
おとといに続き、"ステラ"ネタをもう一丁!
ステラに搭載されるCVTが、新開発のものだということなんです。どんな仕上がりになっているか、まだ乗っていないので非常に気になるところなんですが、今日はそのことより、
富士重工がコンポーネント事業としてCVTに興味をもっていることについて書いてみたいと思います。
あまり知られていないことながら、
富士重工は世界で初めてCVTを実用化した会社です。
今ではコンパクトカーの主流と言われているCVTを実用化したんだから、本当に偉大ですね。
ただこの実用化ってのがミソで、
イタリアの "ヴァンドゥーネ" が持っていたパテントを買って、なんとか作り上げたのが富士重工だったわけ。それが1987年のこと。"ECVT" と名うって小型車 "ジャスティ" に鳴り物入りで初搭載されましたが、あまり世間的な成功をおさめることはありませんでした。
こう言うと
「ジャスティが不人気だからダメだったんじゃないの?」
と言われそうですが、決してそんなことはないと思います。富士重工はこの頃からユニットとしてのCVT供給に力を入れており、
・マーチ(1リッターの一部と1.3リッターの全AT車)
・ランチアY10
・ランチアイプシロン
・フィアットパンダ
・フィアットプント
など色々なクルマに供給していましたが、どのクルマにおいてもイマイチ評判は宜しくないようです。少なくとも
確実に "アンチが存在するミッション" と言えます。
それはやはり完成度。初めてなので仕方ない部分もあるのですが、
成功できなかった理由は以下3点だと思います。
①シフトレバー自体の操作性が硬く、運転がしづらかった。これは電磁クラッチを使用したCVT車に共通するもので、シフトレバーの操作性が
"ごりっ" とした嫌なものでした。ちなみにこの動きがしぶくなってくるのは寿命の予兆。また電磁クラッチ仕様だったため
発進時や車庫入れ時、渋滞時にギクシャクし、クリープ現象もなかった(説明書に "クリープ現象がなくて追突を防止する" と自慢げに書いてあったのは笑いました)。
②耐久性にも難があった。実例としてヴィヴィオでも、ベルトからものすごい異音がしてアッセンブリー交換になったものや、電磁クラッチがやられたものがあります。乗用車用でもそんな感じなので、
過酷に使用する商用車ではトラブルが頻発していたようです。なので当初搭載されていたサンバーやヴィヴィオバンには、後にスズキ製3ATが搭載されるようになっています(1速のギア音がまさにそれです)。
③そして何より、今では "素晴らしい" と言われている変速フィーリングも、
未知のものだけに気持ち悪く受け入れられた。
その後、軽自動車のレックス、ヴィヴィオ、サンバーには電磁クラッチ仕様の
"ECVT" として、プレオ、R2、R1にはトルコン仕様の
"i-CVT" として搭載されました。
この "i-CVT" になったころには完成度が相当アップしており、耐久性や性能も申し分ないものになっていたと思います。しかしその頃には他社も高性能なCVTを開発してきており、現在では
"CVTの富士重工" というイメージはなくなっていますね。
そこでいいCVTをつくる技術も育ってきたことだし、時代も追い風、またCVTメーカーとしてのリベンジに打って出たのか、
2003年にジャトコとの合弁会社 "富士AT" を設立したのです。そしてジャトコと富士重工、富士ATの共同開発で、新しい軽自動車用CVTを開発し、ステラに搭載されることになったわけ。
このミッションは大泉工場で生産され、ジャトコを通じて販売するとのことですが、このCVTは部品として成功するのでしょうか? それはこのミッションの完成度にかかっているでしょう。まぁ前期型プレオのCVTでちょっと気になった、
ロックアップ機能の始まりの遅さがかなり改善されているみたいなので期待は出来るでしょう。普通車にも耐えられるキャパだということなんで、
イタリア勢あたりが目を付けるかもしれませんね。
ただひとつ思うのは、
このCVTならではの特徴がきっちり備わっているかということ。これは
スバルのクルマにも共通する課題です。部品に個性を求めるのは酷なような気もしますが、たとえば段違いにスムーズだとか、段違いに燃費に有利だとか……。ただこの点はエンジンとの組合わせの問題もあって、どんなクルマに組み合わせられるかわからない部品としては体感しづらい部分がありますね。
そこで僕が求めたいのは、
"圧倒的な耐久性"
コレです!
今までのCVTはなんだかんだでよく壊れた。デリケートな扱いを要求し、商用車にも使えなかった。これを根本的になんとかすれば、多少性能を犠牲にしても相当商品力のあるものになるのではないかと。
スーパーチャージャー&4WDの "赤帽サンバー" に積んで、30万キロ走破しましたなんてキャンペーン打ったら、相当印象が変わりますよね。もちろん技術的には難しいのかもしれませんが、そんな夢みたいなことを地味にポンとやってくれたら、富士重工のCVTはぐっと存在感を増しますね。
お金がないなら、あるコマを使って最大限の存在感を創出してほしい。切にそう願います。
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事象コラム | クルマ
Posted at
2006/06/17 17:35:06