
先月(ですよね?)発売された、性能・デザイン・価格など含めて最右翼のバイク、「VFR1200F」に試乗してきました。
VFR1200Fですが、正直に言ってこの手のバイクの最高性能なんて引き出せる腕も才能も自分にはありません。
それに乗った場所は産業道路+市街地というシーンなので、法速+α程度で考えてください。
まず、なんと言っても新生VFRのポイントはその超前衛的なデザインだろう。
きっと「AKIRA」にそのまま出てきても大丈夫なくらいの佇まいである。
面白いのはタンクとフェアリングが一体となっていること。
さらに、左右のアウトレットは「エラ」の様な形状、
といってもBMWのようなダサいヤツじゃなく、有機的なデザインで、機能だけを追い求めたのではなく、「美しさ」も追求している。
また、ヘッドライトのX型ライトもかなりインパクトがあるフェイスとなっている。
夜間に乗ったのではないのだが、映像などで見る限り配光もかなり優れているようだ。
ちなみに、現在においてまだ発売されていないDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)モデルもラインナップされる予定だ。
これはクラッチレバーとクラッチペダルと言った機械的性能を持たず、
ATモードではスクーターと同じようにスロットル開度に連動して自動でギアを変速、
MTモードではスイッチでギアを上下できる、いわばこのVFR1200F最大の見所。
モーターショーでもこのDCTモデルが最上段に展示していたそうだが、
車やバイクは出来る限り自分でコントロールしたい、
とくにギアを落としつつのブリッピングでピタッと回転数があった事に無常の喜びを感じる、
ちょっとマニアックな癖を持つ私としてはあまり心惹かれないモデルである。
まぁ。機会があれば借りてみるつもりではあるが・・・。
話しをコンサバティブなクラッチモデルに戻そう。
フロント周りのフェアリングは少し乗っただけで「走りこんで造ったな」というのが分かる。
多くのバイク乗りは「風は疲れの原因となるので避けたいけど、いつも感じていたい」
そんなパラドックスを抱えながらアクセルを開ける人種なんですよ。
それを良く分かって作ったな、と。
メットの上や身体を上げた時の両肩など、要はずっと当たっていても疲れない場所に風を感じつつ、
体の正面や足など、体力や体温を奪う場所にはほとんど風を感じない。
当日は13度位の気温だったのですが、そんな時って走っている時以外はメットのシールドが曇るのだ。
しかし、このバイクでは身体を沈めるだけで、なんと走行中にも関わらずシールドが曇ってきた。
試しに身体を少し起こしてみると、曇りは一瞬で消えていった。
もちろん普通の運転姿勢でメットが浮いてくるようなこともない。
見事なエアマネジメントだと思う。
褒めてばかりも何なので、気になった点も。
まず、フロントのデザインに対してリア周り、特にシート部分はフツーな感じ。
サイドカバー以外がブラックで統一されているので余計にシンプルに見えてしまうのかも。
フェンダー周りだけでもフロント同色の部分を作ると、視覚効果だけでも違って見えると思うのだが。
あと、最近流行のナンバーステー一体型のフェンダーとアンダーカバーは、
フェンダーレス化がヒジョーに難しそう。
もう一つ付け加えると、マフラーが大きすぎ。
重量マスの集中は分かるんだけど、いくらなんでもそれはデカイでしょって思う。
もちろん、騒音規制や排気規制の問題と、性能の兼ね合いからそんなデザインとなったんだろうが、もうちょっとなんとかならないのだろうか?
ま、これに関しては社外メーカーに頑張ってもらおう。
そんなこんなで、やっとこさ試乗に移ろう。
まず、起こしたり、横で押し引きしたフィールは正直、268㎏という重量を感じずにはいれない。
なにせ同社の重量級バイク、CB1300SBよりもほんの4㎏軽いいだけなのだ(ABS仕様比較)。
ちなみに、最重量級バイクはご存知シルバーウイング。
なんと420㎏超という、とんでもないバケモノである。
シートはホンダ初となる、表皮一体成型の発泡シート。
このシート座り心地が非常にいい。
ただ1つ難点が挙げれば、硬度が同じなのか、差が少ないのか(恐らく前者)、前と左右方向へのズレが大きい。
高速を使ったロングのみだとケツをずらさないのでこれは分かりにくいのかもしれないのだが、
市街地を中心に走ってみると、イマイチケツの収まりがよくなかった。
この前と左右の硬度を上げてやればもう少しケツの座りがよくなると思われるのだが。
まぁ、シートは外品や職人さんも多いので、どうしても気になる場合はそういった方々に要相談になるかもしれない。
そんな重いバイクでも、いざ跨ってしまうとその重さはほとんど感じない。
V型ということで幅も直4に比べると狭く、重心位置も低いので、余計にそう感じてしまうのだろう。
足付きも非常によく、176センチの私だと踵までベッタリである。
オプションのハイシートにしてもいいのかも、と思うくらい。
ペダル位置は前傾姿勢に対して少し前よりな気がするが、スポーツツアラーなので、CBRほど後ろに設定することもないのだろう。
実際乗った感じも思いっきり寝かさない限りは、これで必要にして充分かと思う。
むしろ、もっと攻めたい派はバックステップにするか、CBRにするか、が妥当かと。
CBと比べるとやや重心位置が低く、左右にゆすってみた時も安定して動く。
ちょうどやじろべえのセンターを重くすると、動きがゆっくりとなるような雰囲気だ。
しかし、そのゆったり具合はあくまでも印象であることは、店を出て最初の交差点で間違いであることを思い知らされることとなった。
店からでて車道に入った直後の交差点、スッと抜重した瞬間「あ、ちょっとやりすぎたか?」と思ったその刹那、バイクがフワッと崩れるような反応をしたのだ。
それは決して倒れたのではなく、あくまで寝たのである。
反射的に右手に力を、あくまでジワッと入れると、まるで意思を持った動物の様な冷静さと素早さで、バイクが交差点出口をめがけて立ち上がっていくではなか!
この間、身体は、ずっとバイクセンターに座ったまま。
一瞬のことにも関わらず、このバイクの潜在能力を垣間見た気がした。