※WECの回は毎度語りに語り尽くした超々大作です。お時間のある時にゆっくりお楽しみくださいm(_ _)m
2023年9月9日(土) 深夜

富士スピードウェイを目指して、東北道を南下します。

圏央道経由で中央道に入ったころには、夜が明けてきました。
なんとか6時前には富士スピードウェイに到着しました!

大阪から観戦のkimu_ninety君とH君、そして久しぶりに同期のうさぎ㌘㌃も観戦に来てくれました~
今年の富士24時間耐久レース観戦から導入した"キノコタープ"を設営して準備万端です♪
道中で仮眠も2時間そこそこしかしていないので仮眠しようかと思ったのですが、今年のWECはハイパーカークラスが百花繚乱のごとく各メーカーがしのぎを削っていて、見どころ満載ということで、興奮が抑えられなくなって来たので(笑)、H君とうさぎ㌘㌃の3人でパドックに繰り出していきました~

昨年のWEC Fujiではまだコロナ禍の影響でパドックの一番ピットに近い通路は入ることができませんでしたが、今年は以前同様に解放されていました!
こちらは"ポルシェ ペンスキー モータースポーツ(PORSCHE PENSKE MOTORSPORT)"のパドックです。

ポルシェがついにWECの最高峰クラスに戻ってきました!

早速、LMDh車両のレギュレーションで作られた"ポルシェ 963(PORSCHE 963)"のフロントカウルが置かれています。

"963"のカウルを裏側から観察すると、フロントノーズ下から入った空気をモノコックとタイヤの間にうまく導入するような処理が観られますね。
ちなみに今回のWECカムバックにあたりポルシェが手を組んだのは、2000年代のALMS(アメリカ・ルマン・シリーズ)で上位クラスのアウディに勝ってしまうなどジャイアントキラーぶりを遺憾なく発揮した名車"ポルシェ RSスパイダー(PORSCHE RS Spyder)"↓でタッグを組んだアメリカの名門"ペンスキー(PENSKE)"です。

※2018年 ポルシェミュージアムにて撮影
今回も"ハイパーカー(HYPER CAR)"ではなく、"LMDh(ルマン デイトナh)"レギュレーションで車両を作ってきたことには、何か秘策があるのでしょうか。
こちらは"フェラーリ AFコルセ(Ferrari AF CORSE)"のパドック。

50年ぶりにワークス体制でスポーツカーレースシーン(及び、ルマン24h)に戻ってきたフェラーリのパドックは、思いのほか地味な印象を受けます。
個人的にルマンを走るフェラーリの記憶としては、1990年代にMOMOの創業者"ジャンピエロ・モレッティ"の依頼で"ダラーラ"によって開発され、プライベーターの手により参戦していた"フェラーリ 333SP(Ferrari 333SP)"↓が印象的でした。

※2014年 ムゼオフェラーリにて撮影
こちらは"キャデラック レーシング(CADILLAC RACING)"のパドック。
"デイトナ24時間耐久レース(Daytona 24h)"などIMSAの"DPi(デイトナ プロト インターナショナル)"クラスでは常連だったキャデラックが、"DPi"の生まれ変わり"LMDh"車両がWECにも参戦できるようになったことで、WECに乗り込んできました。

ルマンのキャデラックといえば、2000年代にナイトビジョン(暗視装置)搭載で話題になった"キャデラック ノーススター LMP900(CADILLAC Northstar LMP900)"↓が思い起こされますね。

※2018年 ルマンミュージアムにて撮影
こちらはLMGTAmクラスに"ポルシェ 911RSR-19(PORSCHE 911RSR-19)"で参戦している"プロジェクト 1-AO(PROJECT 1-AO)"のピットです。

アメリカの高級ファッションブランド"COACH"のキャラクターである恐竜の女の子"Rexy(レキシー)"とのコラボレーションで、今年のWEC Fujiの注目チームとなっています。
ちょうどフリープラクティス前の時間帯でドライバーが続々とピットに入っていきました。

ファンサービス中のアンドレ・ロッテラー(#6 ポルシェ ペンスキー モータースポーツ)。

ポルシェ ペンスキー モータースポーツ代表のロジャー・ペンスキー御大も姿を現しました!
パドックに同行したH君はレーシングドライバーマニアで、ほとんどのドライバーを顔を見ただけで判別がつく強者です。また、ドライバーとの2ショット写真コレクターでもあるので、今回はH君がドライバーを見つけて自分が「彼との2ショット撮るからよろしくね~!」的に英語で話しかけて、2ショット写真を大量ゲットしていました^^;
自分としても、アンドレ・ロッテラーやケヴィン・エストレ、ロイック・デュパルに今年のルマン覇者アントニオ・ジョビナッツィ、ハプスブルク家の末裔にして"王子"ことフェルディナント・ハプスブルク・ロートリンゲン達と会話ができて、充実のひと時でした♪
それではフリープラクティスが始まったので、ピット入口で観ていきましょう!
#31 チーム WRT オレカ07 - ギブソン (TEAM WRT ORECA 07 - Gibson)

