
今回の試乗はBMWのK1300R。
BMWといえば「水平対向!」という意見があるのは知っているのだが、バイクにゲタ的要素を求める私としては、市街地での取り回し、特に信号待ちでのすり抜け(賛否はともかく現実的にはこれをしないとバイクのメリットがないもんで・・・)で気を使う、視界に入らない箇所のデッパリは嫌いなのだ。
※同じ理由でリアのケースも泊まりツー以外はつけない主義。。。
で、このBMWのKシリーズは、水冷・横置・4気筒という国産メーカーが得意とするエンジンを積んだモデル。
一般的にパワーやトルクでは空冷<水冷となるのだが、このKシリーズでの数値は圧倒的。
排気量1293ccで、173PSなのだ。SSの1000ccクラスと同等のパワーということになる。
しかもこの独特のルックス。テク云々ではなく見た目だけでイバリを効かせるにはもってこい(笑)。
ちなみに先日アップしたドカのモンスター1100Sでは1078.6ccで95PS。
国産ネイキッドの代表格であるホンダのCB1300だと1284ccで101PS。
ついでに重量ではBMWが243kg、CBでは259kg、モンスターでは驚きの169kg。
モンスターの数値はあまりに軽すぎるので参考にはならないが(国産の250ccクラスと同等なのだから!)、BMWの数値はリッタークラスでは標準的。
要は最初に書いた「ゲタ」にはなりえない重量だ。
実はこれが理由で国産ネイキッドは最初から念頭にないのだ。ただし、SSは別(汗)。
で、なぜBMWの試乗をしているのかというと、理由は簡単、BMWだから。
もちろんブランドの威光のコトではない。
真価も歴史も性能も知らず、ロゴが入っているという理由だけでモノを選ぶほど、短絡的な人間ではない。
BMWがKシリーズに与えた性能は徹底的な低重心。
フロントフォークを使わない機構のデュオレバー式フロントサスペンション、前傾55度の深いクランク角、テレスコのヘッド部がないために実現した低い位置でほぼ水平にあるフレーム、クランクシャフトを下に下げるためのドライサンプのオイルシステム、ドライブシャフトによる駆動伝達などなど。
さらに、友人である現役の国際レーサーや元8耐レーサーが、
「BMWはええよ~。楽に早い。サーキット以外ならスーパースポーツより早くて安全や」
と誘惑の声を掛けてくれたので、ほないっちょ試乗してみよか、となった訳だ。
前置きが長くなったので、いきなりバイクを起こすところから。
200kg超の車体なので確かに重いのだが、先に述べたように重心位置が低いので、例えバイク横に立ったままでも「スッ」と起こすことができる。
またがった状態から起こすと、国産400クラスNKを起こす程度の労力だ。
足つきは日本向けのローシートに換装しているということで快適そのもの。
シートも前側は両サイドをそぎ落としたデザインにしており、前側に座ると踵まで接地する(身長176cmの場合)。
ただし、後ろに座ったさいにシート幅が広く、ツーリングにはいいのだろうが、攻めるとなると股関節の硬いひとには辛いかもしれない。
ハンドル周りのスイッチもこのK1300シリーズから変更されたらしく、国産になじんだ身体には使い勝手も上々。
さすがと思ったのは、スイッチの一つ一つが大きく、操作性もシンプルで、厚いグローブをしたままでも操作性に問題がない点。
機能が多いためにボタン類は多いが、スターターとキルが一緒になるなど、すぐに必要な機能は手を動かさずにさわることができる。
もっとも、これは私の手が大きいことに起因しているのかもしれない。
欧米のツアラーは一日の移動距離が5~600㌔が当たり前、1000キロもざら(実際にカナダとアラスカで何人ものそのようなツアラーに会ったことがある)だというが、そういったユーザーに育てられたメーカーであることがよく分かる。
キーをひねってエンジンをかけると、予想以上にデカイ排気音が響いて驚いた。
スロットルをひねると「F1のテクノロジーを使った16バルブはロッカーアームを介して・・・」と横で説明してくれるスタッフの言葉を一瞬で吹き飛ばす、めちゃくちゃにツキとキレのいい動作と音量を感じさせてくれる。
