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BMWF30世代の3シリーズをベースにしたアルピナは素晴らしいクルマだ.
B3の素晴らしいエンジンフィーリングとエグゾースト.D3の上質でありながら湧き出るような太いトルク.わかりやすく目を見張るものがたくさんある.スポーツモードでの足回りはまさに理想的であり,デフォルトでコンフォートになる設定が惜しいほどだ.
ブレーキとハンドルのフィーリングなどはまさに驚きだと言いたい.カーブの入り口でブレーキを残しながらハンドルを切り始めるときに明らかになるそのリニアさ.しかもコーナーの出口でハンドルを戻すときもやはり同じようにリニアだ.さらに,ハンドルとブレーキがそれぞれ滑らかに連動していながら,それぞれが独立したリニアリティを保っている.作法には反するけれど,例えばハンドルを切り増している最中に,ブレーキを踏み足しても,驚くほどハンドルの感触が変わらない.まさに感動だ.
感動の極みだ.
見た目も良い.ローターが大径化され,キャリパーが塗装された現行のアルピナ3番のエクステリアは,さらにインチアップしたホイールともあいまって,上質なスポーティネスを体現している.インテリアは相変わらず素敵だ.それでいて,どこかで3シリーズらしいDセグメントらしさというか,簡素な雰囲気のようなものも残っているところがさらに好印象である.
オーディオが改善されていたのもうれしい誤算だし,ヘッドアップディスプレイやアクティブクルーズコントロールが「アルピナとしては適切な価格」でつけられるのも自分には魅力だ.
それなりの走行距離を走っていた試乗車のB3では,ロードノイズが割と気になった.けれど,車の性格上20インチのミシュラン製スポーツタイヤを履いているのである程度は仕方がないだろう.5シリーズになるとボディの遮音性が格段に上がるのでおそらくもっと静かなのだろうが,やはりサイズとして3番にしておきたいという僕の思いを変えるほどでもない.一方で,慣らしが終わったばかりのD3に乗ってみると,エンジンも(良くも悪くも)ぐっと静かで,タイヤが新しいからか19インチだからかは分からないが,今度はロードノイズもまったく気にならない.
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でもどこか腑に落ちない.ディーラーに三回も訪れ,B3とD3の合計で三時間は試乗させてもらったと思うが,それでもこのクルマがどういう素性なのか分かったという気にあまりなれない.
スポーツモードにしてみたりマニュアルモードでシフトアップシフトダウンを試してみたり,キックダウンして加速してみたりエンジンブレーキで減速してみたり,いろいろやってみるのだが「なんとなくまだ先がありそうな感じ」が残る.「まだまだ僕の素性は明かせませんよ」と車に言われているような気がする.
それは時々あるような,「ドライビングインフォメーションが希薄」ということではない.むしろ,路面の状況や前後加重の具合やGのかかりかたなどをとてもナチュラルな潤沢さで伝えてくるクルマだと思う.
「クルマとの一体感に乏しい」というのでもない.むしろ,ほとんど遊びがないと思わせるほどドライバーの操作に対してピタっとあとを付いてくるような挙動を示すクルマだと思う.
「速いけれどエモーションがない」というのでもない.むしろ,純度の高いエモーションをごく控えめながらはっきりと持ちあわせているクルマだと思う.
ただ,色々試してみてもどこか本性をまだ隠しているのではないかと思わせるような雰囲気が残る.
つづく
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アルピナ | 日記
Posted at
2014/06/14 22:08:24