
自動車やバイクで当たり、外れ、などと言われることがある。
これは生産上の工作精度の公差によるもので、理想値に近いものを当たり、遠いものを外れ、とすることである。
まれに公差の適正値から外れてしまったものが流通してしまう場合もあり、このような車体は外れの中の大外れと言える。
さて、今回はEVのみならず車体の当たり、外れについて考察してみたい。
タイトル画像の三台はいずれもVZシャシーと言われる車体をベースとした
もので、違いは被せるカウルとパーツだけであり、動力上の差はない。
しかし、実際に走行させてみるとパーツの性能差を考慮しても考えられない
差がでてしまう。
ミニ四駆のモーターは大別するとチューン系、ダッシュ系があり、ダッシュ系が
上位のモーターとなる。
この三台、一番左の車体にダッシュ系、右と真ん中の車体にチューン系
それぞれのモーターを搭載、比較してみるとチューン系を積んだ二台のほうが
ダッシュ系を積んだ車体よりも速い。
車で言えばターボ無しシルビアのQとターボ有の180を比較してシルビアの
ほうが速いようなものである。
数グラムの重さを揃えたり、カウルを交換したり、駆動系のパーツを変えたり
いろいろと試しはしたが結果は変わらない。
これはもう、シャシーに問題があるとしか考えられない、そう結論が着いたところで新たに一番、右の車体を購入。
シャシーだけを乗せ換えたところ、一気に速くなった。
やはり、シャシーに問題があったのだ。
なにが違うのか、詳しく観察したところ若干ではあるがモーターのピニオンギア
を受ける部分のカウンターギア軸穴が緩いようにみえる。
そのため、走行中にギアの嚙み合わせが甘く、駆動損失が発生していると思われる。
なぜ、このような事が発生するのか?
考えられるのは以下の原因である。
① 金型の劣化ないし不良
② 劣悪な素材の使用
工場の生産ラインがどのような体制になっているのか不明であるし
タミヤの工作精度を担当する人間でないと解らないであろう。
また、タミヤ側はおそらくこの問題を承知はしているであろうが、
あくまで、子供の玩具である、という観点からは許容される範囲内という
考えなのであろう。
ただ、ここで重要なのはミニ四駆という単純なモーター玩具ですら
無視できない個体差が発生するという事である。
これが、より複雑な自動車やバイクといった工業製品にいたっては
金型や素材だけでなく、組付け時においても公差が発生する。
どんなに品質の管理を高めても個体差を無くす事は不可能であろう。
実際、モータースポーツの世界では精度の高い部品を選別して
精度を高く組み上げるという事は当たり前のように行われている。
市販車の場合、同じ車種を限界付近で比較する事などはほとんどないで
あろうし、公差の範囲内であれば大きな問題が発生する事はほぼ無いだろう。
しかし、公差から外れた大外れな車体を引き当て、外れ?してしまった場合
深刻なトラブルに悩まされ、修正が効かない事もありえる。
特に、今回のミニ四駆の例においては原因がシャシーにあったことから
これがもし、本物の車やバイクだったらと考えたらシャシーは交換など
不可能であり、致命的な外れ車体という事になってしまう。
では、このような外れ車体を引かない方法はないだろうか?
それには、なぜ外れが発生するのかを考えれば出来る範囲内での
予防は可能ではないか、と考察してみたい。
考えられる理由としては以下が挙げられる。
① 組付け不良
② 金型の劣化
③ 劣悪素材の使用
④ 公差範囲の拡大適用
⑤ 検品体制の悪化
では、それぞれどのような事態による発生が考えられるだろうか?
① 組付け不良
組付け時における作業のミス
なぜミスが発生するかは工員が未熟による作業ミスであったり、
寝不足であったり、原因は様々であろうが作業要員を買い手は
選べるわけもなく、回避するのは難しい原因と言える。
それでも、少しでも回避する方法がないではない。
それは、組付け不良等が許されない車両を購入することである。
では、どのような車両が該当するのだろうか。
まず、熟練工の手組を売りにしている特別仕様車であったり、
各メーカーの旗艦車、組付け不良がブランドイメージを損なう車種
これらが考えられる。
例としては、ホンダのTYPE-Rシリーズであったり、日産のGT-R
ブランドでいえばレクサス、ベンツ、BMWこんなところであろうか。
ただ、いずれも高価な車種であり、特別な車である。
組付け不良を回避するには当初から組付け不良の回避を企図した
車両を購入するしかない。と考えられる。
② 金型の劣化
エンジン等の金属部品は金型に流し込むことでつくられるものが多い。
いわゆる鋳造というものである。
この金型が使用していると劣化していき完成品の精度が
低下していく。それにより公差のばらつきを生む。
プラモデルでバリが残っているものがある。
あれは典型的な金型の劣化によるものである。
プラモデル程度であればよいが、金属部品やエンジンのシリンダーヘッド
や腰下等になるとオイルラインや冷却水ラインもあり、複雑な形状となる。
劣化した金型でつくった劣化した部品では、どんなに精度を高く
組付けても歪みや隙間が発生してしまう。
それが長期間の使用により、オイル漏れ等の不調を引き起こす原因に
なりかねない。
とはいえ、基本的には公差の範囲内であるので、
いわゆる、ただちに不調が発生するわけではない。
のだが、確実に不調へと向かっていく。
では、そんな劣化品をつかまされない方法はあるのだろうか?
