永らくお待たせしました!秋のイベントシーズン到来で、しばらくご無沙汰していた欧州自動車博物館巡りの旅ですが、引き続きレポートしていきたいと思います^^;
さて、この旅のメインイベントとして大フィーチャーしてきたベルギーはブリュッセルの自動車博物館オートワールドで行われていた企画展 “FERDINAND PORSCHE THE HERITAGE FROM ELECTRIC TO ELECTRIC”のレポートも、いよいよ最後となりました。
今回のオートワールド 特別編③は、大きく3つのステージに分かれて展示されていたポルシェ展の3ステージ目(主にブッツィ・ポルシェ〈フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ〉の手によるポルシェ車とフェルディナント・ピエヒの手によるレンシュポルトの数々から現在まで)を中心にレポートしていきます。(今回も通常通り長編なので(笑)、お時間に余裕のある時にお楽しみください^^;)
1964年 ポルシェ 904 カレラGTS(PORSCHE 904 GTS)
レースシーンで成功を収めていた“カレラアバルト”及び“スパイダーシリーズ”に代わるGTカーとして、ブッツィ・ポルシェによって設計されました。
904は550Spyderに端を発する一連のSpyderシリーズとは異なるプレス鋼板製のボックス断面構造フレームと、軽量なファイバーボデー(FRP製)とをボルトと接着剤で結合することで相互に剛性を補完する構造を持っていました。
また、変速機には356に代わるプロダクションモデルとして開発が進められていた“901(911シリーズ)”の5速ギヤボックスが採用されました。
パワーユニットは911用の6気筒ユニットをベースとした6気筒レーシングユニットの搭載を前提に開発されましたが、カレラアバルト用の4気筒ユニット“フールマンユニット”が180馬力に達していたことから、この4気筒ユニットがキャリーオーバーされています。
また、最終的には生産された904のうち10台には6気筒ユニットが、さらに6台には8気筒ユニットが搭載されたようです。
今日では歴代レンシュポルトの中でも成功したモデルとして有名であり、日本グランプリでの活躍もあってか日本でも絶大的な人気を誇る904ですが、当時のポルシェ陣営としてはプレス鋼板製シャシの剛性をFRPボデーが補完するという挑戦的な構造のせいもあり、FRPの出来次第で1台1台の車両剛性に大きなバラツキが生まれることやFRPの経年劣化によるボデー剛性の低下など、なかなか手を焼いたクルマだったようです^^;
1965年 ポルシェ 911(PORSCHE 911)
ポルシェは成功作となった356シリーズに替えて、よりパワフルな後継車“911”を開発しました。この911シリーズによって、ポルシェは伝説的な地位を獲得することになりました。
当初“901”と呼ばれていたこのクルマは、後に“911”と名を変えて生産されることになりました。車体設計は904同様ブッツィ・ポルシェによるもので、この911開発チームにはフェルディナント・ポルシェの娘“ルイーズ・ピエヒ”の次男でもあるフェルディナント・ピエヒも含まれていました。
911シリーズは、その後も様々な進化を重ねて50年を経た現在でも生産される大成功モデルとなりました。
展示車両は'65年式ということで、初期のSWB(ショートホイールベース)ボデーにスチールホイール+ハブキャップを装着していますね。個人的には、この356Cから採用されたディスクブレーキ対応のPCD130,5穴の“鉄チンスタイル(めっきじゃない方が良いなぁ~^^;)”結構好きだったりします。
1967年 ポルシェ 912タルガ(PORSCHE 912 TARGA)
当時、米国でコンバーチブルモデルの横転時の安全性の面から規制強化への動きが盛んになり、その対応策としてブッツィ・ポルシェが開発したのが、このスティール製の固定ロールバーと取り外し式のトップ、そして開閉可能なビニール製リヤウインドウを備えたモデルでした。
この革新的なコンセプトは“タルガ(targa)”と呼ばれ、その後改良を重ねて今日でもラインナップされる人気モデルとなりました。
展示車両は、911シリーズが356シリーズと比べて高価格帯にシフトしたことから、ナインナップに加えられた4気筒モデル“912”のタルガです。
1973年 ポルシェ 911 カレラRS 2.7(PORSCHE 911 CARRERA RS 2.7)
このカレラRS2.7(Carrrera RS 2.7)は、簡素化された軽量ボデーに機械式燃料ポンプを備えた210馬力の水平対向6気筒エンジンが組み合わされ、1972~1973年にかけて1,590台が生産されました。そして当時、事実上最もポテンシャルの高いロードスポーツでありレーシングカーでもあったようです。
また、その素晴らしいエキゾーストノートとダックテールスポイラーは、伝統的なスタイルとなりました。
