♪砂の道は、す~ばる~♪
♪エフワンなら、ホ~ンダ~♪
♪みんな、どこへ行った~♪
♪テレビ~で、観る事も無く~♪

♪人気モノの、アクア~♪
♪どこそこに、プリウス~♪
♪みんな、いつも見~るゾ~♪
♪見飽き~たヨ、つまらないヨ~♪

♪FRなセダンを誰も忘れて行く♪
♪人はエコばかり測る~♪

♪つか~めよ、ミニX~♪
♪教えてよ~、緻密な訳を~♪
♪摘ん~だ、部品飛ばし~た♪
♪今~何処に行っただろぉ~?♪
子どもの頃、トミカで遊びましたか?
小人になってトミカの運転席に座りたいと思いませんでしたか?
ハンドル付いてる運転席にゾクゾクしませんでしたか?
私はしました。えっ?しなかったの? じゃ、私は『変』です。
さて、取り出して来たのは例のチビXです。

入手から今まで愛でて、愛でて、鼻息荒いオヤジです。
でも~・・・毎度この子からは少し冷たい空気を感じるんです。
“私、脱いでも凄いんです”オーラを感じてしまう私。
“オジサン老眼入ってもう見えないんでしょ”と語りかけて来る。
なんで、こんなに内部まで緻密なんでしょうか?

