
『ゴ~~~~~~~~』
ヤミ鍋を温める
ガスコンロ
の炎の音。その音に安堵感を覚えつつ、ランタンの
下に集い、大きな鍋を囲み、酒と肴をともにしながら
絶えることのない談笑が続いた。今日一日の失敗談、
昔話やら、次の山はどこがいいか?など、たわいも
ない話で盛り上がる。
笑いのたびに、仲間たちの影が小屋の壁に ゆらめく。
アルコールもほどよく回ってきた。
今日一日の疲れが出てくる頃。やがて、一人二人と倒れて
シュラフ(寝袋)に収まってゆく。
私とK君が最後まで起きていたが、寝不足は明日以降の登山に響くので、よろしくない。
名残惜しい宴会の余韻・・・他のメンバーは、すでに高イビキを上げている。
「だいぶ冷えてきたね・・・さて、そろそろ、寝ますかい」
「だね、ひさびさに、たのしい夜だったな」
だいぶロレツが回らなくなってきたようだ(笑)
背筋に寒さを覚え、時計を見ると23時を回っている。
「じゃ、寝る前にトイレ・・・(笑)」「あ、そだね(笑)」
トイレは屋外に設置されているので、いったん靴を履いて小屋を出る必要がある。
と、そのときであった・・・
『・・・ドス・・・ドス・・・ズン、ズン・・・』
かすかに
登山靴特有の重々しい足跡、しかも、一人ではなく何人かのパーティーの
ような感じである。
「・・・***・・・+++・・XXX・・・」
よく聞き取れないが、複数の人の会話らしきが聞こえた。
「何だよ、こんな時間に到着かよ・・・」
「まいったなぁ・・・スペース空けなきゃ」
板の間に所狭しと散らかった食料や装備品を、彼らのために どかす必要がある。
私たちだけの小屋ではないのだから、当然のこととはいえ、こんな時間に到着
するなんて、予想外のことである。
それから5分以上 過ぎただろうか・・・
いっこうに、誰も小屋の中に入ってこない。
「あれ? どうしたんだ?・・・」
二人は顔を見合わせた・・・いくらなんでも、こんな深夜に、小屋を素通りするとは
考えにくい。どうしたのだろうか?
「おい、確かに聞こえたよな?」
「ああ、聞こえたとも・・・」
急に背筋に悪寒が走った。もしや、この世のモノでは、ないのか?
「うおィ~ こりゃ、ヤバイぞ」
「どうすっか、トイレ・・・」
「我慢できねぇ・・・行くしかあんめぇよ」
「ちょ、ちょっと待てぃ、この山域はよぉ、
遭難で死んだ人の魂がよぉ、いっぱい
漂っているんだからよぉ・・・一人で行っちゃぁ、ヤバイぞ」
「じゃ、ここでヤルかい」「じょ、冗談よしこさんだよ」「じゃ、いっしょにな」
「い、行くのかよぉ・・・オレは我慢できる・・・」
なんだかんだと言いながら、ついに二人は勇気を出して小屋の外へ出ることにした。
「おい、おまえが先に行けよ」「じょ、じょうじゃんじゃない(口が回っていない)」
恐る恐る小屋の扉を開けようとした、その瞬間!『バタン!』(扉が開く)
「ぐぁわぁ~!」「うヒぇ~、に、にげれぇ~」
二人は思わず、後ずさり・・・しかし、それっきり、何事も起きなかった。
ただの通り風が吹いたのだ。
「脅かすな! こんにゃろめ」
外は足元すら見えないような濃霧が吹き付けているだけで、人の気配は全くない。
二人は無事に用を済ませ、一目散に小屋の中へ逃げ帰ったのは、言うまでもない。
すでに寝静まった仲間たちの寝息とイビキが、灯りの消された暗闇に響いているだけだ。
二人が聞いたあの靴音と会話らしき声の主は、いったい、なんだったのだろうか・・・?
~物語おしまい~
大変、お粗末さまですた(。。;
Posted at 2006/04/17 17:15:44 | |
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