今回の欧州自動車博物館巡りの旅 オートワールド パート1は、ここAUTOWORLD(オートワールド)の常設展示車にフォーカスしてお届けします。
オートワールドはいわゆる総合自動車博物館なので、展示車両は自動車の黎明期のモデルから近年のモデルまで多種多様なクルマが展示されています。ちょうど、日本の博物館で言うと、河口湖自動車博物館や日本自動車博物館のようなイメージです。
パート1では、自動車雑誌でもほとんど取り上げられることのない自動車黎明期のクルマ達を中心に、かなり抜粋してレポートします。(自動車の歴史は長いので、今回も長文です^^;)
この時代のクルマは、現代の自動車とは似ても似つかないカタチも相まって、一見とっつきにくい部類かもしれませんが、よくよく見ていくと黎明期独特の面白いメカニズムや、今をときめくあのメーカーのルーツを発見できたり、あのメーカーの伝説的な創始者が手掛けた大衆車メーカーのクルマなど、とても興味深いクルマ達ばかりなのです!
では、こんな1920年代テイストでカバーされた「Crazy In Love」↓でも聴きながら、自動車黎明期にタイムスリップしていきましょう♪
1896年 レオンボレー タイプ ヴォワチュレット(LEON BOLLEE Type Voiturette):フランス
フランスで一番最初に蒸気自動車の製造に成功したアメディ・ボレーの息子であるレオン・ボレーは、ベルト式のトランスミッションを備えた小型のガソリン自動車を製作しました。このクルマは2シーターの3輪車でしたが、サスペンションを備えていませんでした。
フロント2輪で、リヤ1輪のヴォワチュレット、つまりサイクルカーですね。個人的には3輪の場合は、この前2輪,後1輪のディメンションが僕は一番好きです♪
しかし、操作系統の配置から言って後部座席がドライバーズシートのように見えますが、これ前にガタイのいい奴が乗ってたら邪魔だろうな・・・^^;
1904年 オールズモービル “カーヴドダッシュ”(OLDSMOBILE “Curved Dash”):アメリカ
車両解説によるとアメリカでとても人気のあったクルマで、1901年~1906年の間にデトロイトで相当数が生産されたそうです。また、サスペンションに大きくて柔らかめのスプリングを採用することで、アメリカのデコボコ道に対処することが出来たそうです。
このクルマの名称は、読んで字のごとく“ダッシュボードがカーブしている”からでしょう^^; ダッシュボードというと、今日ではすっかり内装品になっていますが、まだ自動車が“馬なし馬車”と呼ばれていた自動車黎明期には、ダッシュボードは馬車の名残で馬がダッシュした時に蹴り上げた小石や泥はねなどから乗員を守るための保護板でした。
また、アメ車のフワフワなサスペンションは、このころから既にアメ車のキャラクターになっていたようですね♪
1906年 ラクロワ・ド・ラヴィル “La Nef”(LACROIX DE LAVILLE “La Nef”):フランス
前方の1点を頂点とした操舵系を持ったユニークな木製シャシに、ド・ディオン・ブートンのエンジンを搭載したこの3輪車は、自動車黎明期に様々な多様性を示しました。ちなみにフロントに搭載された単気筒エンジンは699ccから10,5馬力を発揮したそうです。
このクルマ、様々な革新的な試みが見られますが、なかでも個人的に気になったのが、ステアリング連動型ヘッドライトですね。まぁ、連動型というかステアリング上にヘッドライトが付いているので当然っちゃ当然ですが^^;
1910年 シザール&ノーダン(SIZAIRE & NAUDIN):フランス
このクルマのユニークな点は、前端に横方向に装着された板バネを用いたことで、左右独立懸架となったサスペンションです。また、このクルマは当時可能であった、ヘッドランプ,ウインドスクリーン,フードなどのすべてのアクセサリーを装着しています。
1910年代に入ると、ようやくクルマの原型を留めてきましたね!一見、クルマのサスペンションは、アームによるスイングなどをせずに、その場で上下するのが理想のようにも思えますが、やはりロール時の対地キャンバー角変化やサスペンション構成部品自体の剛性も考慮すると、なかなか難しいのでしょうね。
1913年 プジョー タイプBP-1 べべ(PEUGEOT Type BP-1 Bebe):フランス
ようやく現役の自動車メーカーのクルマが出てきました。この通称“Bebe”と言われるモデルは、1909年に当時ドイツ帝国領(現フランス領)であったアルザス地方のモールスハイムに、自らの名を冠した自動車製造会社“ブガッティ(Bugatti)”を設立し、独立していたエットーレ・ブガッティの手により設計されました。なぜか、右フロントだけダブルタイヤになっていますが、詳細は不明・・・^^;
1911年 ロールス・ロイス シルバーゴースト(ROLLS-ROYCE Silver Ghost):イギリス
フレデリック・ヘンリー・ロイスが製作したクルマを、当時輸入自動車販売をしていたチャールズ・ロールズが販売を一手に受けることで始まったロールス・ロイス社が、シルバーゴーストを発表したのは1906年でした。
当時の顧客達は、ロールス・ロイス社からヘッドライトやホイール,ウインドスクリーンの付いていない“ベアシャシー”を購入し、顧客自身でボデーワーク専門のコーチビルダーを選んでボデーを造らせるスタイルが一般的でした。
1915年 ベンツ 16/40HP(BENZ 16/40HP):ドイツ
1886年、カール・ベンツの発明した世界初のガソリン自動車第1号に端を発するベンツ社は、積極的にラリーイベントやレース,速度記録などに挑み、数々の勝利を収めました。この取り外し可能なボデーを持った最高級車は、1914年に中欧のカルパティアで行われたラリーイベントでの優勝を記念して“Karpatensieger(カルパティアの勝者)”と呼ばれました。
