4Catsさん(以下4氏)のクルスルートが完成したというのでお披露目をお願いした。
早朝の水元公園に集まったのは、4氏、Iさん、そして私。
特に申し合わせはなかったが、クルスルートに敬意を表し、Iさんはシマザキのレーサー、私はVitusで自走してきた。
水元公園からモンシュシュ往復のいつものコースをたどり、水元公園で解散したのは昼頃だった。
クルスルートといえば、故新田真志氏著の「美しき自転車 魔物たち」の巻頭を飾った、ルネエルスのそれが強烈な印象を残しているが、それはRDにサンプレのレコード60をおごられていることに象徴されるようにまさにスペシャル中のスペシャルであり、到底手の届かないものと思ってしまう。
そこで、魔物たちのページを少しめくると、メルシェとリロイの2台のルートが現れる。メルシェはフランス車らしい線引きモデル、リロイはプロ仕様のルートモデルとのことだが、どちらも馴染みのあるパーツが使われており、これならいつかは、と思う白板青年であった。
それでは、4氏のクルスルートを見てみよう。
フレームを手掛けたアトリエ不詳のクルスルートである。
魔物たちの新田氏の解説にもあるように、プロフェッショナル供給のフレームといえども手掛けたのが有名アトリエとは限らないのがこの世界であるから、アトリエ不詳だからといって油断はできないのである。
フレンチブルーとフォーク先のメッキが生まれ故郷をを主張している。4氏は塗り替えをされていないとのことでオリジナルの塗装なのではないだろうか。
チューブラーを履きポンプ、ボトル、サドルバッグを装備し走りへの備えも万全だ。
ステムが若干前上がりに見えるが、これについては後ほど思うところを書くことにしたい。
では、細部を見ていくことにしよう。
ヘッド部である。素敵なヘッドバッジに目が行く。赤文字で「MIGNON」と書かれている。フランスの自転車店なのだろうが詳細は不明とのことだった。この自転車に非常に似合っている。
脱線するが、「MIGNON」というと中学の英語の教科書で目隠しをしたまま床におかれた卵を踏まないようにダンスをしたというミニヨンという女性の物語を勉強した気がするのは私だけだろうか?
ラグの金線引きがこれまた時代とフレンチを象徴している。新田氏の解説をまつまでもなくこれは手作業でしかできないことなので非常に人間味を感じる仕上げである。
ヘッド小物は、EDCOの軽合ヘッドパーツだ。フォークコラムの長さがピッタリでこのヘッド小物を装着するとアウター受けを挟み込むことができずセンタープルブレーキが使用できるかどうかが最後の1ピースとなったことは、4氏のブログに詳しい。
結局、無事センタープルブレーキとして、ワイマンバンカー999 610が装着されて安全走行が確保されていた。
チドリとしてTOEIの滑車チドリを使うなど細かいところにも気を抜かない4氏である。
奥にはユーレーのWレバーが見えている。これは丸穴が2つあけられたジュビリー、サクセスの共用だった頃のWレバーで確実なシフトを狙っている。
駆動系は、フレンチの定番中の定番である49DのクランクにTAのリング(プロフェッショナル?)、FD、RDともにジュビリーである。この写真では判別は難しいがフリーは4氏お気に入りのウイナープロと思われる。チェーンはシマノHG71とのことだ。
フレンチの雰囲気を大切にしながらも走りは追求する4氏の姿勢が表れている。
フレンチのフレームなのでシートチューブ外径は28mmであり、それに対応するジュビリーのFDは新品は高価だし、程度の良いユーズドはタマが少ないのでこれも最後の1ピースに近かったのではないだろうか。
さらに細かいところになるが、写真はリアエンドである。
ユーレーのリアエンドが使われている。中央に見える黒い樹脂パーツがこのエンドのキモである。樹脂パーツ内にはメネジが切られており調整ボルトのナットの役目をしていると思われる。カンパエンドなどではエンドにメネジが切られているがユーレーエンドはエンドにはただの穴があいているだけなのだそうだ。
