新聞の失恋

読むだけ読んだら、もう私を捨てるの？
あれほど、いつまでも取ってくれる、って言ったじゃない！
どんなに強い雨の日だって、ビニールガッパ着て、
あなたの元にやってきた！
あなたに会いたかったのよ！
洗剤やタオルだって、こんなにたくさん貢いだのに！
まさか、他にいい新聞ができたんじゃないでしょうね！？
朝日！？　産経！？
あなた、私だけを愛してくれるんじゃなかったの？
あれは私の勘違いだったの！？
インクであなたの手が真っ黒になるまで
寄り添いあったのに・・・。

ねえ・・・、もう元には戻れないの？
わかったわ・・。
いい？　私には恐いおにいさんがいるのよ？
いいつけるわよ！？
それでもいいなら、私を捨ててごらんなさい！

・・・「捨てるんじゃない、もう一紙取るだけだ。」・・・。
ひ、ひどい！　二股じゃないの！！！
イヤ！　私だけを愛して！
私だけを見つめて！

「じゃあ、君は僕だけのモノか？
お隣さんちのポストにも入ってないか？」

・・・う・・・、
それは～、そのぅ・・・。
色々事情がありましてぇ～、
販売部数の問題とかぁ～・・・。
あ！　はい、夕刊の時間です！
あと、よろしくね！　夕刊さん！