まずは今年でWECシリーズ(ルマン24hは除く)では見納めのLMP2クラスの"TEAM WRT"のマシンが走ってきました。LMP2クラスは本来4つのシャシコンストラクターが用意したマシンから選択可能なレギュレーションでしたが、WECにおいては全車が"オレカ 07"を選択したことで、実質ワンメイク状態になっています。
エンジンは元々は"ザイテック(Zytek)"の名で知られたイギリスのレーシングカーコンストラクターに端を発する"ギブソン・テクノロジー(Gibson Technology)"が開発した4.2リッターV型8気筒NAエンジンを搭載しています。
#31号車は"王子"ことフェルディナント・ハプスブルク・ロートリンゲン、ショーン・ゲラエル、ロビン・フラインスのドライブで今回のレースに挑みます。
#10 ヴェクタースポーツ オレカ07 - ギブソン (VECTOR SPORT ORECA 07 - Gibson)

こちらはヴェクタースポーツの"ORECA 07"です。車両は前述の"TEAM WRT"と同じですが、このチームの最大のトピックはなんといっても2024年シーズンから"ハイパーカー"クラスに"イソッタ・フラスキーニ(Issota - Fraschini)"のLMHマシンで参戦することでしょう。
イソッタ・フラスキーニは、1900~1955年までイタリアに存在した高級車メーカーで、チェザーレ・イソッタ(Cesare Isotta)とオレステ・フラスキーニ(Oreste Fraschini)によって、ミラノに設立されました。来年WECに参戦してくるイソッタ・フラスキーニは、そんな往年のブランドを復活させてLMH車両のみならず、サーキット専用市販モデルも生産する予定だそうです。
ちなみにこちら↓は当時のイソッタ・フラスキーニ、1920年型 "イソッタ・フラスキーニ ティーポ8(Issota Fraschini Tipo 8)"です。

※2017年 トリノ自動車博物館にて撮影
いよいよお待ちかねの"ハイパーカー"クラスの車両を見ていきましょう!
#8 トヨタ ガズーレーシング GR010ハイブリッド (TOYOTA GAZOO RACING GR010 Hybrid)

まずは言わずと知れたトヨタ ガズーレーシング。WECからアウディ(Audi)、ポルシェ(Porsche)の撤退以降の冬の時代も参戦を継続したことで、今年の百花繚乱を迎えることができました。
"GR010 ハイブリッド"は、LMH車両のレギュレーションで開発され、前輪を200kWのMGU(モーター・ジェネレータ・ユニット)で駆動し、後輪を3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジンで駆動する4輪駆動車になります。
ただし、フロントMGUの作動が許されるのはBoP(性能調整)により190km/h以上と定められたことで、ノンハイブリッドLMH車両や、後輪駆動のLMDh車両と比べて圧倒的なアドバンテージにならないようになっています。
#5 ポルシェ ペンスキー モータースポーツ 963 (PORSCHE PENSKE MOTORSPORT 963)

WECに復帰するにあたってポルシェが開発した"ポルシェ 963"です。車両はLMDh車両のレギュレーションで設計されています。
LMH車両がメーカーの開発自由度が高い車両であるのに対して、LMDh車両は"オレカ"、"リジェ"、"ダラーラ"、"マルチマチック"の4メーカーのいずれかのLMP2用モノコックをベースに、統一規格のハイブリッドシステムと自社製エンジンを組み合わせ、メーカー独自のボデーワークを被せるという成り立ちになっています。
"ポルシェ 963"は、カナダの"マルチマチック"社製のLMP2用モノコックに市販ハイブリッドスーパーカー"918スパイダー(918 spyder)"の4.6リッターV型8気筒ツインターボエンジンと、LMDh共通50kWのハイブリッドユニットを搭載しています。
こうした成り立ちを見ても、今回の"963"以前WECに参戦していた"919 ハイブリッド(919 Hybrid)"とは、開発コンセプトが異なり既存のエンジニアリングをうまく使って"プライベーターに広く使ってもらう"ルマンカーを目指しているように見えますね。
それはまるで、Cカー時代を席巻した"ポルシェ 962C"を連想させる"963"のネーミングからも強く感じられます。
#38 ハーツ チーム ジョタ ポルシェ 963 (Heatz Team Jota PORSCHE 963)

