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2011年11月20日

サンバーのお勉強②

サンバーのお勉強② 百瀬は、この松林の心配をありがたいと思った。だが、キャブオーバー型にしなければ広い積載スペースを確保できないことも事実であった。とにかく松林を説得しなければならないと思った百瀬は文献を漁った。ソ連のキャブオーバー型の農民車に関する安全を調査した論文には、ドライバーズ・シートが前方にあると危険の発見が早いので早期に危険回避ができると書いてあった。この論文内容を松林に伝えるとともに、スバル・サンバーのフロント外板を二重にすることを報告して、キャブオーバー型を採用する許可をもらった。この松林の意見は、スバル・サンバーの開発を続ける百瀬の脳裏にいつもこびりついていた。

スバル360と共通の設計思想をもつ軽四輪トラックとなれば、百瀬は、まず乗員二名が楽に座れる空間を確保することを最優先にして発想することにした。人間優先の設計思想である。

ドライバーがゆったりとして運転姿勢をとり、かつ楽に運転操作ができるためにペダル類をオフセットさせないためには、フロント・タイヤのホイールハウスの出っ張りを室内にもってくるわけにはいかなかった。そこでフロント・タイヤの上にシートが位置するレイアウトを考えた。フロント・サスペンションは、スバル360と同じシステムのトレーリングアームとすれば、実現可能なレイアウトだった。このキャビンのレイアウトは助手席のレッグ・スペースを大きく確保することになった。人間ひとりがもぐり込むことができるほどの空間があり、小さな荷物を置くことが可能なスペースとなったのである。また、この大きなスペースは衝突安全性向上に寄与する空間となった。

キャビンの構想が終わると、自動的に全体のシルエットがまとまった。人間が乗るスペース以外は荷台であり、それはできるだけ広く大きく有効なスペースでなければならない。リア・エンジンはヘッドを後方に向けた状態で傾けて搭載しようと検討をした。水平近くまで傾けてみたが、しかし荷台を真っ平らにすることはできなかった。シートの下にエンジンを搭載すれば荷台を低くフラットにすることが可能であったが、リアエンジン・リアドライブを選択した以上は、そのコンセプトに従って技術を深めていくのが王道である。

こうして全体のシルエットを構想してみると、スバル・サンバーの開発には、スバル360のキャリアのみならずバス・ボディ設計の経験を生かすことができると思われた。

ボディ構造や動力性能は、積載量を予想しながら構想された。積載量は法定数字で、トラックで350Kg、バンで250Kgである。だが、この数字は非現実的なものであった。過積載されることは、予想しなければならない現実だからである。積載量350Kgのトラックに1tほどの荷物が積まれることさえある。

そこでスバル・サンバーを、丈夫でねじれ剛性のあるボディ構造にするためには、中空角材の鉄フレームをボディに組み入れることにした。法定積載量の三倍弱まで荷物が積まれる可能性があるのだから、相当に丈夫な車体が必要であった。得意のフレームレス・モノコックボディを採用することは不可能だと判断したのである。

サスペンション形式はスバル360と基本的に同じタイプであったが材質変更などで大幅に強化された。トーションバーはフレームのクロスメンバーの中に入れることにした。

エンジンはトルクを太くするセッティングをほどこすことにしたが、それには限界があり、トランスミッションのギア比を低く設定する必要があった。

こうして百瀬はスバル・サンバーの初期構想をまとめると、開発スタッフに開発構想として発表し、具体的に設計コンセプトを煮詰めていく作業に入った。開発スタッフはスバル360と同じであり、エンジンは三鷹の技術部設計二課の菊池庄治たち、ボディ構造は室田公三、サスペンションは小口芳門、実験は家弓正矢がそれぞれチーフとなった。

この開発部隊は、スバル360の市場要望の対応などで忙しく、スバル・サンバーの開発設計が始動したのは1959年(昭和34年)になってからであった。すでに市場にはライバルが登場していた。愛知機械の軽四輪ピックアップのコニー、くろがね自動車のリアエンジン・リアドライブ、4ストローク・エンジン、キャブオーバー型のくろがね・ベビーであった。

スバル・サンバーの開発は、ボディが新規設計となったが、エンジン関係、駆動系、サスペンションについてはスバル360のものに改良、改造をほどこす範囲の開発にとどまった。

室田公三は、その時の開発陣の動きをこう語っている。

「スバル360に続く貨物車を機構上実績のあるリアエンジン・リアドライブにすることは当然のことで、議論の余地がありませんでした。リア・エンジンにするとエンジンルーム部分の荷台床が高くなってしまいますが、他の部分の荷台を思い切り低くすることができます。むしろ若干議論になったのは、ボディ構造についてです。スバル360と同じようなフレームレス一体構造にするか、フレーム付きにするかという点でした。これも荷台床を低くするというメリットを打ち出すために、フレームを入れようというふうに素直な結論が出てきました。荷台をモノコック式にすると、どうしても高くなってしまいますから、フレームが必要なことは明らかでした」

室田が設計したフレームは、通常のコの字断面ではなく、中空角材による箱形断面を採用していた。これはねじり剛性を十分なものにするためである。スバル360のときと同じように、室田の設計は、強度や剛性が必要な部分は入念に設計しベースをきちんと固める方法であった。


続く。


「富士重工業 技術人間史より」
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Posted at 2011/11/20 22:27:43

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