ただし、開けたときの印象が素晴らしいのだが、閉じたときのキレが悪い気がする。もっともこれもドカと比べた時であって(ドカのそれは開け閉めともに切れ味は最高)、国産ネイキッドでは比較にならないほどのよさがあるのだが・・・。
走り出してもこの低重心の恩恵を素晴らしく感じることができる。
時速2~3kといった極低速域であっても車体がふらつくことなく、とにかく安定しているのだ。
パワー云々は市街地での試乗なので多分その性能の20%も使えていないと思うのだが、少なくとも法廷速度なら一瞬、時速60kなど0キロスタートで2秒かからないで到達できる。
さらにトルクがとんでもなくぶ厚く、どのギアからでも自然と身体が後ろに沈み込む強烈な加速を楽しむことができる。
面白いのはシフトアシスト。
ギアアップ時のみだが、アクセルを開けたまま、クラッチも切らずに左足で操作するだけで変速できるのだ。
その速さも電光石火。どんどん加速してくフィーリングは快感すら覚えるほどだ。
レースなどでリアトラクションを途切れさせずにシフトアップするために開発された機構であり、公道で必要なのか?とは思っていたのだが、想像以上に使える。
例えばコーナリング(バンク)中、アペックスが見えた時点でシフトアップ+スロットルオンなんてことが、前後の荷重変化なく確実にできるのだ。
停止時で気になっていた排気音量も走り出すと全く気にならない。
特に低回転域しか使えていないのもあるだろうが、むしろ「ドライバーが運転したときに聞こえる周波数」を上手くコントロールしているのだろうと想像する。
これは4輪でBMWが行う手法だからだ。
さらに低重心の恩恵はコーナーリングでも存分に受け取れる。コーナーがとにかく楽なのだ。ドカのようにグイグイ曲げる感じではなく、あくまで車体が曲がってくれているとコーナーの度に感じていた。
逆に言えばリーンウイズなどでの姿勢だと、反応がダルに感じられるのだ。
楽だけど面白くない・・・。
そう思いつつ、法廷速度内ではあるが高速のまま入れるコーナーで腰をずらしつつ進入、ブレーキリリースでバンクさせてみると意外にもスパっとバンクできるではないか。
これに気が付いてからはコーナーが楽しくて仕方がない。重量があるのでさすがに低速度域では難しいが、40キロ以上だとかなり楽しめる。試乗車のタイヤをいきなり端まで使ってしまったほど。
生粋のコーナーリングマシンであるドカやSSと比べると確かにその切れ味が悪いかもしれないが、積極的な操作をしてやることでK1300Rは見事な動きを見せてくれた。
K1300Rで最も気に入った点はブレーキ。
市街地程度の速度では本当に人差し指1本。減速はもちろん停止、コーナーでのコントロールなど制動力とともにコントロール性の高さが際立っていた。
さらにフロントブレーキだけでリアも連動できるのも素晴らしい。
ちなみにフットブレーキではリアのみが駆動するようだ。
デュオ×テレレバーの影響もあるだろうが、けっこうなハードブレーキングでも大きくノーズダイブすることなく、極めて安定したまま停止することができるのだ。
キャリパーはトキコ製、(リアはブレンボ製という噂)らしいが、もちろんBMWチューンがなされているのだろう。
まさに速度を思いのままにコントロールすることが、初めてBMWに乗った人間にでもできる。
先日のドカでのブレンボも秀逸であったが、指で感じるフィーリングという点ではBMWに分があるように思う。
普段は楽に、ラフに走りつつ、たまの休みにで峠に行くと、安全にしっかりと楽しむことができる。
よく調教された猛獣使いになった気分だ。
もっとも、調教されているからといって油断すると173PSという途方もないパワーに食い殺されてしまう。
それにしてもいいバイクだった。気に入ったな。。。
値段は、、、一番安くて180万円。試乗したハイライン※だと200万円。プレミアムだと220万円。
さすがに気軽に買えないなぁ~。。。
※通常ハイラインにシフトアシストは付いていないのだが、この試乗車は初回特別とかで装備されていた。