こちらはそんな"962C"時代を連想させるプライベートエントリーの"ポルシェ 963"の1台です。LMP2クラスの常連でイギリスの強豪"Jota(ジョタ)"が、"ポルシェ 963"を手に入れて"ハイパーカー"クラスに参戦してきました。
#2 キャデラック レーシング Vシリーズ.R (CADILLAC RACING V-Series.R)

パドック裏で少し語った通り、元々キャデラックはDPi車両でIMSAを主戦場としていたチームなので、本レギュレーションにおいてもLMDh車両を開発してきました。
モノコックはイタリアの"ダラーラ"製LMP2用を使用して、5.5リッターV型8気筒NAエンジンと、LMDh共通50kWのハイブリッドユニットを搭載しています。アメリカンレーシングといえども、もうOHVではなくDOHCですが、クロスプレーンクランクに大排気量NAエンジンのエキゾーストノートは"アメリカン"の一言に尽きます。
#94 プジョー トタルエナジーズ 9X8 (PEUGEOT Totalenergies 9X8)

昨シーズン"ウイングレス車両"として、話題をさらった"プジョー 9X8"がピットに入ってきました。"9X8"は、トヨタと同じく車両の独自開発が可能なLMH車両のレギュレーションで設計されたマシンで、前輪を200kWのMGU(モーター・ジェネレータ・ユニット)で駆動し、後輪を2.6リッターV型6気筒ツインターボエンジンで駆動する4輪駆動車になります。
こちらは、BoP(性能調整)により前輪MGUの作動速度は135km/h以上と、トヨタより55km/h低速域から4輪駆動のアドバンテージを生かすことができます。
#50 フェラーリ AFコルセ 499P (Ferrari AF CORSE 499P)

こちらが50年ぶりにワークス体制でスポーツカーレースにカムバックした"フェラーリ 499P"です。トヨタ、プジョーと同じくLMH車両のレギュレーションで設計され、前輪を200kWのMGUで駆動し、後輪は"296GT3"で実績のある3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジンで駆動する4輪駆動車になります。
"499P"は"トヨタ GR010"と同様に、190km/h以上で前輪MGUによる駆動アシストが許されています。フェラーリ伝統の1気筒あたりの排気量(499cc)に、スポーツプロトタイプカーである"P"を組み合わせた"499P"という名称は、オーセンティックでとても素敵なネーミングですね♪
ただ個人的には、フェラーリのルマンカーぐらいV型12気筒NAエンジンで、官能的なエキゾーストノートを奏でて欲しいとも思ってしまいます^^;
#4 フロイド ヴァンウォール レーシング チーム ヴァンダーヴェル 680 (Floyd Vanwall RACING TEAM Vandervell 680)

近年のWEC最高峰クラスにおいて、テールエンダーの常連になりつつある"バイコレス(ByKolles)"。コリン・コレス率いるこのチームは、毎回面白い車造りでWECファンを魅了してくれますが、今シーズンに投入してきたこの"ヴァンダーヴェル 680"は、1950年代に黎明期のF1で活躍した英国のコンストラクター"ヴァンウォール(Vanwall)"のブランドを復活させてきました!
この"ヴァンダーヴェル 680"は"LMH"車両のレギュレーションで設計され、エンジンはバイコレス時代のLMP1カー"CLM P1/01"から引き継がれた"ギブソン・テクノロジー"社製の4.5リッターV型8気筒NAエンジン(GL458型)を搭載しています。
WECに参戦するLMH車両では、今回の富士とバーレーンをスキップした"グリッケンハウス 007 LMH"と、この"ヴァンウォール ヴァンダーヴェル 680"がMGU非搭載の"ノンハイブリッド車両になります。
最後にLMGTE Amクラスから1台紹介します。
#56 プロジェクト1-AO ポルシェ 911RSR-19 (PROJECT 1-AO Porsche 911 RSR-19)

2024年シーズンからは、WECのGTクラスが"GT3車両"をベースとした車両規定になることから、"LMGTE Am"クラスの車両は今シーズン限りで見納めとなります。
先ほどパドックで、恐竜の女の子"Rexy(レキシー)"とコラボっていたポルシェがこの車両です。911RSRが、おもいっきり恐竜になってます^^;