こちらの続きです
山岳道路で遭遇する濃霧も怖いが、登山でしばしば体験
する悪天候による濃霧(ガス)は、数メートル先すら見えず
いわゆるホワイトアウト状態になる。
(↑豪雪地帯の春山 越後山脈にて)
こうなると周囲の地形はおろか、 これから行くべき方向を勘だけで判断するのは容易でない。 特につぎの峰に向かうべく漫然と尾根を下っているとき、積雪地形の罠に陥ることがあるのである。GPS機器とて、局所的な地形判断には万能とはいえない。
山脈上の山々を次々に越えてゆく縦走ルート。足元もよく見えず、おぼつかないような悪天候のガスの中をさまよう。幾つかのピークを越えながら、濃霧で真っ白な視界の雪堤尾根を下っていたときのことである。尾根の横、足元の下に連続する雪堤の壁を恐る恐るのぞきこんで見ても底知れぬ深みを感じるだけだ。ガスの底に消える雪壁の斜面は下方の谷へ落ち込んでいる。だから、尾根の端はあまり歩く気がしないというものだ。
尾根の傾斜が急に落ち込み、ふと高度計を見ると、山脈の尾根上とは思えない有り得ない標高値
を示していた。そういえば、残雪の上には森林限界を思わせる樹木の枝々らしきもあらわれていた。磁北と真北とのズレを考慮しても、コンパス上で判断できる進行方向は間違ってはいないはずだが山脈上を辿るルートをまるで外しているかのように、何故こんなに標高値が下っているのだろうか。
地形図コンパス高度計などを照らし合わせ現在地を確認していたつもりだったが・・・ 視界の悪さと
距離感の欠如、そこからくる疲労感のせいだろう、注意力が落ちていたのかもしれない。パーティーの全員が『これは、何かおかしい・・・』と感じていた。 しかし、途中で枝尾根に下り入った覚えは全くなかった。しかし、この高度計の値は、山脈縦走の正規ルートから外れてしまっている。山の中腹に向けて下り続けていること以外は考えられないものだった。 しかも、ここから先の尾根斜面は、急激に落ち込んでいるようだ。
「こりゃ下りすぎだ、上へ引き返そう」ということになった。 尾根が分かれた気配も感じず、雪堤地形に沿って一本調子で下ってきただけに、全員、意気消沈ぎみだ。
もう一度地形図を確認しながら怪しいと思われる場所まで登り返した。間違ったとしたら高度計から逆算すると、この地点だろうと思われたからだ。しかし、雪堤地形は途絶えることなく続いていた。
足元の下に見える雪の壁を見下ろすが、ガスの底に消え見当もつかない。「ほんとにココか?」確信ないまま時間が過ぎる・・・ すると、谷底に吹き降ろす冷たい風が周囲のガスを飛ばし一瞬だけ視界が明るくなった。「真下に(稜線の)コル
(※)が見えるぞ!」と雄叫び。やはり、そうだったのか・・・
真横に落ち込んでいる雪堤の壁を数十メートル急降下したところに、つぎなるピークへと連なる目的の主稜線(山脈の尾根)が並走して続いていたのだ。幸いなこと、あれほど深かったガスがどんどん晴れ上がり周囲の山肌さえ見えはじめていた。ルートファイディングの間違いをここで確信した瞬間だった。気が付かなければ、さらに枝尾根を下り、中腹の森林帯へと急降下しかけていただろう。
では、どのようなケースだったのか・・・
実際の山脈では、 山と山とを結ぶ尾根の接続の向きが局所的にはズレていることがあり、必ずしも雪堤の連続する尾根が、山脈が連続する尾根方向とは限らなかった。
視界不良時の雪堤尾根下りという条件下、 豪雪地帯の春山特有の積雪地形に、 悔しいけれどまた騙された。山々を見晴せる視界良好条件だったなら、難なく地形を把握して躊躇なく雪堤壁を下っていたはずだった。『失敗は成功のもと』だと気を取りなおし、つぎのピークを目指して私たちは雪堤壁を下ったのだった。(完)(^^ゞナンチャッテ昔話
(※)登山用語のコルとは、鞍部とも言う。ピークとピークを結ぶ尾根が凹んだところを指す。
山脈の尾根をコルまで下り、コルから次のピークへ登り返す。という表現になる。
Posted at 2010/05/05 14:38:43 | |
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