売り物でも無い、色見本との位置付けらしいけどドアも開くし‐
色々調べた結果、途轍もないエピソードが封印されている事が判明。
さぁ、暇オヤジ達は感動しようではありませんか。
(先に‐また馬鹿やらかしてます。大目に見てね)
‐ストーリー‐
トヨタ自動車販売戦略第3課販促企画担当係に配属された
『グラ男(ぐらお)』は悩んでいた。
厳しい販促ノルマのテコ入れを指示されたものの、限られた予算の中、妙案も無く
周囲の仲間はライバルでもあり、誰かのアイデアが上層部に認められれば、次の日には上下関係すら生まれる。
彼は他人より一歩前進している様にも見られていた。
それが2人には辛くもあった。
公然の黙認ではあるものの、同僚でもある職場の花一輪‐創業者の血縁であると言われる『豊田世梨香(とよだせりか)』とは互いを意識しあう仲であった。
出世競争に悩むグラ男とは裏腹に世梨香は天真爛漫であり、グラ男は日々心が和むのであった。
月例の戦略会議を翌日に控え、付け焼刃の様な案に後ろめたさを感じながらグラ男は世梨香を食事に誘った。
“とっても緻密なミニカーを作ったら、子どもも大人も同じ実車を欲しくなると
思うんだ・・・”
世梨香に自分のアイデアを伝えると、彼女はこう言った。
“ドアが開閉出来たらずっとリアリティが増すんじゃないかしら?
あの‐小さいトミカ?みたいに”
成る程一理ある。
グラ男は翌日の戦略会議でその案をプレゼンする事にした。二人の合作だ。
‐ご成約頂いた方に納車までトヨタF1をレンタルします。
‐もれなくトヨタホームのモデルハウスに5泊6日ご招待。
‐社有ジェット機でアクロバット遊覧飛行プレゼント。
同僚達のアイデアはスケールが大きかった。
おずおずとミニカー案を出すグラ男の声は緊張でかすれるのだった。
“で?ミニカーは何の価値があるっ!?”と言う上層部の質問に萎縮しながら‐
“ドア・・・が・・・開きます・・・ちょっと萌えて・・・遊べます”
“なんとっ!ドア開閉するのかっ!素晴らしいっ!”
“採用だっ!その線で行けっ!但し内装も忠実に再現だ!”
“小人になって乗りたくなる程、精密にするんだっ!”
周囲もあっけにとられる上層部の肝いりにグラ男は薔薇色の人生を予感した。
外装はスムーズに量産可能だった。
実車製造ラインの設計用に作った模型の製造ラインを稼動させると、そのままミニカーが量産出来る事が判明した。
資源の活用事由でも表彰されると言う快挙であった。
が、問題が起きた‐
限られた予算の中、内装再現するCADデザイン費用の捻出が出来なかったのだ。
計画が暗礁に乗り上げた‐
外装だけのミニカー在庫が実車部品倉庫を圧迫し出したのだった。
“うまく‐うまく事が運べば、君のお爺さんにも認めてもらえるんだ・・・でも・・・”
グラ男は世梨香に焦る心境を吐露した。彼女は少し寂しそうな顔をしながら‐
“採算ラインに合わないからって、企画をボツにしてしまえばイイんじゃない?”
“ダメだよ。それでは君のアイデアも、僕らの未来も‐”と遮る。
“会社辞めたら良いじゃない。二人でマッチを売りましょう”
いつに無く馬鹿げた彼女の一言にイラつくグラ男だったが、その気配を察する様に世梨香は言葉を継ぐのだった。
“・・・似姿 蜂六って言う・・・伝説の原型師を・・・私知っているワ”
似姿 蜂六(にし はちろく)‐上越の山裾にひっそり居を構える世捨て人。
スケール・モデル全盛期に彼の原型を取り入れなかったモノ無し。
車‐飛行機‐船‐城‐鎧兜‐田舎の家‐焼芋屋の屋台‐人体模型の模型!
彼の手先はスモールライト!!
そんな名声を欲しいままにしたのは、遥か昔の話‐
頑固なまでの彼のポリシーは『実体の無いモノ製作せず』
“マブチ仕込むからリアシートかさ上げしろぉ?
そんなら実車にマブチ入れてから持って来いっ!”
“ロボットだとぉ?そんなら実物作ってから来い、この野朗っ!”
一頃のブームはアニメに持ち去られ、原型製作すらCAD技術に移り行き‐蜂六は飲んだくれの厄介者となり家族も離散状態だった。
グラ男は、こんな人と場所でミニチュアが出来るのだろうかと思うものの、恐る恐る尋ねるのだった・・・
“縮尺1/30なんです。小さいサイズなので雰囲気を出して頂ければ結構です。
1台24諭吉で原型を製作頂けませんか?”
蜂六は都会から突然訪ねて来たグラ男を訝しげに見ながら、言葉を継ぐのだった。
“何分の1なんて知った事かっ!雰囲気だけなんて仕事なら俺は請けねぇ。
お前が粘土でもこねて作れ”
“20諭吉もあれば当分呑めるからそれでいいが、俺は徹底的にやるゾ”
グラ男は再度確認をした。
“24諭吉で正式契約頂けませんか?リアル感はお任せ致します。年5台位の発注です。ご家族の為にも予算の上限までお支払い致します”
