2017年11月28日
一方で、スバルにとって最も重要なプロジェクトも進行していた。
それが新型レガシィの開発だった。
1986年頃から企画が立ち上がり、初代BC/BFレガシィの登場は89年。
レガシィは発売されるや、一気に人気車種に昇華していくが、同時にレガシィツーリングワゴンの人気を高めるために、大排気量エンジンの開発にも乗り出していた。
それがEJ22型水平対向4気筒OHCエンジンであった。
総排気量2212cc、ボア×ストローク=96.9×75mm、最高出力135ps/5500rpm、最大トルク19.0kg-m/4000rpmのスペックをもち、96年6月に輸出専用モデルであるブライトン220に搭載され、初めて世に出された。
このEJ22型エンジンが、BE/BH型で名機と言われたEJ25型(NA&ターボ)に発展していくのだが、一方で新たなフラット6の原型にもなるエンジンだった。
91年9月、スバル技術の集大成といえたアルシオーネの後継車として、ジウジアーロの手による流麗なスタイリングをもったSVXがデビューする。
あるアメリカの雑誌によるテストでは、フェラーリ・テスタロッサと同等のコーナリングスピードを叩き出すほどの高性能を備えたグランドツアラーとして、スバルの新たなフラグシップを担っていたモデルだった。
このSVXに搭載されたのが、スバルの新世代フラット6、EG33型3.3L水平対向6気筒DOHC(NA)で、総排気量3318cc、ボア×ストローク=96.9×75mm、最高出力240ps/6000rpm、最大トルク31.5kg-m/4800rpmまでアップしていた。
このEG33型には、レガシィのEJ20型を開発したテクノロジーがフルにそそぎこまれた。
例えば、前記したパワーアップに伴うクランクシャフト支持剛性についても、EJ20型で従来の3ベアリングから5ベアリングに進化し、EG33型ではさらに7ベアリングとなった。
また、エンジンブロックはアルミダイキャスト製とし、全長も直6の約60%に抑えるなど、多気筒化で懸念される、フロント部分の重量増大、フロントオーバーハングの重量バランス問題にも、フラットエンジンのメリットが生かされた開発がされた。
このEG33型とER27型には共通点が多い。
この2タイプのフラット6はベースにあるフラット4、プラス2気筒のエンジン容積で、つまり、ER27型はEA82型と同様にボア×ストローク92×62mmであり、EG33型はEJ22型と同じ96.9×75mmである。
1.8L、フラット4にプラス2気筒が2.7Lであり、2.2L、フラット4にプラス2気筒が3.3Lという単純な数量加算が成立している。
Posted at 2017/11/28 21:13:01 | |
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2017年11月27日
水平対向エンジンのメリットとして、エンジンが発生する2次モーメントが限りなくゼロに近いこと、また、BOXERタイプのためエンジンブロック剛性が高いことがある。
ただし、4気筒より6気筒の方がエンジンが長くなるわけだから、こうした面では厳しくなる。
例えばクランクシャフト。
クランクシャフトは、堅牢な剛体のように思うかもしれないが、エンジン回転が高くなるほどしなって回転してしまう。
従って、ブロック剛性が低いエンジンでは、しなりにより摺動抵抗(フリクション)が発生して効率が落ち、最悪のケースではトラブルに繋がる。
そのための対策に、ラダーフレームなどにより剛性アップをする必要が出てくる。
これはクランクシャフトが長くなる多気筒ほど顕著になる。
だが、水平対向エンジンはブロックケースの剛性が高いため、多気筒化してもクランクシャフトをケースが支え、しなりを抑えることができる。
一方で、エンジンが発生する振動モーメントだが、水平対向エンジンは1次、2次モーメントとも限りなくゼロに近い。
従って、直4エンジンなどでは振動を抑えるためにバランサーなどが必要であるが、水平対向エンジンは不要になるので部品点数、エンジン重量を軽減でき、フロント重量の軽量化、パワートレーンのコンパクト化などのメリットがあった。
こうして、1987年6月、SUBARU初の2.7L水平対向6気筒エンジンを搭載したアルシオーネVXがデビューした(AX9)。
高速巡行時の性能とフラットトルクによる走りやすさを重視して、まさに高速グランドツアラーの名に相応しいモデルであった。
最大の特徴であるくさび型のボディデザインと新エンジン搭載により、独自の路線を切り開いていく。
最先端技術も随所に取り入れられており、
点火時期学習制御(ガソリン組成のばらつきによるノッキング発生を防止する装置)
ATC-4(電子制御アクティブトルクスプリット4WD)
国産フルタイム4WDで初のABS
CYBRID(油圧を電気モーターで作り出す電子制御式パワーステアリング)
などが採用されていた。
ER27型はEA82型のプラス2気筒ではあるが、エンジンブロックは新設計である。
だが、ピストン、コンロッドなどの主要運動部品、ロッカーアームやハイドロリックラッシュアジャスター、吸排気バルブなどは、EA82型と共用であった。
ER27型が搭載されたアルシオーネは、87年に発売以来、独自のボディデザインも相まって、スバルファンの人気を集め、ER27型エンジンは90年の最終モデルまで搭載された。
Posted at 2017/11/27 21:59:45 | |
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2017年11月25日
よく知られているように、自動車に使用されているガソリンは、平皿のような容器に垂らして火をつけただけでは、エンジンなど内燃機関を運動させられるほどの爆発エネルギーは得られない。
適切な比率で空気と混ざり合って霧化した状態が一番効率よく燃える。
なので、自動車のエンジンはガソリンと空気が混ざり合った混合気を燃焼させて、パワーを引き出している。
パワーアップするためには、その混合気をできるだけ多くシリンダーの中に送り込みたい。
その方法として、一つは強制的に多くの空気(酸素)をシリンダーに送り込む方法がある。
これがターボチャージャーであるが、これはすでにレオーネで量産化済みだし、初代アルシオーネにも前記のように搭載されていた。
だが、アルシオーネには、ターボのように猛々しいパワーの盛り上がりは必要なのか?グランドツアラーとして、もっとジェントルなエンジン特性が合っているのではないか?