これは劣化した金型を使ってない車両を購入するしかない。
これもまた購入者がどうにか出来るものではない。
とはいえ、金型は使えば使うほど劣化するわけで、劣化する前の段階で
購入する、のが回避方法と言えるだろう。
新車であれば発売初期に購入。
中古であれば生産期間初期のモデルを購入する事である。
今回のミニ四駆の事例がまさにこれに該当すると考えられる。
速い車体は生産初期のモデルで遅い車体は後期のモデルである。
しかしながらVZシャシーは以前から販売されているものであり、
同種の金型が使われているかも不明である。
そのため経年劣化によるものか、そもそも金型の当たり外れに
よるものか不明であるが、原因は金型であると考えられる。
自動車やバイクのエンジン等に関しては金型の数はそこまで多くは
ないだろう。ゆえに金型自体の当たり、外れよりも経年劣化による
ものが大半と考えられる。
だが、ここでひとつ問題がある。
自動車やバイクに限った話ではなく、工業製品全般に渡る問題である。
それは生産初期モデルは必ず、初期不良が発生することである。
メーカーも考えられる限りのテストを繰り返して商品化するわけだが
それでも必ず不良は発生する。
それら不良は次期モデルであったり、次期モデルでなくとも順次、
改良が施されていき、なかには公表されない内容もあるだろう。
これらを考慮すると相反する問題に直面し、ジレンマに陥る。
初期モデルを選ぶと工作精度の高い車体になるが初期不良
が発生する可能性が高い。
後期モデルを選ぶと工作精度は低いが初期不良が発生する可能性は低い
という事である。
では、工作精度が高く、初期不良が少ない車体は選べないのか?
これは、工業製品の宿命として選べないであろう。
なぜなら、生産後期で先の無い車両の金型をわざわざ新造するとは
考えられないからである。
なんかしらの致命的な問題が発生し、金型を新造する可能性がない、
とは言えないが、金型に由来する問題は試作段階、生産初期で
発生する可能性が高い。
初期不良に関しても同様で完全無欠なテストは不可能であり、
減らすことは出来ても無くす事は出来ないだろう。
結論としては、どうしてもベストな選択はあり得ない。
では、より良い選択をするしかない。
具体的には工作精度が出来るだけ高く、初期不良が出来るだけ少ない車両が
生産される時期を選べばよいのである。
この条件に合致するのが初期型から一回目のマイナーチェンジを受けた車両
が該当する。
初期不良が改良され、金型に関しても生産末期ほどは傷んでないと考えられる
からである。
また不良以外にも実際の運用結果から、改良が加えられていたり
商品価値が向上している事もある。
以上の事から金型劣化の問題を出来るだけ回避しつつ、初期不良がある
車両も回避する手段としては生産中期型を購入するのが良いのではないか
と考えられる。
③ 劣悪素材の使用
これもまた購入者はどうしようもない。
しかし、生産者の立場に立てば多少の解決策はあるように思える。
販売、当初からトラブルが発生しては商品として致命的に評判が落ちてしまう。
そのため生産当初や初期は納車後のトラブルや故障等を回避すべく、安全マージンをとって良質な素材が使われる可能性が高い。
それが実際、販売され運用されていく過程においてそれほど良質な素材でなくとも問題が発生しない、と判断されればコスト削減を目的として素材の質を低下
させることが考えられる。
これは目に見える商品価値を下げずに利幅を増やすことが可能なのでメーカーと
しては公表はしないだろうが行われているはずである。
これも②の金型の劣化と同様のジレンマに陥る。
ただし、逆に実際に運用したら想定よりも部品にかかる負荷が高く、
当初、使われていた素材よりも良質な素材に変えなければいけない
という場合もあるだろう。
これらを考慮すると出来るだけベターな選択としてはやはり中期生産モデルとなるだろう。
なぜなら、素材の質を落としてよいほどには運用データも取れてなく、
むしろ初期不良の問題を克服するために良質な素材へと変更されている箇所もあることが想定されるからであり、ユーザーとしてはより良い車両を購入することが可能となるであろう。
メーカーとしては初期不良は早急に対策しなければ商品への不信感が高まり
致命的な販売不振へと繋がるからである。
また、この段階でのコスト削減はあらたな問題を引き起こす可能性が高く
メーカーとしては安易なコスト削減策には踏み切れないだろう事が想定される。
目に見えない素材のコスト削減が行われるとしたら十分に不良対策が施され
運用実績とデータの蓄積が行われた生産後期モデルとなるであろう。
④ 公差範囲の拡大適用