
最近は迫り来るジムニー達の車検に憂鬱な日々を過ごしています。
やらなきゃならない車検整備が山積みですが、宿題は後から泣きながらやるタイプの人間なので、切羽詰まらないとやりません。
最近寒いですしね。
まあ、あったかくなったら暑いつって結局やらないんですが。
で、学生の時のテスト期間に普段はやらない部屋の掃除がどうしてもやりたくなる症候群と似たようなアレで、車検整備そっちのけで工具をちょいちょい買ったり弄ったりするのが最近の趣味になりつつあります。
おかげでパーツレビューが工具ばっかですね。
と言う事で、久しぶりのブログは工具について。
ブランド物をズラーッと並べて使ったりしてるわけではないですが、個人的に工具が好きで最低限のレベルで拘ってるつもりです。
自分で車弄りしたいけど工具を持ってないって人が意外と多い気がします。
Twitterの方でもたまに工具について聞かれるので、この春免許取って、車買って、そろそろ弄りたくなって来ちゃった人に、工具選びのちょっとした豆知識を教えたいと思います。
今回はソケットについて。整備かじってる人はコマって言います。
言うまでもありませんが、ラチェットハンドルやスピンナーハンドル等に取り付けてボルトナットを回す為の工具です。
画像の右のコマはある程度値段がするメーカー物のコマです。
左はホームセンターとかに売ってる、遠い異国の方々が鼻をほじりながら大量生産したであろう激安工具セットに付属してるコマです。
ようは右がメーカー物、左が安物ですね。
何が違うかって言うと、一番大きな違いは六角の部分の角の部分です。
右のメーカー物は、六角の角の部分に溝が切ってあって、真上から見ると角に丸みのある六角になっているのがわかると思います。
それに対して、左の安物はその溝が無く、真上から見ると、定規で書いたような角が角張ってる完全な六角形になっているのがわかると思います。
これによって何が違うかと言うと、ボルトナットにトルク(回す力)をかけた時のボルトナットに対するダメージが違います。
六角形の物の一番弱い部分は六角形の角です。
ボルトナットの角がメーカー物のコマにある溝にハマることによって、ボルトナットの角に直接コマが接触しないので、弱い部分である角に力がかかるのを防ぎます。
ようはこの溝によって角が保護されます。
さらに、コマの六角の面とボルトナットの面で接触する事になるので、面で力を加える事が出来て、大きなトルクをかけてもボルトナットがナメりにくくなり、安定してトルクを掛けると事が出来ます。
一方、そのボルトナットを守ってくれる大事な大事な溝が無い安物のコマは、ボルトナットに対して容赦無く角に力がかかるので、小さなトルクなら耐えられますが、大きなトルクを掛けるとボルトナットの六角形の角が削れたり変形してしまいます。
いわゆるナメるって言う現象です。
特に、小さいサイズのボルトナットだとかなり簡単にナメります。
しかもすぐナメると言う事はある一定以上のトルクで締める事が出来ないという事なので、締め付け不足にもなります。
ナメってしまうと角が無くなってコマが噛まなくなるので、締める事も緩める事も出来なくなるのでめんどくさい事になります。もちろんナメったボルトナットはもう使い物になりません。
この違いを面接触と点接触と言います。
さらに、真上からよく見るとわかりますが、安物は定規で書いたようなド直線の六角形なのに対して、メーカー物の方は、六角の面がわずかに内側に湾曲しています。
この内面の湾曲がより効果的に面接触でボルトナットに力を掛けられるようになります。
そして、コマの裏側の、ラチェットやスピンナーの四角い部分が突き刺さる部分。
同じく右がメーカー物で左が安物です。
この部分は何種類かサイズがあって、小さい方から
1/4DR (6.3sq)
3/8DR (9.5sq)
1/2DR (12.7sq)
3/4DR (19.0sq)
基本この4種類のサイズです。
自動車整備なら普通は3/8DRと1/2DRが一番良く使われます。
3/8DRはラチェットで一番使うサイズです。とりあえずこのサイズのコマをベースに揃えるておけば間違いないですね。
