親父のクルマ

あまり、ガラでもないが。



年末、１年半の闘病の末、親父があの世に旅立った。


そして、その通夜の早朝、オイラのクルマは実家で盗まれた。

状況は、こう。

親父は、通夜まで自宅に居てもらい、通夜の日の昼に葬儀会場に移動してもらう予定だった。
通夜の前夜、「最後の晩だから」と、オイラは深夜に実家に泊まりに行った。
それが、午前１時。

明けて、朝の８時に自宅へ喪服を取りに帰ろうと、玄関を出たらインプが無い。
別の所に停めてたか？とも思ったが、確かにあった場所にやはり無い。

すぐに近所の駐在さんへ電話。
調書取り。

それでも、葬儀のことやら何やらで、クルマが盗まれたことは、二の次だったおかげで、
あまり・・・、いや、全く悲しさは感じなかった。

周りは、「クルマ好きのお父さんだったから、スポーツカーに乗りたくて、あの世に持っていっちゃったんだよ」とか、「あのまま、インプレッサに乗ってたら、事故をおこしたかもしれないから、お父さんが隠してくれたんだよ」とか言ってくれてた。



無事、親父も送り出して、

半月が過ぎて、

ようやく日常が帰ってきたが、やはりインプは無い。

毎日、通勤に使っていたから、イヤでも感じる。


残った親父のクルマは、ドライブ好きの親父にいつも付き合っていた母にとっても、親父の代名詞みたいなものだから、ナンバーを切って、実家の駐車場において置こうと思ってた。

そんな母が、「あのクルマ、持ってきな」と。

初めは母も、手元に親父のクルマは置いておきたかったらしい。
しかし、オイラが運転する親父のクルマに数日乗って、やはり『親父の運転しているクルマに乗っている』ように感じる事ができない、と。



今朝も親父のクルマで会社に行った。

明日も親父のクルマで会社へ行く。

来週末は親父のクルマで親戚に挨拶参りにも行かなければ。

落ち着いたら、親父のクルマで久しぶりに近場の温泉にでも行こうか。



たかが、クルマ。

されど、クルマ。



盗られたモンはしかたがないが、

・・・もう少し時と場合を選んでもらえると助かるのだが、ね。