2007年11月14日
ふたりとも無言まま煌びやかなショールームへ入る。濃いブラウンのソファーに案内通され、待たされること数分。テーブルには、金色のロゴが輝くティーカップに琥珀色の紅茶が注がれている。少し大きめの靴を履いたようで、なんとも居心地悪い。それでもふたりは無言のままだ。「どうしよっか」と僕が口を開いたのは、カミさんがティーカップに手を伸ばした時だった。ひと口飲み、ひと呼吸あとの「高いね」の声で、興奮気味の頭が試乗からようやく戻ってきた。そうだ、高いんだった。飲みに行って予想外の会計に酔いが覚める、あの感覚に似ていた。見積りとXタイプのカタログを手に、担当営業がやってきた。車両代に諸経費・税金15万円がプラスされると、だんだん現実味のない金額になってくる。あとは下取り査定しかない。しかし期待できないのは承知のこと。今から2年ほど前の査定ですでに40万円の値札だ。距離も重ね、すでに5万キロを超えたグリーンのアテンザだ。キーを預けると担当営業は外へと出て行った。まるで受験の合格発表を待つ親のような気持ちで、査定の結果を待った。数分後、こんな金額が提示されるとは思ってもいなかった。(つづく)
Posted at 2007/11/14 01:45:56 | |
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2007年11月13日
やはりジャガーのウィンカーの音は独特だ。ギアが刻むような音ではなく、インベーダーゲームのような電気的な音が、あくまでガイシャを主張する。信号が青に変わり、ゆっくりとアクセルに足をのせる。「ジャガーだから」ということではないが、やはりV6の柔らかい感触が心地いい。そういえば2代目ユーノス500のV6エンジンは、本当に感動的だった。アクセルをつま先でチョンと押してやるだけで、スルスル~サラサラ~と前進するような感覚だった。アテンザと比べるとパワーダウンは明らかで、1.5トンを超える車両は思ったよりもズッシリした感じだ。大通りから小道へと逸れる。狭い路地も取り回しは思いのほか良い。でも、やっぱりナビが見づらいな。後ろの席の営業マンが間髪入れずに解説してくれる。デンソー製のナビにドイツ製の足回りか。多国籍な内装とは裏腹に、ボンネットの隆起に打ち寄せる街路灯のオレンジ色が、英国の静かな街並みを彷彿させる。10分ほどの試乗を終え、ショールームに戻る。助手席に乗せたカミさんは、まだ無言のままだ。(つづく)
Posted at 2007/11/13 00:27:04 | |
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2007年11月12日
そこに着いた時は、もう日が暮れていた。駐車場に着く同時に、ショールームから担当の営業マンが小走りに近づいてくる。冷静さを一生懸命保ち、辺りを見回す。白や黒のSタイプやXタイプが並び、お目当てのブリティッシュレーシンググリーンは、まだ見つからない。聞けば道路を隔てた別の駐車場に停めてあるという。「うおぉぉぉ、あれか!」離れたところからでは黒にしか見えなかったが、ここではじめてブリティッシュレーシンググリーンを確認する。挨拶も早々に、まずはクルマをひとまわり。暗がりで良くわからないが、大きな傷や凹みはなさそうである。少し重たいドアを開け、シートに座る。ドアを閉めると「ガチン」という金属の擦れあう音とともに車内が静まりかえった。後ろのシートに座った営業マンの話を除いて。ひと通りの話を聞いた後は試乗だ。イグニッションを捻ると、外車特有の太い唸りをあげた。ラジオとエアコンを切って、道路へと流れた。(つづく)
Posted at 2007/11/12 01:00:52 | |
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2007年11月11日
そのジャガーは、少し遠くで次のオーナーを待っていた。ちょうど一週間と少し前のことだ。寝る前に、歯磨きをしながら中古車検索をするのがいつの間にか習慣になっていた。口いっぱいになった泡を洗面所に出しに行こう立ったとき、その一台を見つけた。ブリティッシュレーシンググリーンのそれは、ジャガー認定中古車だ。少し距離は走っているが、ワンオーナーで車庫保管だったため内外装ともに程度が良いと書いてあり、お得なプライスがついていた。よし、明日見に行くか! 結局その夜は、遠足の前日の子供のように興奮状態になり、明け方まで寝られなかったのだ。ほとんど寝てないわりに、その日は目覚めがいい。朝一番でディーラーに電話を入れてみる。まだ、在庫はあるという。今度こそ。カミさんと子供を半ば強引に乗せて高速に乗った。内緒で申込金と印鑑を忍ばせて。(つづく)
Posted at 2007/11/11 01:51:15 | |
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2007年11月10日
去年、近くの正規ディーラーから電話があった。格安の1台が入庫するという。X-TYPE 2.5SE。ブリティッシュレーシンググリーンにヘリテイジタンの内装だという。2001年の初年度登録で走行距離は13000kmだ。しかし認定中古車ではないという。そう、130万円のプライスタグのついたその一台には、フロントに修復歴があるという。はやる気持ちを抑え、ディーラーに見に行った。傷ひとつない艶々のフロントバンパー、そして新品に交換され黒く艶のあるラジエターが印象的だった。見積もりをもらい下取りの査定をしてもらう。「ジャガーが買える!」 人生ではじめてそう思った瞬間だ。欲しい、事故車、でもジャガーだ。欲しい、買いたい、買えそうだ。走馬燈のように頭の中を駆けめぐる。「よし、買おう!」そう決めたのは次の日、日曜日の夕方だった。ディーラーに電話をすると、それは少し前に売れてしまったという。告白しようと思っていた矢先に、その娘が付き合い始めたと友達から聞いた、あの頃の切なさに似ていた。ジャガーは大人になるまで諦めよう。そう心に決めた。(つづく)
Posted at 2007/11/10 02:03:21 | |
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