秋夜長：寝物語を囁いて　クィンシーとハンコック

　雑踏の中に彼女を見つけた。


　紺色のセーラー服で家路を急ぐ夕暮れの街角は
　最後の待ち合わせに現れなかったその時の姿に
　思わせた。

　記憶が一気に流れを打ってつながっていった。





何十年かを経て彼女の娘は私の目の前を行き過ぎ、掻き乱し、孤独を醸し灯りをともした。






このパラドクスをどう説明しよう・・






1978年　一枚のアルバムが世に出た。　Quincy Jones / Sounds...And Stuff Like That!!




クインシーという北米黒人音楽の現代を切り取る事に長けた天才によって綴られたスコアーは
私の中の音楽をより深いものに塗り替えた。　それは営みであり機微であり悲哀であり喜びで
あった。



音楽仲間から、ベーシックトラック録音時のハービー・ハンコックのソロにストリングアレンジを
施した等、まさに驚きの一曲だった。



そして、時間は流れコンピュターを手に入れ、ネットの渦を体験し、検索の中にそのタイトルを
目にした。



Tell Me A Bedtime Story



作者はハービー・ハンコック。'69







原曲は子供向けのTV番組によせた一曲だった。



クインシーのアレンジでは大人のラウンジ的なセクシャルなイメージを抱いていたが、
原曲は骨組みのしっかりとした、後のヘッドハンターズにつながるファンク色の強い
ものだった。



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子守唄もまた、成長していたのであった。