頑張れよ~」
待ちに待った山小屋の屋根が、ガスの中にぼんやりと見えて、俄然
足取りも軽くなる。16時過ぎ、一行は全員無事に小屋に到着した。
山小屋といっても、電気、ガス、水など一切の高熱の恩恵も得ること
のない無人の
避難小屋である。
しかし、私たちのような好き物大バカ連中には、
黄金の御殿なのだ。
テントと違い、冬場の風雪に耐える頑丈な その造りは有難いほどの
非日常空間を提供してくれる。
扉を開けて、うす暗い内部に入る。ドッカと大きな荷物を降し、板の間に大の字になる。
起き上がると、何だか体重が半分になったような開放感・・・まずは至福の一服に酔う。
「ふィ~ やったな! お疲れぇ~」「あ~お疲れさん!」
「途中は、もうダメかと思いましたよ~」
「いや~初めてにしちゃ、たいしたもんだよ」
「さ、今夜は、愉しい宴会だぜ・・・準備、準備(笑)」
「その前に、そりあえず、乾杯しよっか・・・ビール運搬係りは誰だっけ?」
はずむ会話に、疲労感も吹き飛ぶというものだ。苦労も喜びも共にしてきた
仲間同士、山の中に入ると友情が近づくのか、ぼくらは、むき出しに談笑する。
幸い、私たち以外に小屋の利用者はなく、貸切状態での宿泊だ。これで心おきなく
宴会ができるというものだ。何とも言えないくすぐったい嬉しさがこみ上げてくる。
すっかり日が落ちた夕闇。あたりは一面にガスが立ち込めて、
ヘッドランプなしでは
歩けないほど視界の悪い夜を迎えていた。しかし、風は収まりシンと静まりかえった
山中、幾つかの
ガスランタンの灯し火が煌々とつけられた山小屋の一夜を迎えていた。
(次のブログに続く)
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Posted at
2006/04/17 17:03:16