• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2011年11月20日

サンバーのお勉強①

1958年(昭和33年)春、スバル360を市場に送り出した伊勢崎の技術部第二設計課は、翌年には、開発コードネームK151型の設計開発に着手した。

K151型は360CCエンジンの小さな多目的トラックである。

商品名はスバル・サンバーという。

サンバー(アルファベット表記はSamberまたはSambur)は、インドに産する鹿科の動物名で、東南アジア産の鹿の中ではいちばん大きな種類で平均体長は約2mあり、川の近くに生息し、ドロ遊びが大好きなので「水鹿」のニックネームがある。そのスタイルが力強く、駿足なイメージにあふれているところから、K151型の車名に選ばれた。

百瀬はK151型開発の動機をこう語っている。

「戦後のモータリゼーションの現実はトラックの普及だと言えました。しかも、小さなトラックが急速に発達した。1954年(昭和29年)の第1回東京モーターショーは3輪トラックの展示が多かった。戦後復興から経済成長へと、商売の道具、生活の道具として必要だったのですね。ですから我々も日本の狭い道を走り回る軽トラックを開発すれば、これは安定して成長する商品になるだろうと考えたのです。スバル360の開発が終わって、すぐに軽トラックの開発を始めました」

第1回東京モーターショーが開催された時代は、軽三輪トラックが一世を風靡していた。戦前では自転車で運んでいた荷物を、戦後はバイクモーターや小型オートバイではこぶようになった。戦後復興が進んでいくと、軽三輪トラックの時代になったのである。代表的な車種は「町のヘリコプター」の宣伝で有名になったダイハツ・ミゼットであった。この軽三輪トラックの普及に目を付けたトヨタ自動車は、1954年に四輪小型トラックのSKB型トヨペット・ライトトラックを発表した。セミキャブオーバー型で995cc直列4気筒27馬力エンジンを搭載した、合理的設計の積載量1tのトラックであった。発売初期は軽三輪トラック市場に食い込むことが出来なかったが、価格値下げを行い軽三輪トラックとの価格差を解消して販売上の競争力をもった。

また販売体制を整備し、小規模運送業者との懇談会結成、市場での早朝展示、農協への巡回訪問、駅頭チラシ配りなどのきめ細かい販売政策が実施された。愛称を全国公募するコマーシャル展開で「トヨエース」のニックネームをつけるなどの努力が続けられ、1957年(昭和32年)には年間二万台を販売する大ヒット商品となった。このトヨエースのヒットに刺激されたプリンス自動車はプリンス・キャブオーバートラックを発売し、日産自動車もニッサン・キャブオールを発売してブームに拍車をかけた。小型トラックの普及により軽三輪トラックの販売台数は下降線をたどるようになった。トヨエースの登場は、日本のモータリゼーションの歴史におけるキャブオーバー型トラックの登場と言い換えてもさしつかえないほどの衝撃をあたえた。

まさにこのような時期にスバル・サンバーの開発が始まったのである。この軽四輪トラックは、時代遅れとなった軽三輪トラックの市場に狙いを定めた。

「我々も軽三輪の研究を熱心にやっていた時代がありました。軽三輪は簡単な構造で、ドアはないし、キャンバス・トップという屋根のあるスクーター的なものでしたが、動力性能は悪くなかった。道具として考えれば実用一本でよいのかもしれませんが、最大の欠点は安定性が悪すぎるという結論でした」

百瀬は、スバル・サンバーを軽四輪トラック、しかもリアエンジン・リアドライブとして企画構想を開始していた。ボディは二種類で、トラックとバンである。トラックは二人乗り、バンは四人乗りを可能として考えられた。

「乗員と積荷のスペースを確保したうえで、エンジンの位置をどこにするか。これが最大のテーマでした。我々の具体的な選択としては、シートの下に置くか、リアエンジンにするかというものです。つまりプロペラシャフトをもったリアドライブにするか、リアエンジン・リアドライブにするか、という選択でした。スバル360の開発を経験した我々としては、生産設備や生産性を考慮するとリアエンジン・リアドライブにする方がベストと考えました。スバル360は登板性能も高いですから、軽トラックとしては有利ではないかという見解もありました。そうした理由からスバル360との共通の設計思想でやろうという結論が出てきたのです」

スタイルはキャブオーバー以外にには考えられなかった。それまでの軽四輪トラックはボンネット型が主流であり、そのために荷物積載スペースが小さかったのである。そのため、新しいイメージの軽四輪トラックを作るのならキャブオーバー・スタイルしかあり得なかった。

しかし、このスタイルには松林敏夫常務から強い意見が出された。

「ボンネットがないと、衝突したときにドライバーが危険ではないか」

という心配である。


続く。


「富士重工業 技術人間史より」
ブログ一覧 | クルマ
Posted at 2011/11/20 20:00:38

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

コスパの良いお蕎麦
キャニオンゴールドさん

オールの仕事明け・・・🌃🏢🌦 ...
よっさん63さん

初めての経験だった
かず@きたきゅうさん

北の大地へ 2025 夏 9日目
hikaru1322さん

曇りのち雨時々晴れ(久しぶりに)
らんさまさん

今日は洋画を2本観てきました♬
ブクチャンさん

この記事へのコメント

コメントはありません。

プロフィール

「まあ、今日の雨は酷かった😭☔⚡」
何シテル?   08/07 20:40
石川県をこよなく愛するrs30b4です。 休みになれば、どこか走ってます。 SUBARU全般とBOXER6が大好きです。 RS30は、 ...

ハイタッチ!drive

みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

掲示板

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

リンク・クリップ

Alcon 
カテゴリ:足回りなら
2010/11/24 16:12:17
 
AP RACING 
カテゴリ:足回りなら
2010/11/24 16:11:29
 
ENDLESS 
カテゴリ:足回りなら
2010/11/24 16:10:27
 

愛車一覧

スバル WRX S4 スバル WRX S4
特に言うことありません(笑) あれこれ言わず乗れば解る!そんな一品ですな^^ ※令和 ...
スバル レガシィB4 スバル レガシィB4
現在530,000万Km超え、未だバリバリのRS30です。 外見ノーマル(ではないか? ...
スバル サンバー スバル サンバー
見ただけで分かる人には分かるな一品です^^(笑) スバル製最後のサンバーとなってしまいま ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation