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イイね!
2013年10月09日

荒井由美の「ひこうき雲」が魅力的な理由

宮崎アニメ「風立ちぬ」で使われている荒井由美の「ひこうき雲」。改めて聴くと、いい曲だけど何か不思議な感じがする曲です。どうしてなのかを、ちょっと考えてみました。

あまり音楽に詳しいわけじゃないんですが、できるだけ分かり易く説明したいと思います。


(1)長調と短調との部分転調を頻繁に繰り返す
これメロディーだけを見ると、変ホ長調のものすごくシンプルなものなんです。でも伴奏の和音が、変ホ長調とハ短調の間を行ったり来たりしているんです。

変ホ長調とハ短調は、「平行調」の関係にあるんで、使う単音の種類は基本的に同じなんです。なのでメロディは自然な感じなんですが、和音によって暗くなったり明るくなったりという、ちょっと不安定なゆらぎを感じさせるわけです。


(2)サビの前半でハ短調に部分転調
サビの「そら~に~あ、こ、がれて~」の、「こ、がれて~」の部分で変ホ長調から平行調のハ短調に転調してます。盛り上がるはずのサビで短調を使うと、曲が切ない感じになります。


(3)サビの後半で変イ長調に部分転調
サビの「そら~を~か、け、て、ゆく~」の、「け、て、ゆく~」の部分で変ホ長調から4度上の変イ長調に転調してます。それまで暗かったり明るかったりという不安定さは消え、ここで一気に明るく、力強くなります。それが爽快感を与えるような気がします。


(4)メジャーセブンス、マイナーセブンスの多用
この曲ではメジャーセンブンスやマイナーセブンスという幻想的な響きのある和音が多用されています。これらの和音を使うと、調性が若干曖昧なフワッとした感じになります。

このように、(1)と(4)を使う事によって、単純に明るいとも暗いともいえず、調性も不安定な浮遊感のある感じの曲にしているわけです。

(「そら~に~あ、こ、がれて~」の後がマイナーセブンス、「そら~を~か、け、て、ゆく~」の後がメジャーセンブンスの響きです。)


(5)サビの後をドミナントセブンスで盛り上げる
ドミナントセブンスの和音は、分かり易く例を挙げると、小学校の音楽の授業でよくある、「起立、礼、着席」の、「礼」の和音です。聴けば分かりますが、この「礼」の和音が出たら、「着席」の主和音に戻るのが普通です。

この曲の4回繰り替えされるサビ、、「あのこおの~いのちいは~ひこおきぐも~」の後がドミナントセブンスなんですが、これで盛り上がるかと思いきや、2回目までは静かな冒頭のメロディに戻ってしまい、満たされない感じが残ります。しかし3回目のサビでは、そのまま盛り上がり4回目のサビへと繋がり、ここで爽快感を感じるわけです。


(6)最後は明るい長調に転調して終わる
この曲が気持ちいいのは、最初は明るいのか暗いのか分からないあいまいな感じで始まりながらも、最後に、はっきりと明るい曲調で終わっている所です。
4回目のサビの最後の歌詞、「ひこお~き、ぐ~も~」の「も~」の部分で変イ長調になります。

あれれ、始まりは変ホ長調なのに、最後は変イ長調になって戻ってこないのか、って思いますよね。

実はこれ、よく考えてあって、細かく見ると、変イ長調と変ホ長調の繰り返しで曲をフェードアウトさせてるんです。「フウ、フ、フ~」と繰り返されるスキャットの部分です。付けられている和音によって変イ長調→変ホ長調→変イ長調と部分転調していると解釈できます。でもメロディーは共通の音を使っているので、全然不自然に感じないんです。(注)


(7)荒井由美の独特な歌唱
荒井由美の独特な歌唱、ちょっとフラット気味に入って、シャープ気味になるとか、テンポをずらし溜め気味に遅れて入るとか、音程が揺らぐとか、極端に音量を変えるとか、スタッカートの使用などが、この曲を印象深く、ドラマチックなものにしていると思います。


以上、書き連ねてみましたが、ユーミンの巧みさが光った曲です。もしこれを直感だけで作ったとしたら、天才かもしれません。あるいは、考えながら作ったとしても、「あの子は飛行機雲になっちゃったけど、実は幸せ」という歌詞内容を表現した、暗いとも明るいとも断定できない曲調は見事だと思います。

