
かなり遅ればせながら、ミツビシ "i" に乗ったので書いてみたいと思います。デビュー当初から気になっていたクルマですが、じっくり乗る機会がなかなかんかったので……
まずスタイリングについてですが、僕は本当に心打たれています。"こんなのを待っていた" というイデアのような存在。僕の中で「未来カー」というのは漠然とこんなものを想像していました。こんな形のハイブリッドカーが出てきたらドンピシャなのにって思うほど斬新で、軽自動車という枠を超え "クラスレス" な魅力をもっていると思います。なんでもこのクルマのフロントグラスには生産部門が相当尽力しているとのこと。こだわりぬいていると言うことですね。そしてこんな小さなクルマなのに知的な雰囲気が漂い、他の軽との違いを明確にしているところからはスノッブな香りも。実際、僕の知っている範囲だけで "歯医者さん" や "司法書士事務所" などで見かけたので……。また新幹線みたいな流線形をしているので "東京オリンピック世代" の人たちにも割と評判がよいようです。あと余談ながらフロントワイパーが大型の1本タイプであるのもお洒落。このマルチリンク式(途中で角度を変えてより広範囲を拭ける)はホンダのトゥデイやライフ、ルノートゥインゴなの素敵なクルマに採用されていて気に入っていたシステムで、ここ最近はお蔵入りになっていたので嬉しい限りです。
ボディカラーはずいぶんたくさん揃えてくれており、ヨーロッパ小型車のように選ぶ楽しみがあります。ただ個人的にはアンニュイカラーが似合うような気がしますね。特に "ジンジャーブラウン" にはかなりそそられます(><)
内装を見てみると外観ほどのインパクトはなく、質感がとりたてて高いわけでもない。シートがワインレッドだったりで、色合いのセンスなどなかなかなのですが、イマイチ軽自動車のワクを出ていない気がします。でもアイポイントや空間の取り方はすごくしっくりとくる気持ちのいいものなので、乗用車としてこれ以上のものはないでしょう。ただこれほど斬新さを強調した車が、なぜフロアシフトを採用したのでしょうか? ゲート式になっていてカチッとした操作感が気持ちいいものの、いかんせんスペースをとりすぎ。平成10年の軽自動車新規格でデビューした "トッポBJ" も他車が相次いでコラムシフトを採用する中、フロアシフトを問うてきましたね(マイチェンでコラムへ変更済み)。よっぽどフロアシフトが好きなのでしょうか? コラムシフトにするか、ないしはプリウスのような簡単なスイッチにしてしまえば良かったのにと思います。そうすればスペース効率と軽便な操作性を両立し "機能に支えられた" 実用性を体現できると思うのです。まぁコスト的に厳しいのでしょうが……
走りは思っていたより普通。MRというのはどんな世界なんだと思っていたのですが、僕にはあまり明確な違いがわかりませんでした。でもそりゃそうですよね。MRらしい挙動なんてモロに与えてたら危なくて仕方がない。ましてや万人向けの軽自動車、昔のMR2みたいなわけにはいかないでしょう。"曲がり過ぎない勇気" も重要なことだと思います。ただ鼻先は明らかに軽くて、ススッとステアリングを切り込んでいけるのが、街中でのドライブを楽しくしてくれました。ちなみにタイアサイズは前後で幅を変えており、駆動輪のリアを少し太くしてあります。これは同じMRのホンダビートでも見られたことです。
そしてエンジンはちょっとうるさいです。新開発のDOHCターボなのに、同じ3気筒のためか従来のエンジン(3G83)にすごく似た音でした。なんていうか、ビーンビーンって音はミツビシのお得意ですね。ホンダの3気筒なんかあんなにスムーズで静かなのに、これはどうしたことでしょう。っていうか、ミツビシはすごくスムーズな4気筒エンジンを持っていますよね(4A30)。平成5年デビューのちょっと古いエンジンですが性能は第一級で、まだパジェロミニなどに細々と使われています。このエンジンはおそらくスバルの4発よりスムーズさでは勝っていると思うので、この "i" にはピッタリの性格だったことでしょう。まぁスペースの問題とかもあるのでしょうが、僕としては4気筒の新エンジンを造って欲しかったと思います。そしてミッションもCVTにして欲しかった。4ATってのも信頼性を考えればいい選択ですが、いかんせん軽自動車の非力なエンジンだとどうしても不利。
トルク重視の4気筒ターボでCVTでするすると加速させたユニットを搭載すれば、スタイルを裏切らない走りに誰もが魅了されたことと思います。もちろん予算的な問題(現段階でも十分高い)もあったから仕方ないものの、ここまでデザインやコンセプトがアバンギャルドなだけに残念なことです。
そして最後に気になっているのは耐久性の問題。MR(というよりほとんどRR)なのでエンジンはリアシート後ろのラゲッジ下にあるのですが、メーカーとしても熱対策にはそうとう気をつかったようです。風の流れを制御するアンダーカバーを装着したり、エディショナルファンをいくつも付けたり……。でもよく考えてみるとそんなファンが故障したらどうなるのでしょう? 三菱車の電装品の電装品トラブルはあまり聞かないので大丈夫だとは思いますが、ちょっと気になるところではあります。このクルマがデビューしたのが寒い時期でしたし、まだ新しいクルマなのでトラブルも聞きませんが、ちょっと時間が経ったら真夏の炎天下で山道を元気よく走る実験などをしてみたいものです。
同じMRのホンダZは、ターボがいかれたり、エンジンがメタル打ったり、ミッションが滑ったりとけっこう問題のある個体が多かったようです。しかしこういうことは長く使ってみないとわからないこと。 "i" がこの辺をどう仕上げてきているのか、長い時間をかけて観察していきたいものです。
ちなみにRRレイアウトのスバルサンバーはオーバーヒートトラブルをきくことがほとんどありません。CVTの故障はよく聞きましたが、スズキの3ATを搭載してからはトラブルらしいトラブルはなし。長い間特殊レイアウトの経験をつんできた歴史の賜物といったところでしょうか。ただエンジンのオイル漏れ対策はさすがにそろそろ何とかして欲しい部分でありますが……。
Posted at 2006/07/02 23:10:10 | |
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