さて前回のブログから時間があいてご無沙汰になっておりました。
MLBで活躍を続けるイチローさんも、出番がなくなってきていることに淋しさを感じますね。
我が家のレジェンド、E46は未だ大きな故障もなく8万km越えまで来ました。
でもいつか来る故障と廃車の時まで、この伝説の域にあるM54エンジンの魅力を記録で残し続けます。
前回は、エンジンの官能性をサウンドの切り口で綴ってみました。今回はエンジンの出力特性についてM54の魅力を綴ってまいります。
長い文章ですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
昨今、レシプロエンジンの他に、ディーゼル、モータとのハイブリッドなど様々なドライブシステムが
台頭してきて、幅広い選択肢を提供してくれます。
一方で、エンジンの性能を何をもって測るのか、尺度が多様化してとても難しくなってきています。
もちろん従来のエンジン性能曲線に基づくデータから、その特性を推し量ること、比較することは
できるのですが、運転する私たちの感覚としてそれがどう乗り味に結びつくのかいまいち分かりにくくなっているように思うのです。
また最近のメディアは、エンジンの性能を、最大トルクや馬力、加えて0-100km/hの時間で表現していることが多くなりました。
新型車は、0-100が5秒を切る高性能だとか。
ダウンサイジングターボで、最大トルクが低回転から出せる今のエンジンは、低速からの加速は売りになりますよね。
15年前では、0-100性能は議論にも出てこなかった話しです。まぁ時流ということで。
私の乗るM54を、0-100性能で語られたら立つ瀬もないので、名機の立ち位置をもう一度考えてみたいと思います。
今回はエンジンのレスポンスに着目して、”加速度”という客観的な指標を用いて、①ドラマチック性と②忠実度 という2つの切り口で話を進めます。
<①ドラマチック性>
エンジンの出力特性をドラマチック性という観点から見ます。
エンジンの性能を推し量るのに、従来は性能曲線を用いてきました。あるいはシャーシダイナモでの測定値から良否を見てきましたが、今の時代スマホの加速度センサで十分にエンジンの性能を測ることができるようになりました。
今回は、その指標として加速度を使ってみます。スマートフォンに内蔵された加速度センサは秀逸で、車の挙動を瞬時に表現することができるようになりました。 iPhoneのgMeter というフリーソフトを使います。
まず下記の性能曲線の青線が、M54 3.0Lのトルク特性です。
この性能曲線の特性をもつM54エンジンで、実際の加速中のデータを取得してみます。
私のE46 330i(2004年) AT 5速を、マニュアルモードで2速に固定して発進加速し、その時のフル加速のデータを取得しました。
下のグラフが3回のデータを重ね書きしたものになります。
横軸が時間、縦軸は加速Gになります。(1G=9.8m/s^2です)
黄色の点線は、トルク特性を時間にして重ねています。
スマホを固定するパーツの剛性がないので、波形が振動的ですが、おおよその特性は取れているでしょう。
低回転時は、トルクコンバータでトルク増幅していますので、0.4Gを超える加速度がでています。
約5秒あたりからロックアップされエンジンのトルク特性(黄色の点線)がそのまま加速度応答に現れます。
トランクにゴルフ道具など不要なものを詰め込んで車重がかさんだため、最大Gは2速で0.3Gそこそこの結果でした。 こんなもんかなぁ。
このグラフがエンジンのドラマチック性を表します。
さあ、M54にはドラマチック性があるのでしょうか。
私がドラマチック性と勝手に表現していますが、この波形が表すところはエンジン出力の顔つきであって、素のエンジンの特性と等価な情報を示しています。
回転とともに盛り上がって上まで伸びてくれれば、ドラマチックなエンジン、高回転域で下がるあるいは一定であればドラマチック性の少ないエンジンとみなせると思っています。
今回のデータでは、トルク最大ポイント(約6秒のあたり)で加速度最大になりますが、その後回転の上昇とともに加速度は頭打ちになり、6000回転(10秒のあたり)を超えるところで落ち込んでしまいます。
回転は本当にスムースに吹け上がるのですが、高回転で更に湧き上がるようなパワー感はありません。