1/2DRはインパクトレンチ、もしくはスピンナーハンドル、トルクレンチでよく使われます。
3/4DRは、かなり大きなサイズのコマに使われます。自動車整備では稀に使いますが、見る事の少ないサイズかもしれません。
1/4DRは、小さいサイズに使われますが、自動車では小さくても7mmとかなので、細くて大きなトルクをかける事の出来ない1/4DRはあまり使う事は無い、と言うか自分はまず使わないです。
あと、ホムセンで激安のラチェット&ソケットセットみたいなのはだいたいこのサイズです。
コマは基本的にラチェットやスピンナーの刺さる部分に付いてる画像のようなボールロックで固定されます。
見比べですが、右のメーカー物は四角い穴の側面にボールロックのボールが引っかかるくぼみがあります。
安物はありません。
このくぼみが無いと、ボールロックのボールが引っかからないので、ラチェットなどとコマがしっかり固定されず、引っ張るとコマがもげちゃいます。
メーカー物はくぼみに引っかかって外れにくくなっています。
また、六角の側と同様に、先ほどの面接触と点接触の溝の加工がされています。
メーカー物は溝があって安物はありません。
ボルトナット同様にラチェット等の工具側の突き刺さる部分の保護の意味もありますが、この部分は強度が必要な部分です。
メーカー物のように角が丸く加工してある方が力が分散して強度が上がります。
六角の方と同様にとにかく直線的な作りの安物は角に力が集中するので、大きなトルクをかけるとコマ自体が割れる可能性もあります。
こんな感じで、ぱっと見はたいした変わらないけど、実際に使う上でかなりの違いが出て来ます。
ホームセンターで見ると新品でピカピカしてるしズラッと並んでセットで売ってると安物もちゃんとしてる工具に見えますが、普通に例に出した安物も店頭に並んでます。
ちなみにあの手の激安工具セットは九割方他の付属品も使い物にならないので、工具箱と必要な物をバラで買った方が結果的に必要な物を安く揃えられて愛着も湧きます。
コマに関しては、別にブランド物じゃなくてもちゃんと面接触でボールロックのくぼみもある、普通に使えるコマもホームセンターに売ってるので、初めてならとりあえずその辺をチョイスしておけばイイと思います。
ちなみにアストロのコマも面接触でDIYなら十分使えるクオリティです。
アストロもはっきり言って安いだけあって安物ですが、普通のコマに関しては十分使える品質なので、何のこっちゃわからないって場合はとりあえずアストロで買ってみるのもアリかと思います。
初めての車弄りの為の初めての工具は、いきなりブランド物に手を出せる程のお金も知識も無いし、とりあえずとそこらへんの怪しげな安物を選びがちですが(例外無く自分もそうでした)、安物の中でも最低限の品質を超えた物を選びたいところですね。
とりあえず例に出したような点接触でボールロックのくぼみも無い安物中の安物はまともに締め付けが出来ない上に車を痛めつける粗悪品なので避けましょう。
締め付けが出来ないと事故にも繋がりますしね。
ちなみに例に出した安物ソケットは自分が中学生の時に自転車弄りで使ってた物です。当時はボルトナットがナメりまくるのは自分が馬鹿力で閉め過ぎてるだけだと思ってました。
もちろん今は使ってませんが安物とは言え中学生の時の愛車のボルトナットを散々ナメらせた思い出のコマなので今だに大事に持ってます。
だいぶ適当に書きましたが、初めて工具を買う方の参考にでもなれば幸いです。
最低限のレベルを下回った粗悪な工具を使うか、ちゃんとした工具を使うかで、同じ内容の整備でも効率も精度も楽しさも違ってくると思うので、DIYを楽しみたいならまず工具にこだわってみると、より車って言うオモチャを楽しめるんじゃないかなと思います。
意外と今回書いた点接触と面接触の関係を知らずに気付かず使ってる人も見るので、やけにボルトナットがナメる気がする方は是非、工具箱をチェックしてみてください。
気が向いたらまた何かの工具の紹介でもしようかと思います。