1915年当時のベンツ社は、“メルセデス”の商標で自動車を製造していたダイムラー社とは、まだ合併前で全く別の会社でした。現在のメルセデス・ベンツのトレードマークは、あの有名な“月桂樹の葉とスリーポインテッドスター”ですが、“スリーポインテッドスター”はダイムラー社のエンブレムであったため、この当時のベンツ車には月桂樹の葉の中に“BENZ”と書かれたエンブレムを採用していました。
1924年 ルノー 18CV(RENAULT 18CV):フランス
「1920年代の美」を象徴するカタチをしたこのルノーは、均整の取れたシャシーにベルギー リエージュのコーチビルダー“Gamette”が仕立てたランドーレットボデーが架装されています。
1920年代は自動車にとって最初の黄金期だと思います。このルノーもしかりですが、黎明期に様々な様式が提案された自動車が、ようやく1つの完成を見たのが1920年代ではないでしょうか。時代背景的にも、ちょうど第一次大戦と第二次大戦の狭間の“狂乱の20年代”と共に自動車文化も花を開いたようです。
1922年 フォード モデルT(Ford Model T):アメリカ
フォード モデルTのオープンツアラー仕様です。モデルTは1908年~1927年にかけて1500万台以上が造られました。
1922年 デイムラー TS 6.30(DAIMLER TS 6.30):イギリス
英国王室は、当時英国でクルマに関心を持った人達の筆頭で、1896年以来ドイツのダイムラー社からのライセンス供与により英国で生産されていたデイムラー社を贔屓にしていました。一般的に考えられるのとは逆に、英国王室ではロールスロイス車ではなくデイムラー車が採用され続け、初めてロールスロイス車が採用されたのは1950年代に入ってからのことでした。このクルマはメアリー女王の即位中に使用されたクルマで、インテリアには当時英国の植民地であったインド産の蛇革が奢られています。
近年はジャガー車のバッジエンジニアリング的な位置に甘んじているデイムラーブランドですが、歴史的にはジャガーはもとよりロールスロイスにも引けを取らない名門自動車会社ですね。ラジエーターグリル上部の波打った形状は、近年のデイムラー車にもしっかり受け継がれていますね♪
1928年 ベントレー 4 1/2リッター(BENTLEY 4 1/2Litre):イギリス
このクルマはベントレー3リッター用のシャシに、レース用のより強力な4.5リッターエンジンを搭載しています。それにより最高速度は155km/hに達することができ、当時のスピードマニアやレースマニアをターゲットにしていました。また、ベントレーと言えば1920年代のルマン24時間レースで数々の勝利を挙げたことでも有名です。
1925年 ハノマーグ(HANOMAG):ドイツ
“Kommisbrot(軍用パン)”のニックネームで呼ばれたこのクルマは、ドイツで最初に成功したクルマの1台でした。また、初めて自動車にポンツーン形状(フェンダーと車体が一体化した形状≒フラッシュサーフェイス形状)を採用した例でもあります。
1931年 オースティン セヴン スワロー(AUSTIN Seven Swallow):イギリス
当時のポピュラーな英国車であるオースティンセヴンに、スワローがボデー架装を施したクルマです。ウイリアム・ライオンズとウイリアムズ・ウォームズレーによって、自動車のボデー架装とサイドカーの製造からスタートしたスワロー(スワロー・サイドカー・カンパニー)は、その後“SSカーズ・リミテッド”を経て後に“ジャガー カーズ・リミテッド”と社名を変更しました。そう、このオースティン セヴンは、つまりあのジャガー(JAGUAR)のルーツとなる訳です♪
1899年 ジャメ・コンタント号(Jamais Contente):ベルギー
最後はちょっと異色ですが、このクルマは自動車史上初めて100km/hに到達した電気自動車です。その記録は、1899年4月29日にフランス パリ近郊でベルギー人のレーシングドライバー カミーユ・ジェナッツィのドライブによって打ち立てられました。
パワーユニットには50kwを発生する2基のモーターを使用し、2Vのバッテリー100個によって駆動することで最高速度105.9km/hをマークしたそうです。
ジャメ・コンタント号は、世界で初めて100km/hを突破したクルマとして、自動車速度記録史では有名ですが、まさかオートワールドで会えるとは思っていませんでした♪
この車両は、当時の写真などと比べると車輪の径が大きかったりと、実車ではなく後年に復元されたモデルのようです。
まだ19世紀の時代に、既に最高速をマークするうえでは空力処理が必要であると認識していたことが、このトーピード(魚雷)型のボデーを見ても解りますね。
しかしこのジャメ・コンタント号、速度記録樹立当時の写真で見るともう少し流線型の形状かと思っていましたが、筒にノーズコーンを取り付けたような2次元的な形状で構成されていたんですね・・・^^;
やはり、自動車黎明期のクルマは現代の自動車メーカーのルーツが発見できたり、淘汰されてしまった謎の技術が見られたりと見どころ満載で興味が尽きず、今回も長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます^^;
次回もオートワールドの常設展示車にフォーカスしてお届けします~( ^^)/
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