------------------------------------------------

注)
もちろん、キーが変イ長調(A♭)に転調したままでおしまいという解釈もありますし、これをカバーした曲で、例えばキーが同じならA♭△で終えているものも多いです。Ⅰ(トニック)→Ⅱを繰り返し、Ⅰ(トニック)で終わるわけです。

でもここは、あえて途中まで調をどっちつかずにしていると解釈してみます。
「フウ、フ、フー」のところの和声を取り出すと、B♭m7→A♭△→B♭m7 となります。キーE♭のⅣ(サブドミナント)→キーA♭のⅡと解釈できます。

さらに終わり近く、B♭m7の和音が鳴っている時にピアノの音で、キーE♭のⅡ(F)とⅤ(B♭)の音が繰り返し表れます。この音は和音Ⅴ7の構成音なので、キーE♭のⅠへ向かおうとする力が発生します。

ですので、A♭△→B♭m7→E♭△7で終わらせるのもいいし、A♭△→E♭△7というのもいいような気がします。 

また、A♭△→B♭m7→Gm7というように、Ⅲ(Gm7)で終わらせるのもしっくり来るように思えます。そして、この次にⅠ(E♭△やE△7)を続けてきちんと終わらせるのも、またいいかもしれません。

(Ⅲで曲を終わらせる例としては、ビートルズの「アスク・ミー・ホワイ」があります。)
ブログ一覧 | 音楽 | 日記
Posted at 2013/10/09 14:06:30

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この記事へのコメント

2013年10月9日 22:22
一気に読んでしまいました。 このように分析力があると 違う面が顔を出してくるのですね♪ ただただびっくりと感心してしまいました。

初めて荒井由美を見たのは 五輪真弓の前座でした。

ガチガチで ピアノも ガタガタで あの歌声で 下手だなぁ って 思いましたが 宇宙人的凄さが溢れてたのを思い出しました。

ありがとうございました。
コメントへの返答
2013年10月10日 9:09
Morowaruさん、コメント有難うございます。

荒井由美が前座だった時のコンサートを見られたんですか? すごい貴重な体験ですね!

自分は松任谷由実を「守ってあげたい」を聴いて初めて知ったので、作曲が上手い、エンターテナーというイメージを持ってました。

でも「ひこうき雲」のオリジナルを今回、初めて聴いて、何度も感動してしまったので(^^; 、その理由を探ってしまいました。

荒井由美の動画とかを見ると、確かに神がかったような凄さがありますよね。

拙い長文を読んで下さって有難うございました。(^^)

   
2013年10月9日 23:24
こんばんは~!

音楽のコードの名前はホント
わかりませんが、あの方の
曲でいいなっ!って思うのは
鍵盤の ミ、シの斜め左上の
黒いところ(笑)を
上手に使っている曲かなと思います。

恥ずかしい私見ですが(^o^)
コメントへの返答
2013年10月10日 9:26
めんめさん、おはようございます。(^^)

私も弾ける楽器がギターしかないので、ギター目線での解説になってしまいました。(^^;

この曲で、ミ♭だと、「そら~に~あ、こ、がれて~」の「こ」の部分、シ♭だと、最後の「そら~を~か、け~、て~、ゆくうう~」の「け~」の部分に出てきますよね。
どちらも印象的です。

荒井由美、ユーミンの曲を改めて聴き直したいなあ、なんて思います。(^^)
2013年10月10日 1:05
こんばんは!
ひーたん92さんは音楽の先生?これは凄い分析ですね。
聴くのは好きですが演奏はさっぱりなので、書かれていることの半分も分かりませんでした(^^;)

でもなるほど、そういえばなぜこの人の曲が昔から耳に残るのか、その理由が何となく分かった気がします。
殆どビブラートの無い歌い方でさらりと聴かせるのかと思いきや、凝った仕掛けがあったわけですね。
コメントへの返答
2013年10月10日 9:38
sonusさん、おはようございます。(^^)

いえいえ、ただの凡人です。(^^;

分かりにくくて、御免なさいです。m(_ _)m
専門用語をできるだけ使わないで分かり易くとは思ったんですが、難しいものですねえ。

1973年の日本のポップスでこんな曲を作ったのは凄いと思います。凝った仕掛けで、ヘタウマのような大胆な歌い方をしてますもんね。(^^)

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何シテル?   07/27 19:28
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