4氏はこの樹脂パーツがない状態で入手され、どうもおかしいと相談を受けた私とて4氏より詳しいわけもなく、このあたりの事情に詳しい友人に連絡するとユーレーのカタログのイラストが送られてきた。
それによりこの樹脂パーツの存在が明らかになったというわけだ。そこから先は、4氏の熱意とご苦労によりこのパーツの入手に至るわけだが、4氏は多くを語る方ではないので想像の域を出ないが、睡眠不足の数か月を過ごされたのではないかと思う。
また、泥除け用のアイが装備されておりそこの塗装が剥げていることからこの時代のこのフレームの使われ方がわかる。
チェーンステー、シートステーとエンドのロウ付けはパイプの内部で行われているらしく、おっと思わせる小粋な仕掛けになっていた。
写真はハンドル部である。ベルリのステムのエクステンション部に惜しげもなく穴があけられ、フロントのブレーキワイヤーが貫通している。先にも書いた、最後の1ピースの解決方法がこれだ。
当然のことながら、穴は上部と下部で穴径が違い上部の太いところでアウターを、下部の細いところでインナーをリードしていると思われる。
太いところと細いところの段差部分にバリなどの引っ掛かりがあると、見えないところでインナーを傷つけることになるのではとの私の素人考えは、機械加工のプロであるI氏によれば、加工機の刃物の先端にテーパーがついているので段差もテーパーがつくことになるので杞憂に過ぎないとのことだった。
ベルリのステムは、中堀剛氏著の「私が愛した自転車パーツ」によれば「かなりヘッドアングルの立った自転車でないとエクステンションが地面と平行にならない。攻撃的なレーサー用か」と書かれている。その書の写真と4氏使用のものではエクステンション部横の刻印の有無の違いがあり同一の議論になるかどうか詳細はわからないがそんな気がするのである。
そのような微妙な角度を持つステムにブレーキワイヤーがスムーズに通るような穴をあけるというのも口で言うのは簡単だがなかなか技術と経験が必要なことと思われ、作業されたというショップの玄さんの技術の高さが感じられる。また、玄さんに持ちこまれたとき、穴をあけて欲しいとだけのオーダーだったとのことだが完成品はピカピカに磨きこまれ、失われていたベルリのシールも貼ってあったとのことで玄さんと4氏の関係が彷彿とされるエピソードであった。
ホイールを見ていこう。
ハブは、カンパレコードのラージフランジを使用して、クラシックな雰囲気と回転のスムーズさとその持続を両立していた。
リムは、4氏や我々の友人である、じーてぃーすりー氏が提供されたという、スーパーチャンピオンのレコードである。
ホイール組は、芝のショップであるシミズさんにお願いされたとのことで、後々までくるいの出ないホイールであることが期待される。
サドル部はこうだ。
サドルは珍しいイデアルの88を使っておられた。4氏によると90番よりは少しサドル自体の高さが低くおさえられている製品とのことだった。
シートピラーは、これも珍しい2本締め方式を採用している製品で私にはわからなかったが帰ってからパーツ本を見るとユーレーのピラーが同じような機構を持っているのでその流れをくむものかもしれない。
ポンプはADHOCで、ポンプ傘はどうやらゼファールのものではないかと思われ、これも私には珍しいものだった。
こういう細部へのこだわりが積み重なって全体のバランスとなってくるので、4氏の愛車は皆、全くスキのない仕上がりになっており見るものにため息をつかせるのだった。
以上、4Cats氏には今まで私の自転車を素晴らしい筆致で紹介していただいたので、今度は自分の番であるとがんばって書いてみたが、いかんせん知識が乏しくおそらくは間違いが多いのではないかと思う。
4Catsさん、間違いがあったらすいません。
今後私もVitusをフレンチ、軽量をテーマに着せ替えを行おうともくろんでいるのでお力添えをお願いいたします!!