結局、私の愛するM54エンジンは、シルキーではあるけれど後半の盛り上がりに欠ける、ドラマチック性はイマイチなエンジンっていうことです。
よって、M54のドラマチック性=△ という評価でした。
ちなみに私の経験の中では、VTECエンジンはこのドラマチック性がよいと思えるエンジンでしたね。
性能曲線は以下の通りです。
エンジン性能曲線のトルク特性からも明らかなのですが、回転数が上がるほど、トルクが湧き上がるようなエンジンです。カムに乗るとはよく言ったものでした。
今でも本当にいいエンジンだと思っています。
昨今のダウンサイジングターボの車は、多段化されたため、エンジンの顔つきよりもむしろギヤの切り替えによっての特性が決まってしています。なのでターボ車についてはコメントを控えさせていただきます。
さて残念ながらM54のドラマチック性はイマイチでしたが、次に述べる忠実度に関してはどうでしょう。
<②忠実度>
次に示すデータは、2速固定で発進し、そこからアクセルに対する加速度の追従性を確認していきます。これを忠実度と表現してみました。
グラフの①の領域では、できるだけ正確なノコギリ状のアクセルワークをイメージして加速しています。また②の区間では、できるだけ早くMaxと0の間をセナ足のように動かしてみました。
加速度の応答波形
アクセルの踏み方
グラフからもわかりますが、M54エンジンは驚くほど忠実に運転者のイメージしたとおり車両が加速度応答しています。
特に①の区間は、のこぎり状にアクセルを踏んでいるつもりなのですが、車もそのとおりに加速していくのには驚きました。ここまで思い通りに応答しているとは思わなかったのですが、まさに意のまま。本当にリニアに動いてくれました。
その時の速度変化は下記のとおり、加速を断続的にしながら上昇していきます。
この結果は、アクセルのワイヤーリング(電気式です)や、エンジンの追従性、足回りの応答性などすべて加味した最終的な車両システムの加速度がほぼ思いどおりに動いているという結果を示しています。
いやー改めて驚きでした。この点が、E46 M54エンジンの真骨頂だと思います。
2速なので車の反応は、一番よい条件です。中回転数から高回転数にいたるどの回転域でもすこぶる良い追従性を示しますね、このエンジンは。
普段コーナーリング中もアクセルワークに素直に応答するため、とても制御しやすいのはこういう特性だったからなんですね。納得です。
同じことを、マツダNDロードスターでも試してみました。
ロードスターも、E46に負けないくらい素直なエンジン特性で、パワーこそありませんが、それはそれは素晴らしい人馬一体の乗り味になっています。
このロドで、同じようにアクセルの踏み方をしてみて比較します。
そのデータは以下のとおりです。
なんと、アクセルワークにそれなりに追従していますが、イマイチ加速側の特性がイメージと異なります。私のロードスターに対する慣れが足りないことも要因の一つですが、やはりM54の方が更に一枚上手であるという感じがしました。
また先日、Lexus IS-Fでも同じことを試してみました。こちらはNAで5Lのハイパワーエンジンです。回転数によって忠実度がばらばらでした。 爆発的な加速感があるのですが、アクセルへの追従が、回転数によって差があり、結果的にデータにならないくらい、イメージとかけ離れてしまいました。なのでデータなしです。 ハイパワー車は魅力的ではありますが、追従性とは別の難しさがあるのだと思い知りました。
今回は、NAエンジンのみを対象にしました。
最後にM54に関する結論
①エンジンのドラマチック性 = △
②エンジンの忠実度 = ◎
でしたね。
M54は、パワーがあるので実は実際の運転では、アクセルべた踏みの場面は多くはありません。
むしろアクセルを微妙に調整しながら走るシーンの方がずっと多いです。
その観点から、②忠実度の高い方が、多少ドラマチックでなくても大切だとわかります。
きっと当時のBMWエンジニアはそこを大事にしてこのE46を作り上げたのだと信じています。
門外漢の私が独断でありますが、M54を記録として残してみました。
おまけ。
皆さん、人馬一体という言葉があります。
どんなイメージでしょうか。
私は、矢のように早いこちらの人馬一体ではなく、
すべての動作が手の内にあって制御できる馬術こそが、人馬一体じゃないかと思うのです。
E46は、エンジンも足回りも、人が意のままにコントロールできる一体感を楽しめる貴重な車なのだと思っています。