こうした葛藤を経て、エンジン開発部隊は新しいパワーソースの可能性にたどり着いた。
それは、より多くの混合気をシリンダーに送り込むために、ターボではなく、シリンダー容積を大きくする。
つまり排気量アップをすること。
排気量をアップすることで、MAXのエンジンパワーだけでなくそこに至る、過渡特性、中・低速回転域のトルク特性が向上することは分かっていた。
ただ、水平対向4気筒のボア(シリンダー内径)は、すでに1.8Lで92mmのビックサイズであった。
ビックボアのメリットはもちろんあり、点火プラグで着火したとき、爆発・燃焼時の熱伝播(燃え広がりやすさ)に影響がある。
大きなボアで広い容積を持つ燃焼室では、瞬間的に燃え広がる燃焼・爆発行程時に、混合器の燃え残りが発生し、燃焼効率が低下する危険性も懸念される。
このためSUBARUが採った方法は多気筒化だった。
ここにSUBARU BOXER6の歴史が始まることになる。
アルシオーネ専用に、水平対向6気筒OHC/2.7LのER27型NAエンジンがいよいよ実用化した。
SUBARU初のBOXER6は、BOXER4に2気筒分を加える形で開発された。
つまり、BOXER4/1.8Lなら1気筒当たり0.45Lになり、0.45L×BOXER6で2.7Lということになる。
ボア×ストロークも、従来のBOXER4(EA81・82型など)と同じく92×67mmである。
総排気量2672cc。
最高出力は150ps/5200rpm/にアップし、グランドツアラーとして余裕の走りを生む最大トルクは、当時としては高レベルな21.5kg-m/4000rpmにまで引き上げられた。
発生回転数が、BOXER4の2400rpmから4000rpmに高くなったが、これは、MAX数値のマジックで、エンジン性能曲線、ドライビングフィールは、低・中速回転域で太くフラットなトルク特性が実現されていた。
まさにグランドツアラーに相応しいエンジンの完成だった。
つづく。
Posted at 2017/11/25 21:11:16 | |
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2017年11月24日
○初代SUBARU製水平対向6気筒ER27型誕生までの時代背景を探ると
SUBARUが6気筒エンジンをこの世に送り出したのは、1987年、今から30年前。
当時のSUBARUは1972年に発表したレオーネバン4WDを皮切りに、世界初の乗用車4WDのユニークなメーカーとして築いていった時代だった。
SUBARUは1980年から始めたレオーネによるサファリラリーなどのモータースポーツ参戦などで、イメージアップ戦略を図っていた。
これらのチャレンジは、レオーネ・スイングバックのサファリラリー初出場、クラス優勝など、そこから繋がる数々の栄光を生んだ。
だが、SUBARUは自動車メーカーとして、当時の現状から一歩抜け出すため、レオーネの大衆・スポーティなイメージだけでなく、ハイクラスモデルのラインアップ開拓を迫られていた。
トヨタのクラウン、日産のセドリック・グロリアに匹敵するモデル、かつ、水平対向エンジンの低重心、重量バランスの良さ、高剛性などのメリットを生かしたモデル。
つまり、単なるハイクラスカーではなく、スポーティイメージがあるグランドツアラーの誕生が企画され、開発されたのがアルシオーネだった。
発売は1985年6月。
アルシオーネは、SUBARU6連星団の中でもひときわ明るく輝く星の名前、、ギリシャ語の「アルキオネ」を英語読みしたもの。
それだけSUBARUの力の入れ方が大きかったモデルであった。
ただし、BOXER6誕生にはまだ若干の時間が必要であった。
登場時のアルシオーネには、当時、レオーネに搭載されていた水平対向4気筒OHC/1.8LターボのEA81型ターボをモディファイしたEA82型ターボエンジンが搭載されていた。
EA82型ターボエンジンは、排気量1781cc/ボア×ストローク=92×67mm/最高出力120ps/5200rpm/最大トルク18.2kg-m/2400rpmだった。(※1)
しかし、市場での一般的評価としては、レオーネと同等のエンジン性能ではフラグシップと呼ぶには物足りない、という声が圧倒していた。
そこでSUBARUは、エンジン性能をアップすることでグランドツアラーに相応しい走りを実現しようとした。
つまり、より以上のパワーを与えることで、それまでのレオーネにない走りを追求したのだ。
つづく。
(※1)
水平対向4気筒 EA82型ターボ
2バルブ2カムシャフト
総排気量:1781cc
ボア×ストローク:92×67mm
圧縮比:7.7
最高出力:135ps/5200rpm
最大トルク:18.2kg-m/2400rpm
燃料供給装置:EGI
搭載車種:アルシオーネ(1985年)
Posted at 2017/11/24 21:26:40 | |
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2017年11月22日
どうもです^^
本日付の日刊自動車新聞に残念な記事が・・・しかも一面に。
Posted at 2017/11/22 22:28:46 | |
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