言わずと知れたナローポルシェのアイコン的存在“73カレラ”ですね。白+グリーンのカレラデカールの組み合わせは、初めて見たかもしれませんが、なかなかクリーンな印象でカッコイイですね♪
1971年 ポルシェ914/6(PORSCHE 914/6)
フォルクスワーゲンとポルシェにより共同で生産された4気筒のミッドエンジンスポーツカー“914”には、1968年より911Tの6気筒エンジンを搭載したポルシェ版の“914/6”が用意されました。
ちなみに、この展示車両は356時代に“ロードスター”のボデー架装をしたことでも知られるベルギーのコーチビルダー“D'Ieteren(ディーテレン)”のシンボルマークが貼られていました。
D'Ieterenは現在ベルギーにおけるフォルクスワーゲングループのディストリビューターを担っている様で、ブリュッセル市内にはD'Ieterenのコレクションを集めたギャラリーがあるようです。次回、ブリュッセルに来る機会があったら、こちらも是非行ってみたい^^;
1966年 ポルシェ 906 カレラ6(PORSCHE 906 CARRERA 6)
906カレラ6は、904カレラGTSに替わるレンシュポルトとして、フェルディナント・ピエヒによって設計されました。シャシ構成は、904でのプレス鋼板シャシとFRPボデーによる剛性の相互補完方式からは決別し、剛性の大半をスペースフレームが受け持ち、外板はFRPによるカウリングという構成となりました。
また、ロードゴーイングカーという一面も持ち合わせていた904とは異なり、純レーシングカーとして開発された906は、その後数々の進化を遂げながら伝説的な917まで続くポルシェ製レーシングカーの基礎を築き上げました。
1970年 ポルシェ 910/8 ベルクスパイダー(PORSCHE 910/8 BERGSPYDER)
ポルシェは長距離レースへ出場すると共に欧州ヒルクライム選手権へも意欲的に参戦しました。910は、904のプレス鋼板シャシをベースにしたヒルクライムレーサー“カンガルー”やコーリン・チャプマンがドイツGPのために持ち込んだロータスの足回り部品を一部流用したシャシを持つ“オロン・ヴィラール・ベルクスパイダー”での経験を経て、ヒルクライム車両として開発されました。
906からの外観上の大きな変更点としては、当時多くのF1マシンで採用され技術的に大きく進化していた13インチホイールを採用して、フロントフェンダー高が低められている点が挙げられます。
展示車両の“910/8 ベルクスパイダー”は、ヒルクライム専用にアルミ鋼管スペースフレームの採用や15Lの燃料タンク,ワイパーを廃止したミニマムサイズのウインドウ,ジェネレータ取り外しなど更なる軽量化が施されました。この軽量化技術は、後の“909ベルクスパイダー”で更にエスカレートし、908/3スパイダーへと継承されました。
1970年 ポルシェ 917K サイケデリック S/N:917-021(PORSCHE 917K PSYCHEDELIC S/N:917-021)
917は、革新的なレンシュポルトとして1969年に発表されました。917はアルミ鋼管スペースフレームシャシとFRP製カウリングからなる車体に、4.5リッター,520馬力の空冷水平対向12気筒エンジンを搭載していました。
この空冷水平対向12気筒エンジンは、既に生産が終了していたプロダクションモデルの販売名称(コードナンバーは902)と同じ“912”のコードナンバーであったことから開発当初、外部はその存在を全く知らなかったそうです^^;
917は数々の耐久シリーズで輝かしい勝利を収め、伝説的なレンシュポルトとなりました。展示車両のS/N:917-021は、1969年に製造された最初の25台の917のうちの1台で、フィンランドのプライベートチーム“AAW”が所有して、当初は黄色と赤のスポンサーカラーが施されていました。
1970年ルマンでのクラッシュ後、ポルシェがストックしていた917-012の部品の多くを使って修復された“021”は、’70年シーズン中に“サイケデリック”,“黄&赤のサイケデリックパターン”などに塗り替えられ、現在はこの“サイケデリック”カラーで余生を送っているようです。
1973年 ポルシェ 917K/30 スパイダー カンナム(PORSCHE 917K/30 SPYDER CANAM)
1972年からのスポーツカーシリーズは、レギュレーション変更によって“3リッター以下,最低重量650kg”という規定が設けられました。それによって、それまで培ってきた軽量化技術を生かすことが出来なくなったポルシェは、北米のCan-Amシリーズに917の活路を見出しました。
この917/30は、1973年のCan-Amシーズンにポルシェが投入したクルマで、917の空冷水平対向12気筒ユニットは5,374ccまで拡大され、ターボ過給により1200馬力を発揮しました。
1977年 ポルシェ 935/77 マルティニ(PORSCHE 935/77 MARTINI)
