
前回はダンパーへのこだわりについて書きました。
微少ピストンスピード領域での微妙な減衰力コントロールが「しっかりしているのにしなやか」な走り味を生んでいることがおわかりいただけたと思います。さらに、モンローのダンパーに関するもうひとつのネタとして、温度変化による粘度特性の変化が小さい特別なダンパーオイルを使っていることも付け加えておきましょう。このオイルのおかげで、気温が氷点下になるような寒い朝に走り出したときでもゴツゴツした感触にならないのだそうです。
もちろん、普通のダンパーオイルでも、走りはじめて数分も経てば特性は安定してきます。しかしスイフトスポーツの開発陣はそれを許さなかった。もちろん、スイフトスポーツのダンパーは比較的減衰力が高いため、オイルの硬さによる乗り心地への影響を体感しやすいという理由もあるでしょう。しかしそれ以上に、走り味に徹底的にこだわる開発陣の姿勢が、特別なダンパーオイルの採用につながったのです。
そんなこだわりはクルマ全体に及んでいますが、今回はパワートレーンについて書いていきましょう。1.6Lの4気筒DOHCエンジンは、型式こそ先代と同じ「M16A型」ですが、新たに可変吸気システムを採用したことに加え、吸気バルブの開閉タイミング制御とリフト量増大により、先代比+11psの136psという最高出力と、+12Nmの160Nmという最大トルクを発生します。しかも最大トルク発生回転数は400rpm下がって4400rpmになり、燃費もMT車で14.6㎞/L→15.6㎞/L、AT(CVT)車で13.6㎞/L→16.0㎞/L(いずれも(10・15モード)へと向上しました。とくにCVT車の燃費は、先代が4速ATだったこともあり18%という大幅な向上です。
実際に走ってみてもっとも変わったなと思うのがトルク特性です。可変吸気システムにより、全域で空気を効率的にシリンダー内に取り込めるようになったため、トップエンドでのパンチ力だけでなく、低中回転域でのトルクがグッと太くなっています。これにより、街中での加速でシフトダウンが求められる頻度は大幅に減りましたし、高速道路でも、たいていは6速に入れっぱなしで事足ります(※MTの場合)。もちろん、鋭いダッシュをする際にはシフトダウンをして回転数を高めてやる必要がありますが、周囲の流れに沿って走っている分には、シフト操作をかなりさぼれる=イージードライブが可能になったわけです。
低い回転域での静粛性も向上しました。新型スイフトスポーツは風音やタイヤノイズ、振動を含め、静粛性が大幅に向上していますが、エンジン音もそのうちの一つ。高速道路を使って長距離を一気に走るようなシーンでは、静かな方が快適で疲れにくいのは言うまでもありません。一方、4000rpmぐらいまで回転を上げてやると、フォォーンという快音が聞こえてきます。短時間の試乗ではとかく刺激性の高い味付けを求めてしまいがちですが、自分のクルマとして長く付き合っていくと、異なる側面も重要だと感じ始めるものです。たとえば疲れているとき。家族や友人とドライブに行くとき。長距離を走るときなど。その点、常用域での音は控えめにし、いざ積極的に回していったときだけ気持ちのいいサウンドを聴かせてくれるというスイフトスポーツの音づくりは、なかなか上手いところをついているなと思います。
トランスミッションも大きく代わりました。まずは5速から6速になったMTですが、6速のギア比を高めに設定することで、100㎞/h巡航時のエンジン回転数を従来(MC前)の3200rpmから2600rpmへと引き下げています。言うまでもなく、回転数の低下は燃費と静粛性にとって大きなメリットになります。もちろん、1-5速はクロスしているので、スポーツ走行もバッチリです。
しかし、それ以上に大きく変わったのが副変速機構の付いた新しいCVTです。従来の4速ATは5速MTと比べてギア比がかなり高めで、100㎞/h巡航時の回転数はたしか2600rpmだったと記憶しています。それを4速で「割って」いたのですから、各ギアの開きはかなり大きく、加速性能はMTと比べて大きく劣っていました。ところが新型は7速MTモード付きのCVTになり、しかもパドルシフトも加わったのです。100㎞/h巡航時のエンジン回転数はMTモードの7速で3100rpm、Dレンジでは1900rpmまで落ちます。この"変速比幅"の大きさがCVTの特徴で、またモード燃費でMTを凌ぐ理由でもあります。ここで注目して欲しいのはMTモードの超クロスレシオぶりです。3100rpmを7速で割っているということは、6速MT以上に各ギアが接近しているということ。そこに、ステアリングから手を離さずに瞬時のシフトチェンジができるパドルシフトが加わるのですから、スポーツ性の高さは先代の4速ATとは比べものになりません。さらに、ドライブモードで走っていてアクセルをバンッと踏み込んだときの鋭いキックダウンや、エンジンの回転数とリンクした自然な速度上昇など、新型スイフトスポーツのCVTには随所に走りへのこだわりが満載されています。
それでも、僕がスイフトスポーツを買うのなら、自分で操っている感覚をより強く味わえる6速MTを選びますが、CVTを選んでもスイフトスポーツらしさがさほど失われないのが新型の美点です。奥様も運転する、あるいは普段はイージードライブをしたい…そんなニーズを満たしつつ、スイフトスポーツらしいスポーティーな走りを楽しめるようになったのは、とても大きな進化だと思います。
先代はMT比率が7割だったスイフトスポーツ。しかし新型のMT比率はおそらく5割ぐらいに落ち、CVTが半分ぐらいになるのではないか? 僕はそんな予想をしています。もし試乗するなら、ぜひMTとCVTの両方を試してみることをオススメします。
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2012/01/16 15:01:57