「最期の恋」　第7話

第6話までは、こちら。


ストーカーの「ヤツ」が現れなくなって２ヶ月ほどたった、ある金曜日の夜。

オレもみひろも残業もなかったので、最近行きつけの居酒屋で合流した。

ストーカーのことはすっかり忘れていた。

みひろはいつもの笑顔。

オレはいつもの冗談。

店の主人にも顔を覚えられ、

「あんたら、いつも仲がいいねえ。」

などと冷やかされた。

酔いもほどよく周り、会計をして店を出ようとした時、

一人の男が入ってきた。

オレはただの客だと思い、気にも留めなかったが、みひろが

「あ！」

と声を上げた。

オレはすぐに気づいた。

「おまえか。オレ達につきまとってるヤツは。」

「つきまとってるのはお前の方だろう？ラウダさんよ？」

「なに？」

「みひろは今でもオレの女だ。なあ？みひろ？

みひろに言われたようにオレはあの時から変わったんだ。

もう束縛もしないし、暴力も振るわない。

だからオレとみひろはまた昔のオレ達に戻るんだよな？」

みひろは怯えていた。

「私とあなたは、もう終わったのよ・・・。」

と言うのが精一杯のようだった。

オレは

「なあ、あんた、もうオレ達にかまわないでくれないか？

あんたなら、オレなんかよりずっとモテるだろ？」

「口出しするんじゃねえ！なあ、みひろ。

オレはみひろとのことが会社にバレて、辞めざるを得なくなった。

今はバイト生活だ。

おまえが警察なんかに相談したからだ！」

ふと、ヤツの右手を見ると包丁が握られていた。

居酒屋の店主が気づき、みひろを店の奥に連れて行った。

それを見たヤツは包丁を構え、向かってきた。

オレは「みひろが刺される！」と思い、ヤツの行く手を阻んだ。

包丁は避けたつもりだったが、わき腹に2回、鋭い痛みが走った・・・。