935は、911ターボをベースに当時のグループ5規格に沿って1976年に製作されました。ポルシェはレギュレーションの抜け道を巧く利用して、“911”のコンセプトをそのままに極限までモディファイされました。
この'77年モデルは、それまでのシングルターボに換えてKKK製の小型ターボを各バンクに備える改良が施された930/78ユニットを搭載し590馬力を発揮したようです。
1982年 ポルシェ 956(PORSCHE 956)
956は、FIAが1982年から施行した燃料消費量制限を設けた新規定“グループC”に則って開発されました。シャシ構造は、ポルシェ初となるアルミ製モノコックを採用し、グランドエフェクトを生み出す構造になっていました。
956は初年度から完璧な成功を収め、ポルシェは956とスタードライバー ジャッキー・イクスの活躍によって'82年の選手権を支配しました。
当時の耐久シリーズで最も多くの勝利を挙げたのは、この956とその改良版である962Cであり、ルマンでの6連勝のほか1982年から1994年までに5回の世界選手権制覇を成し遂げています。
個人的には、グループCカーとして生まれた962Cが、94年のルマンにレギュレーションの狭間を突いてナンバー付車両の“GTカー”として返り咲いた“ダウアー962GT”が強烈に印象に残っています。このGT1発足初年度に、既にポルシェに見破られた抜け道は、その後各メーカーがこぞって開拓しGT1消滅につながることにもなりました^^;
1978年 ポルシェ 911SC サファリ(PORSCHE 911 SC SAFARI)
1978年、3リッターの空冷水平対向6気筒ユニットを備えた2台の911SCが“イースト・アフリカン・サファリ(サファリラリー)”に向けて準備されました。
この2台のSCはビョルン・ワルデガルド/ハンス・ソルセリウス組が4位,ビック・プレストンJr/ロブ・ライアル組が2位でフィニッシュしました。
1986年 ポルシェ 959(PORSCHE 959)
このクルマが発表された'83年当時、この“959”は当時最先端の様々なテクノロジーが詰め込まれた革命的なクルマでした。その後、長い開発期間を経て1987年にリリースされました。
959は、その後のポルシェブランドの方向性を示す最新技術のショーケース的な役割もあり、後に続く911の4輪駆動仕様(カレラ4)の出発点にもなりました。
1986年 マクラーレン TAG MP4/2C フォーミュラー1(McLAREN TAG MP4/2C FORMURA 1)
TAG-ポルシェエンジンは、マクラーレンのフォーミュラーカー“MP4”のために、ヴァイザッハで開発されました。このエンジンはバンク角80°の1499cc,V型6気筒ツインターボで11500rpmで700馬力を発揮しました。
1984年にTAG-マクラーレンはニキ・ラウダとアラン・プロストのドライブで全16戦中12戦で勝利し、1983~1987年の間に25戦で優勝を成し遂げました。また、1984年にはニキ・ラウダが、1985年と1986年にはアラン・プロストが、それぞれワールドチャンピョンに輝いでいます。
2013年 ポルシェ 918スパイダー プロトタイプ(PORSCHE 918 SPYDER PROTOTYPE)
918Spyderは、2013年のフランクフルトショーで発表されました。ポルシェのエンジニアは次世代のハイパフォーマンスカーとして、内燃機関とモーターを組み合わせたシステムを開発しました。
この918は、後輪の駆動には“RS Spyder(LMP2カー)”に使われたユニットを改良した4600cc,608馬力のV型8気筒エンジンが用いられ、これに加えて前輪には2基の
モーターユニットが備えられ、合計で最大887馬力を発揮するそうです。これらの駆動比率はいくつかのモードがあり、前輪駆動,後輪駆動,4輪駆動の組み合わせから様々な駆動ヴァリエーションを選択できるようです。
展示車両は918のプロトタイプということで、パッと見ただけでもバンパーサイドのウインカー有無やサイドエキゾーストなど、市販モデルとは異なるディテールも有りますが、この“918 Spyder”は前述の959同様、ポルシェブランドのこれからを示す1台であることには違いないでしょう。
長きにわたって特集してきた企画展 “FERDINAND PORSCHE THE HERITAGE FROM ELECTRIC TO ELECTRIC”の特集も以上になります。
この“AUTOWORLD(オートワールド)”という自動車博物館も、総合自動車博物館としてボリューム満点でしたが、今回行われていたこのポルシェ展の充実のラインナップには只々圧倒されるばかり^^;
改めて、モータースポーツの本場“欧州”の底力を感じる企画展となりました。
欧州自動車博物館巡りの旅は充分な余韻と共にオートワールドを後にし、約1100km離れた次の目的地へと向かいます。
次回は自動車博物館巡りはおやすみして、プチ観光な休息日になります^^;
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