音楽ネタです。以前、
荒井由美の「ひこうき雲」の魅力について書きましたが、同じように転調が大きな効果をあげているポップな曲として、ビートルズの「恋におちたら」( IF I FELL )について書いてみたいと思います。
歌詞の内容は、「もし僕が君を愛したら、どうか彼女のように俺のプライドを傷つけないでくれ。なぜってその痛みに僕は耐えられないから」という、珍しく、傷つき易い男の純愛を歌ったものです。
この曲の構造は次のようになっています。
導入部→Aメロ→ Aメロ→Bメロ→ Aメロ→Bメロ→ Aメロ→終結部
歌詞の内容と併せてこの曲をおおざっぱに見ると、導入部が「純情男の独り言」、Aメロが「君を愛してるんだよ~」という必死のアピール、Bメロが「この恋が実らなかったら悲しいよ~」という嘆き、みたいな感じです(笑)。
自然な感じに聴こえるけど、異様に長い「導入部」の複雑な転調が特徴的な曲です。そしてその後には非常に美しいハーモニーが続いていきます。
面白いことに、この曲にはサビにあたるようなものがありません( ただし、上に書いたBメロをサビとする解釈も可能です )。ですから一見、盛り上がりが無く、だらだらと曲が続いていくようにも感じられるかもしれません。
でもポップスやロックでサビの無い曲なんて、非常に珍しいと思います。さらにボーカルは、和声から独立したメロディーと言うより、和音の進行に伴ってハモっているだけの様な感じです。
転調しながらずっと続くような感じのこの曲は、リードをとっているジョン・レノンの発案でしょう。もしポールが手伝ったとしたらBメロの部分ではないでしょうか。ポール・マッカートニーは美しいヒット曲を書きますが、あくまで常識の範囲に留まっているのに対して、ジョンは他の曲でも驚くようなことをいろいろ試しています。
この曲の導入部(イントロ)は、歌い始めの出だし部分を除いて8小節あります。ここでは和音が半音づつ下がっていきます。基本は変ニ長調がベースであるようですが、非常に面白い試みです(注)。そしてAメロの始まる前に、半音上のニ長調に転調します(動画の12秒)。
Aメロ(動画の20秒から)はニ長調が続いた後、ホ短調(ト長調の平行調)に部分転調し暗くなり(動画の24秒)、またニ長調に戻ります(動画の26秒)。
Bメロ(動画の1分ちょうどから)では今度は4度上のト長調への転調で、これはよく使われる自然な転調です。そして途中でト短調に転調し、ちょっと暗い感じになり(動画の1分5秒)、またニ長調に転調して(動画の1分11秒)、Aメロに続きます。
最後の終結部は、いわゆる代理コードを使っているのですが、厳密に言うと、ニ長調からニ短調に部分転調し再びニ長調に転調して終わっています。
上に挙げた数々の転調も、細かく見るとちゃんと歌詞の内容に合わせているのが分かると思います。
それにしても、どこからこんな発想が降ってきたのか不思議な曲です。それがジョンの天才たる所以なのかもしれません。(^^)
注)
最初の8小節はこうなってます。
E♭→D→D♭→B♭m7(D♭のⅥ)
E♭m(D♭のⅡ)→D→Em7(DのⅡ)→A7(DのⅤ)
(一解釈ですが、少なくとも3回転調しているような感じです。)
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Posted at
2013/12/24 13:27:07