“ふざけんなっ!馬鹿野朗!家族なんかいるかっ!
いたって、てめぇで生きてくモンだ!トキがいつまでも親に食わせて貰うか?
俺は呑んで生きてんだ!腹減ったら呑めばいい。寒くなったら呑めばいい。暗くなったら呑めばいい。寝て、起きて、呑む!これが全てだ。エコエコ言ってんじゃねぇ。俺が一番エコなんだ!馬鹿野朗!”
グラ男は蜂六の剣幕に驚きながらも、仕事を請けてくれたと解釈した。
約束の期日‐その出来栄えに誰もが驚愕した。
喜び勇んで社内報告をすると、上層部から追加の指示が出たのだった。リアル感を増す様に木目を塗れ‐と。
途方に暮れたグラ男は蜂六に相談した。
“てめぇっ!原型師なめてんのかっ!俺は手先で仕事してんだっ!馬鹿野朗っ!”
“塗るなんざ、老眼入って出来る訳ねぇだろがっ!
お前の論法で言ったらお米作ってる人は、みんな米粒に字が書けるのと一緒じゃねぇかっ!
新潟は米所だが、みんながお米作ってる訳でも無し、お百姓さんが全員お米に字書けると思ってんのかっ!馬鹿野朗っ!”
“塗りてぇヤツは勝手に塗れってんだ。知るか馬鹿っ!”
今度ばかりはコストに見合う受注元は無かった。
グラ男はそれでも世梨香の発案に報いる様、自ら木目を着色する事にした。
来る日も来る日も、彼は木目を塗り続けた・・・もう少しアバウトに仕上げてくれれば・・・こんな事をしなくても済むのに・・・
そして忙しさに忙殺される中、世梨香がいつのまにか退職していた事を知ったのはずっと後の事であった。
世梨香はひっそりと、誰にも行き先を告げず、トヨタから去っていた。
トヨタにはもう『世梨香』はいなくなったのだった。
世梨香との別れに愕然としたグラ男は異動願いを出した。
今までの労力が報われ海外赴任のエリートコースに乗ったのだった。
総てを忘れ去る覚悟で彼は新天地で働き続けた-
月日は流れ、現地社長の子女である香夢理(カムリ)と結ばれた。
世梨香が創業者とはなんら無関係の娘であった事は後に知った‐そしてこう思う。
あの時会社を辞めて、一緒にマッチ売りになれば良かった‐と。
そして現在-
トヨタのミニカー作りは今も続いている。
似姿 蜂六は16諭吉でも原型を作ると言い、単価の目減りに対する条件は‐今まで以上の緻密感を出す為に実車を庭先に貸し出す‐事だった。
差額の4諭吉で木目シールは大量に調達可能な上、コンソールの塗装も適った。ワールドワイズな世の中にシフトする事で米粒になんなく字が書ける人が沢山いる場所で量産が続けられている。
世梨香は生まれ故郷へ帰っていた。
社内で勝手に噂された“創業者の血縁”を否定する事でグラ男を失望させたくは無かった。
彼女は自給680円のコンビニ・パートタイマーだ。
過去を封じ‐憂いのある美貌と作り笑いだけが今の彼女の武器だった。
それでも儲けにならない仕事を頑なに続ける父親の元へは帰らなかった。
グラ男の事は忘れられない‐車を愛する人を見ると声をかけたくなる。
ミニカーを見かけると切ないあの頃が蘇り一台でも多く売らずにはいられない。
そろそろ
アノおじさんがやって来る筈。
ドアも開かないオマケの車付き缶コーヒーにジャンルを問わず投資してくれる人。
世梨香は想う‐あの時グラ男にフェラーリのミニカーを付属する事を提案すれば‐
アノおじさんの様な人が全国津々浦々いて、トヨタ車が飛ぶように売れたのではないだろうか‐と。
そしてまた想う。
あんまんの中に1個だけマセラッティが入っていると言ったら、アノおじさんは保温器内の全てを買うかしら‐
おでんの具材に1個だけデトマソが入っていると言ったら枠ごと買い占めてくれるかしら‐
やってみよう、今度必ずやってみよう・・・
新潟は今日も猛吹雪‐
なんのこっちゃ~!!!
と怒らないでね。ココまで読んでくれたあなたは奇特なお方。
よ~はね、塗りたいんだヨぉ、内装を~。
こんなに緻密に仕上げていると『お前、塗れんのかよぉ』って言われてる感じ?
お友達に“オールペンすると思ったのにぃ~”って言われるとさー、
『そんな、煽てられたから、塗ったんじゃねーぞ、この野朗』
ってチョッパーみたいにクネクネしちゃうんだよぉ。
ハイ、近日開始、ミニカー狂騒第3章
プロジェクト(ミニ)X
‐実録『老眼との闘い』内装編‐
但し、不定期連載です。どうでも良いことです。どうでもイイね!です。
長かったね、前フリね、要らなかったかもね。
え?グラ男って仮名がおかしいだろうって?
似姿 蜂六って誰だよって?
ボクがPCの前に座っているとコイツらが目に入るんだよねぇ。

お名前だけ借りてみました~。
※今日のブログ内容は一部フィクションです。
実在の団体、特定の個人及びその嗜好・行動様式が事実と合致しているかどう
かは定かではありません。